神奈川県の夕方は酷い雨にうたれていた。


湿気が多く、じめっとした空気が湘北高校を覆う。季節の変わり目、まだ肌寒さを残しているのが何より救いだった。


静まり返った校内に響き渡る雨音を背に、玄関に一人の女子生徒が立ちつくす。傘は無い。
彼女の名前は緑木緑。湘北高校一年である。


緑は雨の中から薄ら姿を現した校門を見つめていた。

雨に濡れたアスファルトの匂いと雨音をたっぷりと満喫し、いささか飽きてくる。
下校時間の空は快晴そのもので用事があると教室を後にした友人を思い出す。いつもなら一緒に並んで駅へ向かっているはずが今日に限って当直で、更に運悪く雑用も押し付けられこの時間帯だ。



そして明日、湘北高校はテスト期間最終日を迎えようとしている。威勢のいい部員たちの声は、雨に消されている訳では無かった。



緑は空を見上げ、少し霧を浴びた。いつまでもこうしているわけにはいかない、と鞄を両手に抱える。



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