パイナップルからはじまる恋

電車に揺られながら、イヤホンから流れる曲の合いの手の予習。
今週の土曜日、誘われたアイドルグループのライブに参戦する。行くからには楽しまないとと、ピンクさん(二十七話登場)に教えてもらったライブのセットリストを聞き合いの手を覚え、せっかくならとセットリスト以外の曲も全て聞いた。その中に通勤時にぴったりな曲があったので通勤時のプレイリストに追加し、あまり変わらないリストが更新されたので新鮮な気持ちに。ちなみに、そのプレイリストの中にはマルコさんの好きなバンドの曲も入っていて、一曲目はマルコさんもよく聞く曲だ。

「おはようございます」
「おはようございます」

イエー!と心の中で掛け声を言いながら、今日も蒸し暑いなぁと嘆きながら駅からビルまでの道を歩き、はぁ生き返る…と涼しいエントランスホールを通り過ぎ、エレベーターを待っていると真後ろから声をかけられた。振り向くとよく話しかけてくれる営業さんがいた。今日も暑いですね、と言う彼は本当に暑そうで、デスクに忘れ物をしたから戻ってきたんだと言う。
意外と抜けているところがあるんだな。そういえばマルコさんも買い物行く時に、特にスマホを忘れるところがあるから、営業さんは忘れっぽいのかな?と思いながら一緒にエレベーターに乗ると、彼に何を聞いているのか尋ねられた。
あ、イヤホン取るの忘れてた。

「今週、友だちに誘われてライブに行くのでその曲を」
「それってもしかして…」

彼が言うグループ名がまさにそうだった。友だちから話を聞いたのだと話す彼は、その友だちはおっかけをするほど好きなんですよ、と苦笑い。
ピンクさんもおっかけをしているし、意外と多いのかな?
大人気グループはすごいですね、なんて話しながらエレベーターを出て、今日も頑張りましょうと分かれデスクに向かうと、渋い表情をしているクミさんに挨拶をされた。

「おはようございます。顔が怖いですよ」
「あの男と来るからよ。経理の子と別れたばかりだから気を付けた方がいいわ」
「早くないですか?」
「そろそろ技術部系を狙ってくるかもしれないのよ」
「どうして分かるんですか?」

管理系の部署の可愛い子や綺麗な子は制覇した、と印象の良くないことを教えてくれるクミさんは本当に怖い表情をしている。クミさん詳しいですね、とあえて笑ってみせたら、総務の同世代の人が知りたくもないのに話してくれるのだと、今度は嫌そうな顔で教えてくれた。
注意するに越したことはない、気をつけなさい、と始業の五分前になっても助言をしてくれるので、メールをチェックしながら、はい、分かりましたと答えたら、もっと真剣に聞きなさい、と怒られてしまった。
もう仕事の時間ですよ。あと二分あるわ。話している間にあと一分です。今日はランチできないかしら…打合せだったわね。明日なら行けますよ。

「心配してくれるのは嬉しいですけど、彼氏以外の男に興味ないので大丈夫ですよ」
「それでも気を付ける。どうやら全員、あまりの包容力にころっといくみたいなのよ」

へぇ、包容力…。マルコさん以上の包容力を持つ人がいるの?
そう言いたいのが伝わったのか、クミさんは呆れたような安心したような顔をして、大丈夫そうね、とようやく落ち着いてくれた。
うんうん、私はマルコさん一筋だから大丈夫。

「おはよう。彼氏自慢はその辺にして。さっき先方から打ち合わせを一時間早められないかと連絡が来たんだが、大丈夫そうか?」
「おはようございます。自慢はしていないですが、分かりました。でしたら十五分後に出ることになります」
「顔が自慢げだったぞ。了解」

上司から通りすがりに顔が自慢げと言われ、そんなに顔に出ていたのかな、とクミさんを見ると、この人にも伝わったわ、とある人を見る。

「明日、惚気大会を開催するけど来る?」
「いいんですか?ちょうど会社にいるのでご一緒させてください」

ご報告も兼ねて!と笑顔の担当営業さんがいつの間にか私の後ろに立っていた。抱えられているパソコンを見て案件の話かと思ったら、偶々通っただけだと言う。
私の後ろってみんなの通り道だったっけ?

「なんだか楽しげな表情をしていたので気になって。今日の打合せは同行できませんが、何かあればチャットください」
「ありがとうございます。契約関係の話が出たら連絡しますね」

では、今日も頑張りましょう!イエイ!急にどうしたの?す、すいません。頭の中が今ライブ会場になっていて…。たまに可笑しくなるわよね、貴女。


◇ ◇ ◇


実家へ帰ると、黙々と食べるマルコさんと嬉しそうな母としょげている父がいた。
もしかして、ついに…?
母を見ると何度も頷き返してくれたので、おめでとう、と声をかける。母とハイタッチをしたいところだけど、初の敗北を味わった父の姿があまりにも可哀そうでできそうにない。

「美味しいですか?」
「ん」

もぐもぐと動かしながら頷いたマルコさんは、ごくんと飲み込むとおつかれさん、と声をかけてくれた。そして、これ美味い、これも美味い、と両親が作ったご飯の感想を言ってくれる。けど両親の様子を見るに、父の料理よりも母の方が美味しかったようだ。マルコさんにまだあるから、とニコニコと話しかける母とは対照的に、父は飯はもういいだろう酒だ酒、とやけになっている。たった一度の敗北でここまでいじけるなんて情けないなぁ、と視線を送ると、マルコさんの胃袋は誰にも渡さん、と言いたげな視線を返されてしまった。
いや、待って。マルコさんの胃袋は私が掴んでいるんだよ。何を言っているんだ、父さんも掴んでいる。二人のものじゃないわ、母さんも掴んだのよ。
私達が”マルコさんの胃袋争奪戦”を静かに繰り広げていると、マルコさんが、ご飯をもう少しいただけると…、声を出したので三人で一斉にマルコさんを見る。すると、私達の勢いに驚いたマルコさんはお代わりが駄目だと勘違いしたのか、やっぱり今日はこのくらいで大丈夫です…、と遠慮するので私はお茶碗を慌てて受け取った。

「マルコさんの胃袋、三等分に…あ、サッチさんの分もあるから四等分にできませんか?」
「よい!?」
「私のを大きめにしてくれ」
「駄目よ。私のを」
「二人は小さくていいです。マルコさん、私のを大きめに…」
「え?え?」

たまに三人の会話についていけない時があるのですが、何の話を…?マルコさんは知らなくて大丈夫です。そうよ。前にも言ったけどこれは私達三人の戦いだから。怖い話なら知っておきたいのですが…。危険なことはない、大丈夫だ。
“胃袋を四等分”と聞かされて大丈夫とは思えない、と不安そうなマルコさんを見て、今日は一時休戦をしよう、と両親はマルコさんのもぐもぐ姿を帰る時までニコニコと眺めていた。

「両親は本当にマルコさんが大好きだから困ります」
「俺は嬉しいよい」
「あの、ファンサービスをもう少し抑えてくれませんか?」
「…アイドルになった覚えはないが?」

それに何もファンサービスなんかしていない、と言うマルコさんに、いかにいつも両親を虜にさせているか説明をする。けどマルコさんは、はいはい、と真剣に取り合ってくれない。
マルコさん、私は真面目に言ってるんですよ。よいよい。聞く気ないじゃないですか。
電車を待ちながら生返事しかしないマルコさんに、他の人に可愛い姿を見せないでほしい、とお願いをする。けど今度は、そんなことを思うのはお前さんだけだから大丈夫だ、と何が大丈夫なのか分からない答えを言われてしまった。
マルコさんの可愛さが世界中に知れ渡ったら大変なことになるんですよ!?断言する、ならない。

「土曜日のライブに行けば、俺がファンサービスなんてしてないのよく分かるよい」
「ファンサービスにだって色々あるんですよ。何もピースとか手を振るだけじゃないんです」
「俺のどの行動がファンサービスなんだよい?」
「食べる姿」
「……」

駄目だこれは、とでも言いだけな呆れ顔のマルコさんに手を引かれて電車に乗り込む。
いつものように座ろうとしたけど、今日は人が多く座れなかったので座席の前で立つことになった。珍しいな、と周りを見渡すと、何だか若い男性が多かった。しかも同じようなトートバックを持っている。聞き耳を立てると、最高だった、新曲がヤバイ、今日も可愛かった、と興奮が収まっていない人達の感想が飛び交っていた。

「ライブ終わりみたいですね」
「だねい。ライブ終わりは友だちと打ち上げしないのかよい?」
「誘われたんですけど、遅くなるから遠慮したんです」

今週ももちろんお泊まり。マルコさんのお家からライブへ向かい、終わったらマルコさんのお家へ帰るからあまり遅い時間になってはいけないかと思って、ピンクさんの誘いを断っていた。けど私の話を聞いたマルコさんが、せっかくなら行ったらどうか、と言ってくれた。夜型のマルコさんは、金曜日と土曜日は私もいるから日を跨ぐ前に寝るけど、いつもは深夜一時まで起きていることもある。だから土曜日も、終電になっても全く問題ない。

「時間は気にしなくていいから。楽しんで来いよい」
「ありがとうございます。夜ご飯はお昼の時に一緒に作っちゃいましょうね」
「よい」

じゃ、また金曜日。
電車を降りていくマルコさんの背中を見送り、窓越しに一度手を振って、スマホを出す。

“ライブの後、やっぱり打ち上げしない?”
“本当!?”

すぐに既読がつき、万歳しているピンクさんの好きなアイドルのスタンプが送られてきた。早いなぁ、と心の中で笑っていると、ぽん、とメッセージが現れる。

”彼氏さん、良いって言ってくれたの?素敵!”

…。
素敵なのは事実だからそう思ってくれるのは嬉しいけど、マルコさんを素敵だと思う人が増えるのは、何だか複雑な気分だった。


◇ ◇ ◇


ピンクさんの髪色は、オレンジ色になっていた。転職活動は今日のライブが終わったら始めるから染め直さないといけない、と本人は残念そう。髪色が自由であればよかったけど、残念ながら私達の職種はピンクやオレンジは止めておいた方がいい。

「毎回、二曲は変わるんだよ。今日はどんな曲か楽しみ!」
「最終日だから、新しい情報の解禁があるはず。アルバム出るかな?次のツアー情報かな?」

ピンクさん改め、オレンジさんは会場で待ち合わせをしてから、列に並んでいる時も、会場に入る時も、席に着いてからもアイドルグループの話をたくさんしてくれる。曲を全て聞いたと伝えたら、どの曲が一番よかった?その曲いいよね!プレイリストに入れてくれたの?!と嬉しそうに返してくれるので、私まで嬉しくなってしまった。ただ、好きになってくれる人が一人でも増えるのが嬉しい、と話すオレンジさんを見て、先日複雑な気分になった自分を恥じてしまったけど、マルコさんは私の彼氏だから仕方がないと思う。

「私の推しは本当に最高なんだよ」
「どんなところが好きなの?」
「聞いてくれるの?!無限に語れるよ!」
「え。なら、開演時間までね」
「えー!打ち上げの時にも話させて!」
「えー」

開演まであと十五分。こんな短い時間では語りつくせない!、とオレンジさんは声を上げた。
すごいなぁ。私にはこんなに熱く語れる人なんていな…、いる、いるいる。私にもたくさん語れる人が!

「先ずスタイル抜群!身長は一八九センチで」

マルコさんの方が高身長だな。二メートル越え。ふふん。…あ、今のマルコさんみたい。

「体づくりもしていて筋肉がすごくあるの。鍛え抜かれた肉体は綺麗すぎる!」

マルコさんも負けてないな。私を片腕で抱き上げるぐらい筋肉あるもんね。

「だけど見た目だけじゃないんだよ。性格もよくて家庭的!」

ふむふむ、マルコさんだってすごく性格がいい。優しいし気遣いがすごい。料理もできるようになったから、できない家事はもうないかな。

「人懐っこくて大型犬みたいで、見た目とのギャップが本当に最高!」

大型犬…。そういえば今朝、寝起きのマルコさんに頭を擦りつけられたなぁ。んんんって可愛い声でぐりぐりって首筋にずっと…。うんうん、負けていない。

「──!…って、聞いてる?」
「うん。聞いてるよ。最高ってことでしょ?すごく分かる」
「あれ?好きになったの?」
「ううん、違う人」
「あれ、好きなアイドルがいたの?誰?」
「パイナップルおじさん」
「そんな名前で活動している人いたっけ?」

マルコさんは運動もできるし、前に聞いた歌声もよかった。
大人気アイドルにも負けていないなんてマルコさんすごいなぁ、としみじみしていると、オレンジさんはある写真を見せてくれた。

「オフショットとかやばいよ」

ほら、と見せてくれたのはアイドルが上半身を露わにした肉体美ショット。
綺麗でしょ?この顔でこの体すごくない?とオレンジさんが同意を求めてくるけど、私はそれどころではなかった。綺麗な筋肉をつけたアイドルを見ながら想像してしまっているのは、パイナップルおじさんのこと。
マルコさんってこれ以上の筋肉があるのかも…?た、たしかに半袖から覗く腕の筋肉とかすごいよね。膝の上に乗っている時も、太ももが固いなぁと最初は思ったし、この前叩いたお腹なんて固すぎて驚いた。横向きに座る時や抱っこされる時に感じる大胸筋もしっかりしてる…。
ま、マルコさんって、脱ぐとすごいんじゃ…?!

「どうしたの?」
「…あ、筋肉が、すごいなって」
「でしょ?今日は腹筋は見れないかもだけど、それでもかっこいいから楽しみにしててね!」
「はは、は」

アイドルの筋肉のことだと思っているオレンジさんには笑顔でごまかしつつ、頭の中にいる上半身裸のマルコさんを追いやろうと必死になっていると、突然、会場が暗転した。

「あ!始まる始まる!」

ステージに現れたのは複数人のシルエット。そして、教えてもらった一曲目のイントロが流れた瞬間、色とりどりの悲鳴が鳴り響き、一瞬で上半身裸のマルコさんは消えていった。
こ、これが大人気グループのライブ!!

「すごいね!!」
「…っ、うぅっ!」
「え?」

オレンジさんはすでに泣いていた。


◇ ◇ ◇


「戻りました!」
「おっ。楽しかったみたいだねい」

すごかった!楽しかった!
リビングへ向かうと思っていた大きな背中に、一曲目からパフォーマンスがすごくて、二曲目は、と語り掛けていたら、何故か背中はリビングではなく、脱衣所へ入って行く。そして、くるっと私の方を見て、話は風呂に入ってから、と笑いながら促し、私を置いて脱衣所を出て行こうとした。

「マルコさん!少しだけ!」
「駄目」
「今語りたいんです!」
「ほら、風呂」
「あぁぁ…!」

興奮モードでもマルコさんの言葉は効いてしまうらしい。素直にお風呂に入ろうとする体に従い、汗まみれの服を脱いで浴室へ。
けど、もどかしい!
マルコさんのシャンプーでささっと髪を洗い、ボディソープで体を洗って、いつもの半分以下の時間でリビングへ来た私を見て、マルコさんは驚いていた。
髪、乾かさないと。待てません!…化粧水は?つけてません!…。
そんなことよりも聞いてください!とソファに座るマルコさんに近寄ると、戻るよい、と脱衣所へ連行されてしまった。休みだから適当でいい、とマルコさんに伝えたけど、無言で化粧水を渡されたのでつけるしかなく、終わったタイミングで次はドライヤーだと言われたのでこれも従うしかなかった。
ドライヤー、時間かかるから嫌なのに!

「それでですね!」
「次は水分補給」
「ごくごくっ。はぁ…で!三曲目が!」
「おいで」
「聞いてますか!?」
「聞いてるよい。三曲目は何だったんだ?」
「三曲目はですね!なんと!」

五〇〇mlのペットボトルを持ったマルコさんは、聞いて聞いて!と興奮している私を抱き上げ、よいしょ、とソファに座る。向かい合わせに座った私の腰に腕を回して、好きなだけどうぞ、と促してくれたので、ようやくライブの感想を語り始めることができた。
たまに水を飲むように言われながら、マルコさんに一曲一曲感動した場面を伝え続ける。
六曲目はアカペラが本当に上手で!八曲目はダンサーさん達とのダンスの一体感がすごかったんです!十二曲目の高音パートは圧巻でした!

「全員、激しいダンスをしても息一つ乱さないんです!」
「アイドルも体力仕事だねい」
「それで…!そう!次なんですけど!」
「お前さん、全く興奮が収まらないねい…」

ペットボトルはもう空。時刻は深夜一時を過ぎていた。それでも足りない私はマルコさんに熱く熱く語り続ける。
友だちと打ち上げ、したんだよな?しました!足りなかった?足りませんでした!そうかよい…。

「それで友だちの好きなアイドルが近くに来た時にですね!なんと!友だちに向けてウインクしてくれたんですよ!」

今回のツアーで初めてファンサービスしてくれたらしくて、号泣してて!その人、その後も色んな人に手を振ったり、ピースしたり、バーンしたり、本当にサービスがすごくて!

「本物のファンサービスを見れたわけか。お前さんにはなかったのかよい?」
「はい!私は別に欲しかったわけじゃないので!うちわ持っていないですし!」
「せっかくならしてもらったらよかったのに」
「あ、なら!」
「?」

ファンサービスをしてほしい人が目の前にいる!

「マルコさん!」
「ん?」
「ウインクほしいです!」
「よい?」

空のペットボトルを振りながら、ファンサービスをお願いしてみる。
するとマルコさんはぱちぱちと瞬き、眉間に皺を寄せて、ん゛!、と両目を閉じてしまった。
マルコさん、ウインクできないんだ。可愛すぎない…?

「マルコさん…!」
「?」

もう一回!え?お願いします!
出来ていないのにせがまれる理由が分からないのか、首をこれでもかと傾げるマルコさんに、もう一度ウインクください!、とお願いをする。すると、仕方ない、とまた眉間に皺を寄せ、ウインクをしようとして、両目を閉じていた。
こう?可愛い!…こうか、よい?きゃー!
マルコさんの一生懸命ウインクしようとして両目を閉じてしまう姿が可愛すぎて、気分は最高潮に。
やっぱりマルコさんは素敵!
可愛い!もう一回して!今度はピースして!とおねだりをしていたら、突然、大きな手にペットボトルを奪われてしまった。そして、私の大好きなパイナップルおじさんに、ペットボトルを振りながら満面の笑みでファンサービスをお願いされてしまう。

「ウインクして、よい?」
「私が?!」
「ほしい、よい?」
「か、かわ…!」

お願い、と可愛くおねだりするマルコさんのためなら、やってあげないと!
よし。片目を閉じるだけ…。簡単簡単…。
ん…ん゛ん゛!

「ははっ!お前さんもできてないよい!」
「難しいですね!」

こうかな?…こう?と目に力をいれてみるけど、口にも変な力が入ってしまう。マルコさんが肩を揺らして笑っているから変な表情になっているのかも。
マルコさん、できてますか?で、できてないよい。くっくく…!。こ、これならどうですか?!ぶはっ!!可愛すぎる!!
顔の色んな所に力を入れながら、目をぷるぷるさせて何とか片目だけを閉じることができた時には、マルコさんは笑いすぎて腹が痛いと苦しんでいた。

「サッチはウインク得意だよい」
「あ、なんか想像できちゃいました」
「好みの女性を見つけるたびにウインクしてた。全滅だったが」
「パートナーさんには効いたんじゃないですか?」

どうなんだろう?次に会った時に聞いてみよう。あ、イゾウさんはできるかな?イゾウさんができたら意外かも。エース君とルフィ君は、できなさそうだなぁ。
色んな人のウインクする姿を想像してくすくす笑っていると、マルコさんがほっと息を吐いた。

「…やっと興奮が収まったみたいだねい」
「え?まだですけど!?」
「なんで!?」

まだ後半の感想を伝えていない!と言う私を見て、何時に寝れることやら、とマルコさんは長いため息をついていた。
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