縛りの証
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一生のお願い
縛りの証
『う〜た〜ひ〜め〜せんぱ〜〜i『無理』
『しy『無理』
毎度毎度の茶番劇のように事が動く。東京都立呪術専門学校を卒業した私は今現在、一年生の副担任を勤めていた
『何度も言うが"ソレ"は縛りを具現化した様なものだ。ハッキリ言って私達にはどうしようも出来ない』
"ソレ"すなわち私の左の薬指にはまる指輪の事だ。これをくれたのは…
『ねぇ[#da=1#]?新婚旅行はどこがいい?僕は[#da=1#]が望む場所ならどこでもいいよ』
そう、私の真後ろでずっとくっついている悟張本人。キッカケは数週間前に遡る
『[#da=1#]、僕ねぇ君に渡したい物があるんだ』
『何?報告書とかお菓子のゴミとか渡してこないでね?』
『恥ずかしいから目瞑っててよ』
珍しく真面目な声に思わず目を瞑る。そしたらなんと左手に違和感…
『はい!開けていいよ!』
いやいや開けなくてもわかるでしょ。今私の大切な薬指になにかはめたな?
そろ〜りと目を開くと案の定、中心に綺麗な青が装飾された指輪がはまっていた
『なんじゃこりゃ』
『なんとなんとッ!僕の愛情という名の呪力がたぁ〜っぷり詰まった婚約指輪でぇすッ!僕の呪力すなわち僕自身みたいなものだから[#da=1#]には僕が死なない限りオートで無限が張られまぁすッ!』
『はぁ……無限の壁ねぇ』
(何を言い出すと思ったら)
『え〜っとね悟、私たちは付き合ってないからね?縛りなんて成立する訳…』
(まぁ実を言えば私は悟の事が好きで…照れくさくて言えないだけなんだけど)
アプローチがあまりにも強くていつもふざけてツッコミをいれてハイおしまい…ってやっちゃうから"好き"なんて今更言えなくなってしまったのだ
『ちなみに発動条件は[#da=1#]が指輪をはめた瞬間だから』
『はめた……』
(瞬間…?)
『後は何しても外れない感じだから。発動者の術式が強ければ強い程縛りは強くなるから』
『成程つまりここにはまってるのは現代最強呪術師の縛りって事か』
『そゆこと。どぉ〜しても外したいなら僕に勝てる奴にでも頼んでみなよ。まッ、いる訳ないけどね』
渋谷事変が起きて悟が封印されてしまった時、沢山の術師が死んだ
それでもなお、こんなに弱い私が生きているのは他ならない無限のお陰だった。生きててよかったなんて思った事ない。目の前で起きたあの光景はまさに地獄絵図の様なものだったから
…でも、今左手にはまる指輪の石には半分に割ったように大きなヒビが入っている。それと同時、綺麗だったあの青の光もなくなっていた
「…」
私の前に張られていた無限は少し前に消えてなくなってしまった
『大丈夫だって!僕が宿儺と戦っててもずっとお前の事守ってやれるから。すぐに戻ってくるから』
『…行ってらっしゃい』
『ん、行ってきますッ!』
「……止めればよかった。あの時…行かないでって」
『次は真面目に考えておいてよ。宿儺祓ってから答え聞くからさ』
酷く入り交じった残穢だ。宿儺と悟の残穢。ゆっくり辿って歩いて行くと一つだけ、邪悪な呪力を感じた。顔を上げなくたって分かる
「五条悟が言っていた"[#da=1#]"と言う女はお前か、小娘」
ぐちゃぐちゃな感情のまま前を向く。そこにいたのは紛うことなき宿儺と悟だった
「…成程。微弱ながらお前から五条悟の呪力を感じる。"消えかけの残り香"の様なモノをな」
「うるさい」
怒りも何も感じない
素直に思った事を口にした
「ククッ…俺にそんな物言いをした人間は初めてだ。中々肝の座った女だな」
「……悟は何か言ってた?」
返してくれる確信もない問いを宿儺に投げた。多分返らないだろう。そう思った
「100%ないとは思うけど自分が死んでも[#da=1#]だけは殺すなと言っていたな」
「嘘じゃない?」
「嘘などついてどうする。数ある言葉の中から一番遺言に近いものを選んでやったのだから文句を言うな。不愉快だ」
その場で宿儺は私を殺さなかった。
悟の元まで歩いて立ち止まる。悟の死に顔が少し笑っているように見えた。同じように隣に寝転がって空を見上げる
「楽しかったの?悟」
「…」
「戻ってくるって約束したのに」
「…」
「私、ずっと待ってたのに」
「…」
「行かないで欲しかったの」
そう、行かないで欲しかった
呪いの王、両面宿儺と聞いて誰もが足を引き道を作った。もはや手を打てるのはこの男しかいないと、その道を歩いたのは現代最強呪術師の悟だった
それでも私は嫌だった。悟しかいないって分かってても、いくら強くても"もしも"って思ったら怖くて
「嫌だって縋っても悟は行くよね」
「…」
「私が大泣きしても笑うんでしょ?」
「…」
「心配すんなって、任せとけって」
悟の笑顔が脳裏に浮かぶ
返らない返事に心がえぐられるほどに痛くなって前がぼやけ始めた
「でも、私は嫌だったの……めんどくさい女だって思われたっていいから…戦わないでって…なんで悟なの?って…他にも戦える人がいるのにどうして一人だけで戦わせようとするのって…」
涙が止まらなかった
悟の血溜まりに寝転がっていたせいで服は赤く染っていく
「ねぇ、傑に会えた?」
「…」
「七海とか灰原にもよろしく言ってね」
今はもう少しここにいたいの
「返事、もっと早く言えばよかった」
「…」
暗く濁った青の瞳に空の綺麗な青はもう二度と映らない。悟と過した時間も、全部……
『[#da=1#]〜』
「ごめんね悟、私…悟の事好きだったの」
「……」
「ずっと、ずっと言えなくてごめん」
握っても温まらない手に自分の手を重ねて私は笑顔で涙を零す。いつかまた悟に会った時、今度こそ好きって言いたいな
END
1/1ページ