最強だって恋をする


「[#da=1#]、デートしよ♡」



最強だってをする

「歌姫、助けて」
「絶ッッ対にイヤ」

即答すぎてガン萎えした……

「ねぇねぇ、デートしようよぉ〜[#da=1#]チャン」


私の隣のデスクからキラキラと視線を送るのは高専の頃の後輩、五条悟だ。どういう訳か五条に好かれた私はかれこれ二ヶ月はこの状態なのである

「[#da=1#]は僕の事嫌いなの?」

「尊敬してるけど好きではないかな」



自分で言っておいてなんだがベストアンサーじゃないかと胸を張りたい

「硝子〜」
「断る」

「ねぇなんで即答するの!?」

ガラッ

新たな客人の気配!


「戻りました」

(キターーーーッ!!)

「七海七海!助けてッ!」



七海は高専の頃からなんだかんだで私を助けてくれるスーパーウルトラ助っ人マンなのだ!

「またやってるんですか。二ヶ月でしたっけ?そんな長期間アプローチして無理なら諦めた方がいいのでは?」

「僕がこうしたいからやってんのー。七海クンは口出ししないでくださーい」


五条はいつもこうだ
口出すな〜とか手出しするな〜とか


「あのねぇ五条、ハッキリどっちがマシかと言うと私的には七海の方がまだ全然アリだと思うのよ。五条は重すぎ!」

(色々!)


コーヒーを一口飲むといつものしかかってくる重さがなくなって身体が軽くなる

(お、効果あり!?)



「そんなに七海がいいならさ、僕もアプローチやめてやるよ。最後に飲み物奢ってくれる?」


口角を上げた五条に私は変な違和感を感じながらもこれであのアプローチも終止符を打つのだと身軽になった


「いいよ〜!自販機の中から好きなの選びなさいッ!」


「五条、どれがいいの?私先買っていい?コーヒー飲んでたらココア飲みたくなっちゃってさ」

「いいよ」


「五条もようやく分かってくれたのね〜。ちょっと前まで言ってたじゃん?ほら、愛ほど歪んだ呪いはないって。そうよそうよ、呪術師最強とあろう五条悟が愛なんかに翻弄されて?歪むわけにいかないもんね〜」


あれは確か憂太くんが入学してすぐの頃の話だったっけかな?憂太くんもだいぶ逞しくなってきて……この先の成長が楽しみだな〜

「で、五条は?決めたの?」



チャリンとお金を入れてボタンを押す。その時、耳元で五条がボソッと呟いた








「領域展開、無量空処」

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……
五条side

時間にして1.05秒程の無量空処
[#da=1#]の体勢が崩れて彼女が持っていたココア缶が転がり落ちる


「……お前が悪いんだよ。いつか振り向いてくれるって信じて何度も何度も話したのに。今日は僕より七海の方がマシ?」


予め周囲の人間に影響を出さないために下ろした帳が上がっていく

「僕の事をさ…"呪術師"として見るなよ」




[#da=1#]が受けた無量空処の影響は廃人になる一歩手前、記憶障害を引き起こすが回復の兆しが見える程度であり、僕の使い勝手の良いようザックリ決めた時間だ

「体調不良でいいよね。今のお前じゃ……そうだな。三日は目が覚めないだろうから。三日後に目を合わせた時、僕が好印象にうつるといいな」



転がり落ちたココア缶を拾い上げて[#da=1#]を実家に送り届ける。実はもうきっと彼女が僕に振り向いてくれないかもしれないと薄ら気付いていたから、特別に専用の部屋を用意しておいた

「また夜に戻る。僕がさっき立寄った部屋には誰も近寄せないで」


それだけ言って僕は高専に戻った

[#da=1#]side

「お、起きてるね。おはよう」

(誰?)

なんだろう?意識にモヤがかかったみたいにボーッとして…上手く思い出せない


「自分の名前分かる?」

「……私、は………」


あれ?
(誰だっけ?)

「五条[#da=1#]」

「……え?」



綺麗な青の中にポカンとした顔の私が映っている

「君の名前」


「私の名前…。あの、今まで何があったのか思い出せないんです。私なにかご迷惑かけていませんでしたか?」



この人の事何も分からない
自分の事も、今まで何してたのかも

「かけてないかけてない。むしろ僕たちは敬語使う仲じゃないし」

敬語使う仲じゃない……?



「どういう事ですか?」

「僕の名前はね、五条悟」



五条……悟?

(駄目だ。聞き覚えもない)

「君の旦那さんだよ」

「私の?」


旦那さんじゃ悲しい思いさせたかもしれない。好きな人が自分を忘れてしまっていたとしたら……私なら嫌だ

「[#da=1#]、嫌な事は忘れてもいいんだよ。これから先で僕と沢山思い出を作ればいいんだから」


私を抱き締める五条さんの温かさはやっぱり何も思い出せない。知らない温もり。でも今は彼がそう言うから、その優しさに甘えてもいいんだと。私もそれに応えて抱きしめ返す

「ありがとう」

嬉しそうにそう言った五条さんの腕がより一層強く私を抱き締めた

あぁ、私愛されてるんだな
幸せだな。なんて

知らない相手に深い安心感を覚えた


END
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