パイナップルからはじまる恋
私を強く抱きしめ、肩に顔を押し付けながら呻き声を上げるマルコさんの髪にそっと触れる。
「マルコさん」
ふわふわな髪をとかすように撫でながら逆の手は広い背中に回し、ぽんぽん、とリズムを刻んだ。
「マルコさん、顔を上げて?」
顔を横に向けてマルコさんの耳元でそう囁くと、呻き声が小さくなった。
もう一度同じ言葉を伝えると、ゆっくりと顔を上げ、私を見ようとしてくれる。
「マルコさん」
淀んだ瞳は、私を映していなかった。
ほんの少し前まで私を映していた綺麗な瞳は陰に覆われ、"今"を映そうとしていない。
「マルコさん」
目尻に唇を落として、名前を呼んで、もう一回唇を落とす。
「明日の朝ごはんは、ホームベーカリーのパンですよ」
「…明日」
私の上に倒れ込んでいたマルコさんの体が動き、圧迫感が和らいだ。マルコさんとベッドの間から抜け出して、体を横に向ける。
「それからマルコさんに車を出してもらって、アウトレットに行きます」
ぽんぽん、とベッドを叩きながらマルコさんを見ていると、マルコさんは体をベッドに預け、ゆっくりと体をこちらへ向けてくれた。
「だからですね」
「?」
両腕を回して、苦しくないくらいに、けど、私がここにいるのが分かるくらいに抱きしめた。私の体温が伝わるようにマルコさんの足に自分のを絡めて、できる限り隙間ができないようにする。
「八時ぐらいには起きてくれると嬉しいです」
「…ん」
マルコさんの腕が回ってきた。絡めた足にも絡みついてきて、隙間がさらになくなっていく。
「車って買い替えるんですか?」
「…まだ、分からないよい」
今と同じような大きい車だと私は運転ができないから小さめがいいけど、マルコさんが押さえている車はどれも大きいらしい。
「ん」
つむじに柔らかいものが当たって、顔を上げるとおでこにも同じものを落としてくれた。
マルコさんの瞳には、私がぼんやりと映っている。
「マルコさん」
「ん?」
「ここにも」
ん、と顎を上げてお願いするとすぐに唇に寄せてくれた。ゆっくり離れていき、こつん、とおでことおでこがくっつく。
「…すまん」
先には、進めなかった──。
「す、まん」
鼻先にキスをくれて、口元にも目尻にも。マルコさんはすまん、すまんと呟きながらキスをくれる。
そんなマルコさんの表情は辛そうで、悔しそうで、可愛くない。
マルコさんがキスをしてくれても、胸は温かくならなかった。
そんなキスは、欲しくない。
「マルコさん」
「?」
唇にキスをしようとしたマルコさんの両頬を手のひらで包み、私から送る。
「"すまん"は禁止です」
マルコさんは口を開いて、噤んだ。
「ね?」
「…」
瞼を閉じて、開けられた瞳には私がはっきりと映されていた。もう一度顔を寄せて、唇に優しくキスをしてくれる。
「マルコさん、"よい"、は?」
「…よい」
安心した表情のマルコさんからのキスは、胸を温かくしてくれた。
私からもキスをするとお返しをしてくれて、またあったかくなる。
「俺も、お前さんが欲しいんだよい」
旅行以来、求めるのを躊躇っていた。手は繋ぐし抱きしめ合うしキスもするけど、その先を私の体が欲しないように、マルコさんが辛い思いをしないようにしていた。
けど、進みたいと、先週そう話してくれたマルコさんは今日ベッドに入ってすぐ、キスをたくさんしてくれた。
「んぅっ…ふっ」
大きく温かい手が体の至る所、届く全てのところを撫でてくれた。頭も頬も、耳も首も肩も、その先も。
「あぁっ」
足の先までたくさん可愛がられていたら、私が何も言葉にしなくても、私の体はマルコさんを欲してしまう。
「…っ」
「ぁ」
そして、体の奥が疼いて瞳まで伝わると、瞳は勝手にマルコさんに伝えてしまうのだ。
マルコさんが欲しい、シたい。きて、と。
「ぐ、ぅ」
「マルコさ…!」
その想いを受け取った瞬間、マルコさんの瞳に住み着く陰が顔を出して、マルコさんをどこかへ連れ去ってしまう。
私の知らないところへ、マルコさんしか知らないところへ。私にはそれがどこだか分からない。
「ゔ…っぅ」
「マルコさん、私を見て?」
けど私は、私を離すまいとしがみつくマルコさんが、一人で戻って来るのをただ待つなんてことはしない。
マルコさんが、進みたいと言ってくれたから。
マルコさんが、欲しいと思ってくれているから。
だから私は、陰がどこかへ行くまで、陰に何度だって伝える。
「明日はパンに何を乗せましょうか」
「パイナップルジャム」
「あの…それはもう無いですよ」
「…え?」
「"先週のマルコさん"が、全部使っちゃいました」
そうだった、と残念そうな表情を浮かべるマルコさんの瞳に陰はもういない。奥へと隠れてしまったから届くのかは分からないけど、綺麗な瞳に伝え続けた。
「アウトレットにもジャムを売ってる店がありましたよ」
「どこにあった?」
「えーっと、確か…」
もし明日なかったらネットで同じものを買いましょうか。マルコさんが一度に食べすぎないように私がちゃんと見てますからね。
「マルコさん、パイナップルのことになると、あれですからね」
「隣で監視してくれるか?」
「ふふ、もちろんです」
パイナップルを見る時の嬉しそうなマルコさんを止める気はなかったけど、”明日のマルコさん”がパイナップルがなくて悲しまないようにちゃんと止めよう。
「私が”待て”って言ったらちゃんと待ってくださいね?」
「今までも待ってた」
「前科があるのお忘れですか?」
「まだ二犯…だよい?」
お前さんに”待て”と言われたらちゃんと待つ。そう言うマルコさんの表情があまりにも真剣だから思わず笑ってしまった。
「そろそろ寝ましょう。マルコさんが起きられなくなっちゃいます」
「お前さんと寝るとよく眠れるから、ついつい寝すぎるよい」
「なら私はソファで…」
体を起こそうとしたら、させまいとマルコさんにがっちりホールドされてしまった。もちろん冗談だったけど、明日は八…いや七時に起きてみせる、とまた真剣に言うマルコさんが面白くて笑っていたら、何故か不機嫌そうな顔になっていた。
可愛いなぁ。
「じゃあ、”明日のマルコさん”に期待しますね」
「任せろ」
おやすみなさい、とマルコさんの胸に顔を埋めると、つむじにまた柔らかいものが当たって、おやすみ、と声がした。
"一つになりたいのになれない私達"は、明日を待ち焦がれながら眠りにつく。
◇ ◇ ◇
「こっちがいいですかね?…あ!この服も似合い…」
「待て」
マルコさんの言葉に、私の体はぴたりと止まった。右手を、取ろうとしていたトップスの手前で止めたまま、マルコさんが”よし”と言うのを待つ。
けどすぐに、全く違う言葉をかけられた。
「今、何着持ってる?」
「え?えーっと…」
一、二、三…と、腕に抱える何着目かのマルコさんの一張羅候補を数えてみると六着もあった。マルコさんは満面の笑みでその中から三着を奪い、私の手を取り、フィッティングルームへ歩き出す。
「あのトップスもいいと思うんです。マルコさんの雰囲気にぴったりなんです」
「その言葉、さっきも聞いた」
「私は今を生きているんです!」
「意味が分からないよい…」
マルコさんに似合う素敵な服が多すぎる。あれもこれも、これもそれも、どれもいい。
今シーズンもまた悩ましい時期がきちゃった、とアウトレットに足を踏み入れてから二時間、マルコさんの服はまだ決められない。
「素敵すぎますね…」
「もっと真面目に見てくれ」
「私はいつだって大真面目ですけど?」
試着したマルコさんを見て”素敵すぎる”以外にぴったりの言葉が見つからなかったからそう言ったのに、マルコさんは呆れ顔。んじゃ次な、とカーテンを閉め次の服に着替えはじめた。
うんうん、すごく似合っていたなぁ。…ん?なんか急にコート姿のマルコさんが頭の中に…。コートをプレゼントするのもありかも。は!さっきマルコさんにぴったりのコートが!
「マルコさんっ」
「よい!?」
カーテンを少し開けて顔を入れると、トップスを半分ほど脱いだ状態のマルコさんがいた。
なんで開けた!?と慌てて服を着なおし、両手でむぎゅ、と私の顔を追い出そうとする。
「コート!今回はコートもプレゼントしたい!」
「秋物のコートは着る時が少ないから別に…」
「デートたくさんすればいいんです」
いつも行くスーパーにも、ちょっと遠くのショッピングモールへ行く時も着ればいい。機会はたくさんある。
「お家の中でも着ればいいんです」
「着ないよい」
「コート姿のマルコさんが見たいので着てください!」
「お前さんは服のことになると…」
マルコさんはカーテンを全て開け、私にコートを持ってくるように促した。
ウキウキで店内を歩き回り、あれもこれもそれもと似合うコートを腕に抱えて戻ると、マルコさんはまた呆れ顔。
「…何着持ってる?」
「えーっと……五着です!」
「よいよい」
マルコさんに全て試着してもらって、吟味に吟味を重ねて一着をプレゼントし、お昼ご飯へ。マルコさんが「ラーメン、俺はラーメンを食べるよい」とフードコートへ歩き出すのでついていき、いつもようにカウンター席を取り、「俺は醤油とんこつ」とラーメン屋さんを指さすので笑顔でお見送り。
「ふ、ふふ…可愛い」
そんなにラーメンが食べたかったんだ。昨日グルメ番組でラーメンやってたからかな?
列に並ぶ大きなパイナップルおじさんを見て、何を食べようかとフードコート内を見渡す。ロコモコ、冷麵、海鮮丼、ハンバーガー、マルコさんと同じラーメン。マルコさんの服選びで頭を使ったからカロリーがあるものがいいな。…私もラーメンにしよう。醤油とんこつか、味玉ラーメンか。
食べるものを決め、こちらを見ていたマルコさんに自分のスマホを見せ、メッセージアプリを開き、電話をかける。マルコさんは私を見ながらスマホを耳に当てた。
『どうしたよい?』
「私は味玉ラーメンです」
『味は?』
「味噌とんこつ!」
『りょーかい』
味玉美味そう…、とマルコさんが覗いてくるので半分渡して、醤油も美味しそう…、と私が覗くと、マルコさんがラーメン鉢をこちらに寄せてくれた。お返しに私の味噌とんこつを少しあげて、美味い、美味しい、とラーメンを啜り続け、十分もかからずに完食。
「マルコさん、ここで問題です」
「よい?」
「しょっぱいものの後に食べるものは何でしょうか?」
「…甘いもの?」
「大正解!」
「くくっ」
「クレープが食べたいです!」
次は俺の番だ、と私の服を選ぶ気満々のマルコさんとフードコートを出てすぐ、マルコさんの手をぐいぐい引っ張ってクレープ屋さんの列に並ぶ。前には十組ぐらいいるけど、クレープだから回転は早いはず、どれにするか決めないと、とマルコさんの手を離してスマホでお店のメニューを検索。
「マルコさん、どれが…」
マルコさんにも画面を見せようと顔を横に向けたけど、姿がなかった。
「もう少し上げてくれるかよい?」
声は、私の頭上から聞こえた。見上げると、ん?と首を傾げるマルコさんと目が合う。
「…マルコさんって後ろに立つの好きでしたよね」
マルコさんが全く料理をしなかった頃、いつも料理をする私の後ろに立って、見上げると今みたいに可愛く首を傾げてくれていた。
なんだか懐かしいな、とマルコさんを見つめ続けていたら、列が進んだよい、とマルコさんに背中を押される。
「どうして後ろに立ちたいんですか?」
「…いつでも狙えるように?」
「私を?」
「ん」
マルコさんは、へへ、とすごく嬉しそうに笑った。
ちょっと、というかすごく意味が分からないけど、嬉しそうだからいっか。
半分こしましょうね。ん、俺はこれ。決めるの早いですね。私は…えーーーっと。
「もう順番になっちゃうわよ」
「えっと、えーっと!」
「ほーら、どれがいいの?」
「待ってママ!今決めてるの!」
不意に前の親子の会話が耳に入って、顔を上げる。
母親に抱き上げられている女の子がどうしようどうしようと慌てていた。あと三組、二組と前へ進む度に、母親が楽しそうに女の子を急かしている。
「ふふ」
可愛いなぁ。どれにするのかな?
女の子が何を注文するのかが気になり、二人の会話をずっと聞いていると、また頭上から声がした。
「決めたかよい?」
「…決まってません」
そうだった。真剣に悩む女の子を微笑ましく眺めている場合ではない。
私もまだ決まってない。早く決めないと!
マルコさんはシンプルなバターと砂糖のクレープを選んだから、私は…。
「順番くるよい」
「え!?」
前の女の子は決めてしまったらしい。
マルコさんを見ると、どれがいい?と微笑んでくれるだけだった。当たり前だけど、マルコさんの顔を見ても決められない。
あぁ、パイナップルメニューがあればそれ一択なのに…!
「決められません。選んでほしいです」
「食べたいって言ったのはお前さんなのに?」
「クレープが食べれるのは変わりません!」
「…それでいいのかよい?」
「ご注文をお伺いします」
早く早く、とマルコさんに促すと、カウンターにあるメニュー表を覗き込み、もう一つは卵とベーコン、チーズが入った食事系クレープを注文してくれた。
「甘いもの食べたら、またしょっぱいものが食べたくなるから両方頼んだらどうかと…」
「…マルコさん」
「こ、これじゃなかったかよい?」
「流石です!」
「ふふん」
流石!マルコさんはできる男!
「「いただきます」」
バターと砂糖のクレープは、シンプルに美味しかった。クレープと言えば”ホイップクリームたっぷり”をイメージするから、生地だけの見た目は不思議。けど、バターのいい香りがして、中はもちもちで砂糖の甘みもあって、いい意味で裏切られた。
食事系クレープは私もマルコさんも初めて。一口食べたマルコさんが、うま、とこちらを見るので私もかぶりつき、マルコさんを見つめ返してしまった。目玉焼きとハムとチーズの塩味とうま味があってすごく美味しかった。
「よし、今度こそ俺の番だよい」
ラーメンでお腹は八分目まできていたけど、クレープもあっという間に完食。お腹が満たされ、二人で満足満足とアウトレット内を再び歩き出す。
「あっちの店も見ていいかよい?」
「もちろんですよ」
「あそこの店も、前に買った店も」
「はい。全部行きましょう!」
どんな服がいいか、と楽しそうにマネキンを見て、お店の中に入って私に服を合わせて試着して、マルコさんが似合う似合うとニコニコ顔で私を見て、よし次だよい、とお店を出る。
あと何回これを繰り返すかな?決められるかな?とマルコさんの楽し気な姿を眺め、次に行くお店の方を見て、あ、と声を出してしまった。マルコさんが私を見て、気になるものがあったのかと尋ねてくれる。
「結婚式用のドレスを買う予定があって…」
マルコさんお目当てのお店の隣に、パーティードレスを着たマネキンがいたからつい声が出てしまった。結婚式はまだ少し先だから今日じゃなくて大丈夫だけど、せっかくだからとマルコさんが足の向きを変えてくれた。
「どんなドレスを買うんだ?」
今持ってるドレスは膝丈ワンピース。二十代後半、大台間近の私はちょっと着るのに抵抗がある。だから丈の長いワンピースを買おうと思っていた。
「マルコさんのことを知っている親友の結婚式なんです。私、スピーチするんですよ」
「俺はどう思われているんだ?よくなかったら…」
「逆です。すごくいい人だって思ってくれてますよ。”一生マルコさんのそばにいなさい”って言われました」
「…親友が?」
「ふふ、はい」
友人代表スピーチ、考えないとな。ナオさんを見るのは初めてだなぁ。アスカから聞く彼は素敵だから、楽しみ。もちろん、料理も。
どんなのがいいかな、とたくさんのドレスを見ながら、結婚式当日のことを考えていると、「よし分かった」とマルコさんが声を出した。
「ドレスを買おう」
マルコさんはうんうん、と頷き、大きな手で綺麗なワンピースドレスを取り、私の体に合わせる。
「ドレスはデートの時には着ないですよ。だから自分で…」
「俺からプレゼントさせてくれ」
大切な人の親友の結婚式。彼女の幸せを俺も祝いたい。
マルコさんは、ふむ、とドレスを合わせた私を見て、こっちよりも…、と他のドレスを探し始める。
「あの、ドレスは本当に…」
「今、俺の隣にお前さんがいてくれるのは、彼女のおかげでもあるから」
親友の彼氏がこんなおっさんなんだ。自分が言うのも可笑しい話だが、普通なら心配になるだろい?それなのに、彼女はお前さんの話だけで俺を信用してくれている。
「だからせめて、スピーチで立つお前さんのドレスをプレゼントさせてくれよい」
「…」
「ん。これが似合う」
試着試着、と背中を押されフィッティングルームへ。ほらほら、と靴を脱ぐように促され、俺はすぐ傍にいるから、とカーテンを閉められてしまった。
「…」
マルコさんの隣にいるのは私の意思だと思っていた。マルコさんが大好きだから隣にいるのは当たり前。マルコさんが大好きだから、マルコさんの大好きなサッチ丼をマルコさんの人生最後の時に食べさせる。マルコさんが大好きだから、ずっと一緒にいる。
“…それ、パパ活じゃん”
”大台に乗るんだから、少し焦った方がいいんじゃない?”
”マルコさんにもその表情しているの?”
”マルコさんが言ったの?お前はただのご飯係だって”
”何よりも大事にしたいって人もいるよ”
”だから言ったじゃん。あんたは愛されてんの。一生マルコさんのそばにいなさい!”
「…」
もし、アスカがずっとパパ活だと思っていたら?
もしかしたら、マルコさんと会うのを止めさせようとしたかも。
もし、マルコさんへの想いを自覚した時にアスカが電話をくれなかったら?
もしかしたら、マルコさんと付き合うことはできなかったかも
「マルコさんの言うとおりかも」
今、マルコさんの隣にいるのは私の意思だけじゃない。両親やイゾウさんやサッチさん、私と関わってくれる色んな人が、私の道を荒したり整えたり変えたりしている。
“アスカがどんどん先を行っちゃう…”
”え?いつも隣を歩いているつもりだけど?”
「…うん、いいんじゃないかな」
私の方はいつになるのか、くるのかこないのか、やるのかやらないのか、何も分からないけど。
いつか、その時がもし来たら、必ずアスカを呼ぼう。
「マルコさん、どうですか?」
「……」
「マルコさん?」
「素敵すぎるよい…」
「もっと真面目に見てください」
「俺はいつも大真面目だが?」
けど先ずは、心からの祝福を貴女へ。
「マルコさん」
ふわふわな髪をとかすように撫でながら逆の手は広い背中に回し、ぽんぽん、とリズムを刻んだ。
「マルコさん、顔を上げて?」
顔を横に向けてマルコさんの耳元でそう囁くと、呻き声が小さくなった。
もう一度同じ言葉を伝えると、ゆっくりと顔を上げ、私を見ようとしてくれる。
「マルコさん」
淀んだ瞳は、私を映していなかった。
ほんの少し前まで私を映していた綺麗な瞳は陰に覆われ、"今"を映そうとしていない。
「マルコさん」
目尻に唇を落として、名前を呼んで、もう一回唇を落とす。
「明日の朝ごはんは、ホームベーカリーのパンですよ」
「…明日」
私の上に倒れ込んでいたマルコさんの体が動き、圧迫感が和らいだ。マルコさんとベッドの間から抜け出して、体を横に向ける。
「それからマルコさんに車を出してもらって、アウトレットに行きます」
ぽんぽん、とベッドを叩きながらマルコさんを見ていると、マルコさんは体をベッドに預け、ゆっくりと体をこちらへ向けてくれた。
「だからですね」
「?」
両腕を回して、苦しくないくらいに、けど、私がここにいるのが分かるくらいに抱きしめた。私の体温が伝わるようにマルコさんの足に自分のを絡めて、できる限り隙間ができないようにする。
「八時ぐらいには起きてくれると嬉しいです」
「…ん」
マルコさんの腕が回ってきた。絡めた足にも絡みついてきて、隙間がさらになくなっていく。
「車って買い替えるんですか?」
「…まだ、分からないよい」
今と同じような大きい車だと私は運転ができないから小さめがいいけど、マルコさんが押さえている車はどれも大きいらしい。
「ん」
つむじに柔らかいものが当たって、顔を上げるとおでこにも同じものを落としてくれた。
マルコさんの瞳には、私がぼんやりと映っている。
「マルコさん」
「ん?」
「ここにも」
ん、と顎を上げてお願いするとすぐに唇に寄せてくれた。ゆっくり離れていき、こつん、とおでことおでこがくっつく。
「…すまん」
先には、進めなかった──。
「す、まん」
鼻先にキスをくれて、口元にも目尻にも。マルコさんはすまん、すまんと呟きながらキスをくれる。
そんなマルコさんの表情は辛そうで、悔しそうで、可愛くない。
マルコさんがキスをしてくれても、胸は温かくならなかった。
そんなキスは、欲しくない。
「マルコさん」
「?」
唇にキスをしようとしたマルコさんの両頬を手のひらで包み、私から送る。
「"すまん"は禁止です」
マルコさんは口を開いて、噤んだ。
「ね?」
「…」
瞼を閉じて、開けられた瞳には私がはっきりと映されていた。もう一度顔を寄せて、唇に優しくキスをしてくれる。
「マルコさん、"よい"、は?」
「…よい」
安心した表情のマルコさんからのキスは、胸を温かくしてくれた。
私からもキスをするとお返しをしてくれて、またあったかくなる。
「俺も、お前さんが欲しいんだよい」
旅行以来、求めるのを躊躇っていた。手は繋ぐし抱きしめ合うしキスもするけど、その先を私の体が欲しないように、マルコさんが辛い思いをしないようにしていた。
けど、進みたいと、先週そう話してくれたマルコさんは今日ベッドに入ってすぐ、キスをたくさんしてくれた。
「んぅっ…ふっ」
大きく温かい手が体の至る所、届く全てのところを撫でてくれた。頭も頬も、耳も首も肩も、その先も。
「あぁっ」
足の先までたくさん可愛がられていたら、私が何も言葉にしなくても、私の体はマルコさんを欲してしまう。
「…っ」
「ぁ」
そして、体の奥が疼いて瞳まで伝わると、瞳は勝手にマルコさんに伝えてしまうのだ。
マルコさんが欲しい、シたい。きて、と。
「ぐ、ぅ」
「マルコさ…!」
その想いを受け取った瞬間、マルコさんの瞳に住み着く陰が顔を出して、マルコさんをどこかへ連れ去ってしまう。
私の知らないところへ、マルコさんしか知らないところへ。私にはそれがどこだか分からない。
「ゔ…っぅ」
「マルコさん、私を見て?」
けど私は、私を離すまいとしがみつくマルコさんが、一人で戻って来るのをただ待つなんてことはしない。
マルコさんが、進みたいと言ってくれたから。
マルコさんが、欲しいと思ってくれているから。
だから私は、陰がどこかへ行くまで、陰に何度だって伝える。
「明日はパンに何を乗せましょうか」
「パイナップルジャム」
「あの…それはもう無いですよ」
「…え?」
「"先週のマルコさん"が、全部使っちゃいました」
そうだった、と残念そうな表情を浮かべるマルコさんの瞳に陰はもういない。奥へと隠れてしまったから届くのかは分からないけど、綺麗な瞳に伝え続けた。
「アウトレットにもジャムを売ってる店がありましたよ」
「どこにあった?」
「えーっと、確か…」
もし明日なかったらネットで同じものを買いましょうか。マルコさんが一度に食べすぎないように私がちゃんと見てますからね。
「マルコさん、パイナップルのことになると、あれですからね」
「隣で監視してくれるか?」
「ふふ、もちろんです」
パイナップルを見る時の嬉しそうなマルコさんを止める気はなかったけど、”明日のマルコさん”がパイナップルがなくて悲しまないようにちゃんと止めよう。
「私が”待て”って言ったらちゃんと待ってくださいね?」
「今までも待ってた」
「前科があるのお忘れですか?」
「まだ二犯…だよい?」
お前さんに”待て”と言われたらちゃんと待つ。そう言うマルコさんの表情があまりにも真剣だから思わず笑ってしまった。
「そろそろ寝ましょう。マルコさんが起きられなくなっちゃいます」
「お前さんと寝るとよく眠れるから、ついつい寝すぎるよい」
「なら私はソファで…」
体を起こそうとしたら、させまいとマルコさんにがっちりホールドされてしまった。もちろん冗談だったけど、明日は八…いや七時に起きてみせる、とまた真剣に言うマルコさんが面白くて笑っていたら、何故か不機嫌そうな顔になっていた。
可愛いなぁ。
「じゃあ、”明日のマルコさん”に期待しますね」
「任せろ」
おやすみなさい、とマルコさんの胸に顔を埋めると、つむじにまた柔らかいものが当たって、おやすみ、と声がした。
"一つになりたいのになれない私達"は、明日を待ち焦がれながら眠りにつく。
◇ ◇ ◇
「こっちがいいですかね?…あ!この服も似合い…」
「待て」
マルコさんの言葉に、私の体はぴたりと止まった。右手を、取ろうとしていたトップスの手前で止めたまま、マルコさんが”よし”と言うのを待つ。
けどすぐに、全く違う言葉をかけられた。
「今、何着持ってる?」
「え?えーっと…」
一、二、三…と、腕に抱える何着目かのマルコさんの一張羅候補を数えてみると六着もあった。マルコさんは満面の笑みでその中から三着を奪い、私の手を取り、フィッティングルームへ歩き出す。
「あのトップスもいいと思うんです。マルコさんの雰囲気にぴったりなんです」
「その言葉、さっきも聞いた」
「私は今を生きているんです!」
「意味が分からないよい…」
マルコさんに似合う素敵な服が多すぎる。あれもこれも、これもそれも、どれもいい。
今シーズンもまた悩ましい時期がきちゃった、とアウトレットに足を踏み入れてから二時間、マルコさんの服はまだ決められない。
「素敵すぎますね…」
「もっと真面目に見てくれ」
「私はいつだって大真面目ですけど?」
試着したマルコさんを見て”素敵すぎる”以外にぴったりの言葉が見つからなかったからそう言ったのに、マルコさんは呆れ顔。んじゃ次な、とカーテンを閉め次の服に着替えはじめた。
うんうん、すごく似合っていたなぁ。…ん?なんか急にコート姿のマルコさんが頭の中に…。コートをプレゼントするのもありかも。は!さっきマルコさんにぴったりのコートが!
「マルコさんっ」
「よい!?」
カーテンを少し開けて顔を入れると、トップスを半分ほど脱いだ状態のマルコさんがいた。
なんで開けた!?と慌てて服を着なおし、両手でむぎゅ、と私の顔を追い出そうとする。
「コート!今回はコートもプレゼントしたい!」
「秋物のコートは着る時が少ないから別に…」
「デートたくさんすればいいんです」
いつも行くスーパーにも、ちょっと遠くのショッピングモールへ行く時も着ればいい。機会はたくさんある。
「お家の中でも着ればいいんです」
「着ないよい」
「コート姿のマルコさんが見たいので着てください!」
「お前さんは服のことになると…」
マルコさんはカーテンを全て開け、私にコートを持ってくるように促した。
ウキウキで店内を歩き回り、あれもこれもそれもと似合うコートを腕に抱えて戻ると、マルコさんはまた呆れ顔。
「…何着持ってる?」
「えーっと……五着です!」
「よいよい」
マルコさんに全て試着してもらって、吟味に吟味を重ねて一着をプレゼントし、お昼ご飯へ。マルコさんが「ラーメン、俺はラーメンを食べるよい」とフードコートへ歩き出すのでついていき、いつもようにカウンター席を取り、「俺は醤油とんこつ」とラーメン屋さんを指さすので笑顔でお見送り。
「ふ、ふふ…可愛い」
そんなにラーメンが食べたかったんだ。昨日グルメ番組でラーメンやってたからかな?
列に並ぶ大きなパイナップルおじさんを見て、何を食べようかとフードコート内を見渡す。ロコモコ、冷麵、海鮮丼、ハンバーガー、マルコさんと同じラーメン。マルコさんの服選びで頭を使ったからカロリーがあるものがいいな。…私もラーメンにしよう。醤油とんこつか、味玉ラーメンか。
食べるものを決め、こちらを見ていたマルコさんに自分のスマホを見せ、メッセージアプリを開き、電話をかける。マルコさんは私を見ながらスマホを耳に当てた。
『どうしたよい?』
「私は味玉ラーメンです」
『味は?』
「味噌とんこつ!」
『りょーかい』
味玉美味そう…、とマルコさんが覗いてくるので半分渡して、醤油も美味しそう…、と私が覗くと、マルコさんがラーメン鉢をこちらに寄せてくれた。お返しに私の味噌とんこつを少しあげて、美味い、美味しい、とラーメンを啜り続け、十分もかからずに完食。
「マルコさん、ここで問題です」
「よい?」
「しょっぱいものの後に食べるものは何でしょうか?」
「…甘いもの?」
「大正解!」
「くくっ」
「クレープが食べたいです!」
次は俺の番だ、と私の服を選ぶ気満々のマルコさんとフードコートを出てすぐ、マルコさんの手をぐいぐい引っ張ってクレープ屋さんの列に並ぶ。前には十組ぐらいいるけど、クレープだから回転は早いはず、どれにするか決めないと、とマルコさんの手を離してスマホでお店のメニューを検索。
「マルコさん、どれが…」
マルコさんにも画面を見せようと顔を横に向けたけど、姿がなかった。
「もう少し上げてくれるかよい?」
声は、私の頭上から聞こえた。見上げると、ん?と首を傾げるマルコさんと目が合う。
「…マルコさんって後ろに立つの好きでしたよね」
マルコさんが全く料理をしなかった頃、いつも料理をする私の後ろに立って、見上げると今みたいに可愛く首を傾げてくれていた。
なんだか懐かしいな、とマルコさんを見つめ続けていたら、列が進んだよい、とマルコさんに背中を押される。
「どうして後ろに立ちたいんですか?」
「…いつでも狙えるように?」
「私を?」
「ん」
マルコさんは、へへ、とすごく嬉しそうに笑った。
ちょっと、というかすごく意味が分からないけど、嬉しそうだからいっか。
半分こしましょうね。ん、俺はこれ。決めるの早いですね。私は…えーーーっと。
「もう順番になっちゃうわよ」
「えっと、えーっと!」
「ほーら、どれがいいの?」
「待ってママ!今決めてるの!」
不意に前の親子の会話が耳に入って、顔を上げる。
母親に抱き上げられている女の子がどうしようどうしようと慌てていた。あと三組、二組と前へ進む度に、母親が楽しそうに女の子を急かしている。
「ふふ」
可愛いなぁ。どれにするのかな?
女の子が何を注文するのかが気になり、二人の会話をずっと聞いていると、また頭上から声がした。
「決めたかよい?」
「…決まってません」
そうだった。真剣に悩む女の子を微笑ましく眺めている場合ではない。
私もまだ決まってない。早く決めないと!
マルコさんはシンプルなバターと砂糖のクレープを選んだから、私は…。
「順番くるよい」
「え!?」
前の女の子は決めてしまったらしい。
マルコさんを見ると、どれがいい?と微笑んでくれるだけだった。当たり前だけど、マルコさんの顔を見ても決められない。
あぁ、パイナップルメニューがあればそれ一択なのに…!
「決められません。選んでほしいです」
「食べたいって言ったのはお前さんなのに?」
「クレープが食べれるのは変わりません!」
「…それでいいのかよい?」
「ご注文をお伺いします」
早く早く、とマルコさんに促すと、カウンターにあるメニュー表を覗き込み、もう一つは卵とベーコン、チーズが入った食事系クレープを注文してくれた。
「甘いもの食べたら、またしょっぱいものが食べたくなるから両方頼んだらどうかと…」
「…マルコさん」
「こ、これじゃなかったかよい?」
「流石です!」
「ふふん」
流石!マルコさんはできる男!
「「いただきます」」
バターと砂糖のクレープは、シンプルに美味しかった。クレープと言えば”ホイップクリームたっぷり”をイメージするから、生地だけの見た目は不思議。けど、バターのいい香りがして、中はもちもちで砂糖の甘みもあって、いい意味で裏切られた。
食事系クレープは私もマルコさんも初めて。一口食べたマルコさんが、うま、とこちらを見るので私もかぶりつき、マルコさんを見つめ返してしまった。目玉焼きとハムとチーズの塩味とうま味があってすごく美味しかった。
「よし、今度こそ俺の番だよい」
ラーメンでお腹は八分目まできていたけど、クレープもあっという間に完食。お腹が満たされ、二人で満足満足とアウトレット内を再び歩き出す。
「あっちの店も見ていいかよい?」
「もちろんですよ」
「あそこの店も、前に買った店も」
「はい。全部行きましょう!」
どんな服がいいか、と楽しそうにマネキンを見て、お店の中に入って私に服を合わせて試着して、マルコさんが似合う似合うとニコニコ顔で私を見て、よし次だよい、とお店を出る。
あと何回これを繰り返すかな?決められるかな?とマルコさんの楽し気な姿を眺め、次に行くお店の方を見て、あ、と声を出してしまった。マルコさんが私を見て、気になるものがあったのかと尋ねてくれる。
「結婚式用のドレスを買う予定があって…」
マルコさんお目当てのお店の隣に、パーティードレスを着たマネキンがいたからつい声が出てしまった。結婚式はまだ少し先だから今日じゃなくて大丈夫だけど、せっかくだからとマルコさんが足の向きを変えてくれた。
「どんなドレスを買うんだ?」
今持ってるドレスは膝丈ワンピース。二十代後半、大台間近の私はちょっと着るのに抵抗がある。だから丈の長いワンピースを買おうと思っていた。
「マルコさんのことを知っている親友の結婚式なんです。私、スピーチするんですよ」
「俺はどう思われているんだ?よくなかったら…」
「逆です。すごくいい人だって思ってくれてますよ。”一生マルコさんのそばにいなさい”って言われました」
「…親友が?」
「ふふ、はい」
友人代表スピーチ、考えないとな。ナオさんを見るのは初めてだなぁ。アスカから聞く彼は素敵だから、楽しみ。もちろん、料理も。
どんなのがいいかな、とたくさんのドレスを見ながら、結婚式当日のことを考えていると、「よし分かった」とマルコさんが声を出した。
「ドレスを買おう」
マルコさんはうんうん、と頷き、大きな手で綺麗なワンピースドレスを取り、私の体に合わせる。
「ドレスはデートの時には着ないですよ。だから自分で…」
「俺からプレゼントさせてくれ」
大切な人の親友の結婚式。彼女の幸せを俺も祝いたい。
マルコさんは、ふむ、とドレスを合わせた私を見て、こっちよりも…、と他のドレスを探し始める。
「あの、ドレスは本当に…」
「今、俺の隣にお前さんがいてくれるのは、彼女のおかげでもあるから」
親友の彼氏がこんなおっさんなんだ。自分が言うのも可笑しい話だが、普通なら心配になるだろい?それなのに、彼女はお前さんの話だけで俺を信用してくれている。
「だからせめて、スピーチで立つお前さんのドレスをプレゼントさせてくれよい」
「…」
「ん。これが似合う」
試着試着、と背中を押されフィッティングルームへ。ほらほら、と靴を脱ぐように促され、俺はすぐ傍にいるから、とカーテンを閉められてしまった。
「…」
マルコさんの隣にいるのは私の意思だと思っていた。マルコさんが大好きだから隣にいるのは当たり前。マルコさんが大好きだから、マルコさんの大好きなサッチ丼をマルコさんの人生最後の時に食べさせる。マルコさんが大好きだから、ずっと一緒にいる。
“…それ、パパ活じゃん”
”大台に乗るんだから、少し焦った方がいいんじゃない?”
”マルコさんにもその表情しているの?”
”マルコさんが言ったの?お前はただのご飯係だって”
”何よりも大事にしたいって人もいるよ”
”だから言ったじゃん。あんたは愛されてんの。一生マルコさんのそばにいなさい!”
「…」
もし、アスカがずっとパパ活だと思っていたら?
もしかしたら、マルコさんと会うのを止めさせようとしたかも。
もし、マルコさんへの想いを自覚した時にアスカが電話をくれなかったら?
もしかしたら、マルコさんと付き合うことはできなかったかも
「マルコさんの言うとおりかも」
今、マルコさんの隣にいるのは私の意思だけじゃない。両親やイゾウさんやサッチさん、私と関わってくれる色んな人が、私の道を荒したり整えたり変えたりしている。
“アスカがどんどん先を行っちゃう…”
”え?いつも隣を歩いているつもりだけど?”
「…うん、いいんじゃないかな」
私の方はいつになるのか、くるのかこないのか、やるのかやらないのか、何も分からないけど。
いつか、その時がもし来たら、必ずアスカを呼ぼう。
「マルコさん、どうですか?」
「……」
「マルコさん?」
「素敵すぎるよい…」
「もっと真面目に見てください」
「俺はいつも大真面目だが?」
けど先ずは、心からの祝福を貴女へ。