#1. 卯月さんと映画
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リハーサルより断然、今の方が気まずい。
卯月さんへの苛立ちと、自分への嫌悪と、親睦を深めるための休憩を無駄にしてしまった申し訳なさが入り混じっている。
緊張は打ち消せる。でも、ぐちゃぐちゃに煮込まれて乱れた心はまた別で。
…………なんかもう、いいや。
なるようになってしまえ。
監督の合図で、私たちはさっきと同じシーンに入る。
『先輩……?』
押し倒す卯月さんはもう完全に役に入っている。けれど役と彼の間にきちんと理性があって、私にかける腕の力はそれほど強くはなかった。
『男の部屋に一人で入るなんて……何されても文句言えないよ』
私もそう思う。そもそも主人公は何故この男の看病をしようと思ったのか。
ちなみに、この時点での主人公はまだ恋の自覚が無い。と、脚本には書いてある。気づくのはもう少し先のシーンだ。
「えっ」
私は思い切り力を入れて卯月さんの肩を押し、流れるように形成逆転。私が卯月さんを押し倒す状態になった。
勝手に大人しめな女子をイメージして演じていたけれど、この映画は脚本家のオリジナル作品で原作が無い。全部、監督と脚本家のイメージで決まる話だ。
混乱している表情は演技なのか素なのか。もし演技ではないのなら、少しレアな表情かもしれない。
卯月さんの前髪はすでに乱れておでこが出ていたので、そのまま手を乗せて熱を測る。普通だ。
『……熱い』
恋の自覚はないけれど、心配で、押し倒されて恥ずかしくて、あとちょっと怒ってる。無理しないでって。
『熱あるくせに、そんなに強がらないでください』
これが私の主人公。
監督、脚本家の反論は認める。
私の下で驚いた表情の卯月さんから体の力が抜けて、ふわりと微笑んだ。
『……ふっ、敵わないなあ』
卯月さんはそのまま笑い続けた。
何がそんなに面白いんだろう。よくわからないので顔に出して訴えると、卯月さんの手が私の頬に伸びる。
私は反射的にその手から自分の頬を守った。それで何かを察したのか、少し手を下ろし、垂れた私の横髪を軽く、本当に軽く引っ張った。
「……? なんですか?」
なんとなく小声で尋ねる。
「んーん。ありがと」
卯月さんは微笑んで、小声で応えてくれた。
そこでカットの声が届いた。
……最後のは必要だったか?
卯月さんへの苛立ちと、自分への嫌悪と、親睦を深めるための休憩を無駄にしてしまった申し訳なさが入り混じっている。
緊張は打ち消せる。でも、ぐちゃぐちゃに煮込まれて乱れた心はまた別で。
…………なんかもう、いいや。
なるようになってしまえ。
監督の合図で、私たちはさっきと同じシーンに入る。
『先輩……?』
押し倒す卯月さんはもう完全に役に入っている。けれど役と彼の間にきちんと理性があって、私にかける腕の力はそれほど強くはなかった。
『男の部屋に一人で入るなんて……何されても文句言えないよ』
私もそう思う。そもそも主人公は何故この男の看病をしようと思ったのか。
ちなみに、この時点での主人公はまだ恋の自覚が無い。と、脚本には書いてある。気づくのはもう少し先のシーンだ。
「えっ」
私は思い切り力を入れて卯月さんの肩を押し、流れるように形成逆転。私が卯月さんを押し倒す状態になった。
勝手に大人しめな女子をイメージして演じていたけれど、この映画は脚本家のオリジナル作品で原作が無い。全部、監督と脚本家のイメージで決まる話だ。
混乱している表情は演技なのか素なのか。もし演技ではないのなら、少しレアな表情かもしれない。
卯月さんの前髪はすでに乱れておでこが出ていたので、そのまま手を乗せて熱を測る。普通だ。
『……熱い』
恋の自覚はないけれど、心配で、押し倒されて恥ずかしくて、あとちょっと怒ってる。無理しないでって。
『熱あるくせに、そんなに強がらないでください』
これが私の主人公。
監督、脚本家の反論は認める。
私の下で驚いた表情の卯月さんから体の力が抜けて、ふわりと微笑んだ。
『……ふっ、敵わないなあ』
卯月さんはそのまま笑い続けた。
何がそんなに面白いんだろう。よくわからないので顔に出して訴えると、卯月さんの手が私の頬に伸びる。
私は反射的にその手から自分の頬を守った。それで何かを察したのか、少し手を下ろし、垂れた私の横髪を軽く、本当に軽く引っ張った。
「……? なんですか?」
なんとなく小声で尋ねる。
「んーん。ありがと」
卯月さんは微笑んで、小声で応えてくれた。
そこでカットの声が届いた。
……最後のは必要だったか?
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