短編
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彼女が飲み会に誘われている、と言ってきたのはいつだっただろうか
友人とのコミュニケーションの場の重要性も十分理解しているし、勿論二つ返事でOKを出したかった
けれどそれを一瞬躊躇ってしまったのは、その場に男も居ると分かってしまったからだ
きっと女友達だけなら、飲み会のある日を伝えてくるだけだっただろう
それをわざわざ確認したということは、そういう事なのだ
俺は彼女の交友関係を知らない
大学が違えばまるで別世界
それが現実だ
飲み会が終われば迎えに行くと伝えれば彼女は嬉しそうに、けれど照れと申し訳なさも滲ませながら微笑んで頷いた
この時に引き留めておけばよかったのだ
彼女の断れない性格は、誰よりも自分が理解していたはずなのに
「咲月ちゃーん、ほら、これお茶だよ〜?ウーロンハイだけど」
「う……?」
「あはは、だいじょぶ〜?フラッフラじゃん。こっち来て休んでなよ」
「……だい、じょぶ、れす、から……」
「えー?大丈夫じゃないっしょ〜?」
ベタベタと彼女に触る男に、最早抵抗もままならないほど飲まされた彼女
女友達もテンションが高く、2人を盛り上げるかのような空間
あぁ、なるほど、表向きは飲み会という名の合コンか、或いは男の友人たちに仕組まれた飲み会だったのかもしれない
「咲月」
「……やす……」
「迎えに来たんだが、立てるか?」
「ごめ、飲みすぎて……」
俺の顔を見れば今にも泣き出しそうな顔をする彼女に、ジリジリと後悔が押し寄せる
「気分が悪いのか?」
「すこ、し……」
「……少し風に当たって帰ろう。水も飲んだ方がいい。彼女がすまなかったな」
「あ、あぁ、いや……」
彼女を抱き寄せていた男に、今できる最大級の笑みを向ける
ここで怒るのは余裕のない男がする事だと、必死に自分を押さえつけた
「えー?咲月ちゃん大丈夫?あ!もう少し休憩していけばいいんじゃないですか?良かったら彼氏さんも一杯飲みません?」
あぁ、これは、自分に向けられる好意だろう
あわよくば、なんてまだ考えているのだろうか
先程まで彼女が困っているのを、見て見ぬふりをしていた癖に
「すまない、今日は車で来てるんだ」
「えっ?!彼氏さん車運転するんですか?!やば……!かっこいいですね……!あ、ならソフトドリンクとか……」
「すまないが、今日は帰らせてもらうよ。彼女がここまで酔うことは滅多にないんだ」
差し出されるメニューを見ても尚、キッパリと言い切れば、それ以上は返す言葉が見つからないようだった
「あぁ、これは彼女の分の飲み代だ。お釣りは迷惑料として受け取ってもらって構わない。結構飲んでしまったようだしな」
手切れ金だと言わんばかりに一万円札を置いて、彼女を抱き抱えて店を出る
安い飲み放題プランを売りにしている居酒屋チェーン店で、1人分で1万円なんて半分以上はお釣りとして帰ってくるだろう
それで縁が切れるなら安いものだ
絆を大切にしているワシが、そんな風に考えている事に苦笑してしまう
「あまり心配させないでくれ……」
情けなく呟いた声は、酔い潰れた彼女に届くことなく夜空に消えた
温和篤厚とはいかないようで
彼女の事になると、いつも余裕なんてない
友人とのコミュニケーションの場の重要性も十分理解しているし、勿論二つ返事でOKを出したかった
けれどそれを一瞬躊躇ってしまったのは、その場に男も居ると分かってしまったからだ
きっと女友達だけなら、飲み会のある日を伝えてくるだけだっただろう
それをわざわざ確認したということは、そういう事なのだ
俺は彼女の交友関係を知らない
大学が違えばまるで別世界
それが現実だ
飲み会が終われば迎えに行くと伝えれば彼女は嬉しそうに、けれど照れと申し訳なさも滲ませながら微笑んで頷いた
この時に引き留めておけばよかったのだ
彼女の断れない性格は、誰よりも自分が理解していたはずなのに
「咲月ちゃーん、ほら、これお茶だよ〜?ウーロンハイだけど」
「う……?」
「あはは、だいじょぶ〜?フラッフラじゃん。こっち来て休んでなよ」
「……だい、じょぶ、れす、から……」
「えー?大丈夫じゃないっしょ〜?」
ベタベタと彼女に触る男に、最早抵抗もままならないほど飲まされた彼女
女友達もテンションが高く、2人を盛り上げるかのような空間
あぁ、なるほど、表向きは飲み会という名の合コンか、或いは男の友人たちに仕組まれた飲み会だったのかもしれない
「咲月」
「……やす……」
「迎えに来たんだが、立てるか?」
「ごめ、飲みすぎて……」
俺の顔を見れば今にも泣き出しそうな顔をする彼女に、ジリジリと後悔が押し寄せる
「気分が悪いのか?」
「すこ、し……」
「……少し風に当たって帰ろう。水も飲んだ方がいい。彼女がすまなかったな」
「あ、あぁ、いや……」
彼女を抱き寄せていた男に、今できる最大級の笑みを向ける
ここで怒るのは余裕のない男がする事だと、必死に自分を押さえつけた
「えー?咲月ちゃん大丈夫?あ!もう少し休憩していけばいいんじゃないですか?良かったら彼氏さんも一杯飲みません?」
あぁ、これは、自分に向けられる好意だろう
あわよくば、なんてまだ考えているのだろうか
先程まで彼女が困っているのを、見て見ぬふりをしていた癖に
「すまない、今日は車で来てるんだ」
「えっ?!彼氏さん車運転するんですか?!やば……!かっこいいですね……!あ、ならソフトドリンクとか……」
「すまないが、今日は帰らせてもらうよ。彼女がここまで酔うことは滅多にないんだ」
差し出されるメニューを見ても尚、キッパリと言い切れば、それ以上は返す言葉が見つからないようだった
「あぁ、これは彼女の分の飲み代だ。お釣りは迷惑料として受け取ってもらって構わない。結構飲んでしまったようだしな」
手切れ金だと言わんばかりに一万円札を置いて、彼女を抱き抱えて店を出る
安い飲み放題プランを売りにしている居酒屋チェーン店で、1人分で1万円なんて半分以上はお釣りとして帰ってくるだろう
それで縁が切れるなら安いものだ
絆を大切にしているワシが、そんな風に考えている事に苦笑してしまう
「あまり心配させないでくれ……」
情けなく呟いた声は、酔い潰れた彼女に届くことなく夜空に消えた
温和篤厚とはいかないようで
彼女の事になると、いつも余裕なんてない
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