人魚姫
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『人魚姫は泡になってきえてしまいましたとさ、おしまい』
パタン、と人魚姫の本を閉じれば、それまで静かに本を聞いていた女の子が声を上げる
「咲月先生!なんで人魚姫は泡になっちゃうの?」
「そういう約束の魔法にかけられちゃったんだよ」
「でも王子様を刺したら泡にならなかったのに!」
「そうだね。でも人魚姫はいい子だからできなかったんだね」
そんな風に子供ならではの純粋な質問に答えていく
子供の視点というのは無垢で斬新で、時々容赦がない
「ひめのちゃーん、お迎え来たよー」
「ママだ!」
バタバタと帰っていく背を見送りながら、すっかり人の居なくなった教室を見回す
「人魚姫か~」
ほなみ先生が私の持っている絵本を見ながら呟く
「はい、女の子は人魚姫やシンデレラが好きですから」
「憧れてたわよね〜」
その言葉に本を仕舞いながら曖昧に微笑み頷いた
「ほなみ先生、この後は?」
「まだまだ仕事が山積みよ。卒園式と発表会の準備もあるし」
「私もです。ご一緒していいですか?」
お互いに苦笑しながらこれからの業務に取り掛かる
机の上に子供たちの描いた絵を並べれば、1つずつ丁寧にホッチキスで留めお面として仕上げていく
「ほなみ先生はあと1ヶ月でしたよね」
「そうなのよ。ごめんね忙しい時期に…」
「とんでもないです!おめでたい事ですもん。旦那さんの地元では保育士続けられるんですか?」
「まぁ、生活が落ち着いたら続けられたら〜って思うんだけどね。何だかんだ言いながらこの仕事結構好きだし」
あと1ヶ月で寿退社をしてしまうほなみ先生
彼女の顔は晴れやかで、少しだけ憧れてしまう
「そういえば、新しい先生明日からですよね」
「何でも男の先生みたいよ?咲月先生大チャンスじゃない!」
「いえ、私は…」
「もお〜、咲月先生せっかく可愛いのに全っ然恋愛とかしないの勿体ないぞ〜?」
手だけはしっかりと動かしながら、たわいない会話を楽しむ
だが、恋愛の話になると私は苦笑いを浮かべるしかできない
「もしかして忘れられない人でもいる?」
その言葉に思わずピクリと反応した
「どうしてそう思うんですか?」
「ん〜、さっき人魚姫とかの話してた時に何となく…。あとは女の勘かな」
恋愛のスペシャリストのような彼女の女の勘は、人より少し鋭いらしい
「…私、人魚姫が羨ましいんです。…だって、泡になって消えてしまえば、他の子と幸せそうにしている彼の姿を見ずに済むじゃないですか。…それに、逃げ出した時、ずっと“消えてしまいたい”って思ってたので…」
私の時間はあの時から止まったまま……
パタン、と人魚姫の本を閉じれば、それまで静かに本を聞いていた女の子が声を上げる
「咲月先生!なんで人魚姫は泡になっちゃうの?」
「そういう約束の魔法にかけられちゃったんだよ」
「でも王子様を刺したら泡にならなかったのに!」
「そうだね。でも人魚姫はいい子だからできなかったんだね」
そんな風に子供ならではの純粋な質問に答えていく
子供の視点というのは無垢で斬新で、時々容赦がない
「ひめのちゃーん、お迎え来たよー」
「ママだ!」
バタバタと帰っていく背を見送りながら、すっかり人の居なくなった教室を見回す
「人魚姫か~」
ほなみ先生が私の持っている絵本を見ながら呟く
「はい、女の子は人魚姫やシンデレラが好きですから」
「憧れてたわよね〜」
その言葉に本を仕舞いながら曖昧に微笑み頷いた
「ほなみ先生、この後は?」
「まだまだ仕事が山積みよ。卒園式と発表会の準備もあるし」
「私もです。ご一緒していいですか?」
お互いに苦笑しながらこれからの業務に取り掛かる
机の上に子供たちの描いた絵を並べれば、1つずつ丁寧にホッチキスで留めお面として仕上げていく
「ほなみ先生はあと1ヶ月でしたよね」
「そうなのよ。ごめんね忙しい時期に…」
「とんでもないです!おめでたい事ですもん。旦那さんの地元では保育士続けられるんですか?」
「まぁ、生活が落ち着いたら続けられたら〜って思うんだけどね。何だかんだ言いながらこの仕事結構好きだし」
あと1ヶ月で寿退社をしてしまうほなみ先生
彼女の顔は晴れやかで、少しだけ憧れてしまう
「そういえば、新しい先生明日からですよね」
「何でも男の先生みたいよ?咲月先生大チャンスじゃない!」
「いえ、私は…」
「もお〜、咲月先生せっかく可愛いのに全っ然恋愛とかしないの勿体ないぞ〜?」
手だけはしっかりと動かしながら、たわいない会話を楽しむ
だが、恋愛の話になると私は苦笑いを浮かべるしかできない
「もしかして忘れられない人でもいる?」
その言葉に思わずピクリと反応した
「どうしてそう思うんですか?」
「ん〜、さっき人魚姫とかの話してた時に何となく…。あとは女の勘かな」
恋愛のスペシャリストのような彼女の女の勘は、人より少し鋭いらしい
「…私、人魚姫が羨ましいんです。…だって、泡になって消えてしまえば、他の子と幸せそうにしている彼の姿を見ずに済むじゃないですか。…それに、逃げ出した時、ずっと“消えてしまいたい”って思ってたので…」
私の時間はあの時から止まったまま……
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