決行は10月31日、渋谷
"U R MY SPECIAL"
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『つまらん…つまらん……』
世は平安時代、呪いの王は暇を持て余していた。遊び道具と言えば時たま街に降り、人間を気ままに殺す事くらいだった
『裏梅、戻った……か』
街へ俺の"オモチャ"を取りに行った裏梅の隣に凛とした女が立っていた。その娘が特別美しい訳ではなかったが、裏梅がボロボロになっている所が気がかりだったのだ
『小生意気な。裏梅と対等にやり合ったと言うのか？息一つ切らしもせんでくだらん』
『宿儺様、この娘は』
「両面宿儺様」
俺が確かに斬撃を浴びせたつもりだった。文字通り木っ端微塵になり、跡形もなく消え失せると。だが、斬撃はどういう事か俺に跳ね返る
「お会いできて光栄です。噂通り、残虐極まりないお方なのですね」
ニコリ微笑む女の術式は文字通り"カウンター"と言ったところだろう。自ら手を下さずとも、相手の攻撃を跳ね返せるのであれば…
『お前が今宵の貢物か？随分と余裕そうだな。貢物としての自覚があっての行動か？頭が高いぞ』
図が高ければ切り落とせば良い…が、恐らくこの小娘にそれをした所で"戻ってくる"のであればそれもそれで気に食わん
「貢物のつもりです。街に戻ったって民の反応はたかが知れています。今の私を歓迎してくれる場所など…宿儺様のお手元程度なので」
(ふむ、肝が座った小娘だ)
どうせ貢物、小憎たらしい事に手を下すこともできん小娘。俺がどう扱おうと構わん駒だ
『面白い。それならば正妻として取り上げてやる。お前が泣いて逃げるまでこき使ってやろう』
目を見開く小娘の隣で裏梅は止めに入る。そう、これはただの"昔話"で"暇つぶし"
「上等です」
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ーー
「宿儺様」
名前を呼ぶ度に苛立ちを感じた
「呪いの頂点の方なのでしょう？その程度では死なないのでは？」
煽り文句も散々聞いた
俺が怒っても楽しそうに笑うだけ
「今宵は月が綺麗ですよ。宿儺様、お酌致しましょうか？」
その内、俺を呼ぶその声も悪くないと感じ始めた
「宿儺様」
小娘と言えど"人の子"だ
術式にカウンターを持っていようとも、流行病には勝てなかったのだ
『貢物らしい最期だ』
俺がそう言えば小娘は吹き出して笑う
「楽しんで頂けましたか？」
『余興にもならんかった』
俺が生き続ける先数千年の間、この娘の存在はほんの一欠片のガラスのようだろうに
(くだらん感情を無駄に持ったものだ)
「アナタはこの先もきっと、一ミリたりとも変わらないのでしょうね」
そういった小娘は次の日、ヒンヤリと冷たくなっていた
