「え”えっ！？ちょ、ちょっと待ってよ！？ぼくは世界中のありとあらゆる人が、南から北まで全部の海から血眼になって探す存在なんだよ？ありとあらゆる知識をこの脳につめこんでるんだ。実用的なことから哲学的なことまで全部の問題を高確率で解決できるんだよ！？キミらが欲しい情報なんてすぐ手に入れることができるんだよ？落ち着くんだ！落ち着いて話し合おう！」

とんでもない早口で言葉をつなげる。身振り手振りが激しく、断られることを予測していなかったのか非常に落ち着いていない。

うるせえな、コイツ。キッドは眉をひそめ、振り返り威圧的に一歩前に出る。


「うっせェんだよ！オレの船に乗る奴は全員、オレが認めた奴だけだ。インチキな情報なんざいらねェ！」


キラーは静かに頷く。キッドは突然、サテラを指差しながら高らかに宣言する。


「テメェみてェに頭でっかちな奴は大っ嫌いだ！戦いは拳と魂でするもんだろうがよ！」


２人は静かにドアの方へ向かう


「話は終わりだ。」




「おい、相棒。この近くに酒場があったよな。あんな面倒くせェ話を聞かされた後は一杯やりてェな」


サテラは意気消沈していた。今までサテラの願いを断られたことなど無かったからだ。まるで初恋を振られた男子中学生のような惨めな気分になった。

「ううっ…ここの家賃やばいのに…」

大きくため息をつき呟く。ここ賃貸だったのか。去り際に２人はそう同時に思った。

「しょうがない。トラファルガーの船に乗せてもらうか」

キッドは立ち止まり、ピクリと眉を動かす。


「あ？今なんつった？トラファルガー？」
「えぇ、トラファルガー」


キラーは素早くキッドの様子を察知し、警戒を強める。長年の経験が語っているのだろう。


「キッド...落ち着け」


時すでに遅し。キッドはサテラに詰め寄って怒鳴る。サテラの視界がキッドの赤いコートでいっぱいになる。


「てめェ！トラファルガーの船に乗るつもりか？ふざけんじゃねェ！」
「最悪の世代の船を渡り歩くつもりか！？」


部屋の金属が振動し始める。キッドの怒りと共に、その磁力が強まっていく。彼の凶暴な性格と、同世代への対抗意識が一気に噴出している。流石にサテラもこれはやばいと、直感で感じ、生唾を飲んだ。しかしここで引かないのが彼女。腰に手を当てキッドを睨みつける。

「だって乗せてくれないんでしょ？」

反抗とばかりに頬を膨らます。

「じゃあもういいもん！勝手に生きるから！」

そう言ってあっかんべーをする。先程までの様子は一変、子どものような反応にキッドは眉をひそめる。

「このガキが！」


キラーは即座にキッドの前に立ちはだかる。ここでの騒ぎは不要だと判断したのだろう。


「止めろ、キッド！ここで暴れても意味がない！それにおれ達には関係ないだろう！？」

振り上げた左手を下ろし、真っ赤なファーコートを翻しドアへと向かう。

「チッ...！好きにしやがれ！」

「あぁ、勝手にするさ！」


お互い言葉を吐き捨て、その場を別れた。