暫しの沈黙。キッドは突然大声で笑い出す。

「ははっ！何言ってやがる！オレの船に乗せろだと？冗談じゃねェ」

キラーは静かに頭を振る。

「断る。乗組員にする引き換えに情報なんて、そんな対価割に合わない」

キッドは再び威圧的な態度で前に出る。その目は獲物を追い詰めた猛獣のような目つきだった。キラーも静かにパニッシャーに手をかけながら、警戒を強める。


「おい、サテラ。テメェの目的はなんだ？オレたちの船に何の用がある？」




部屋の空気が一気に凍りつく。キッドとキラーはいつでも戦闘態勢に入れる状態を作り出している。そんななかサテラは微動だにせず椅子に腰掛けたまま２人を見上げている。


「そんな警戒しないでほしいな。ぼくをキミの船に乗せたら良いことがたくさんあると思うんだけれど。ぼくを船に乗せればありとあらゆる知識が手に入るのも同然だ。それにおおかた敵の予測もできるし、行くべき進路だって簡単に分かる。」


にっこり笑い、言葉を綴る。


「ぼくの目的はただ一つ、海賊王が誕生する瞬間をこの目で見たいの。そして最悪の世代の中から海賊王が出ると思ったんだ。ぼくはキミがそうなんじゃないかと思ったんだ」


キッドを指差す。そして勢いよく立ち上がり２人を見つめる。その目には確信があった。


「さぁ！ぼくをキミの船に乗せないか？」


キッドは大きく口を開け笑い出す。


「ハハッ！おれが海賊王になるのは間違いねェよ！」


キラーはその様子をみて仮面の下で大きくため息をつく。長年の幼馴染としての経験だろう。




だがな




不意に真剣な表情でキッドはサテラを見下ろす。


「オレは他人の力を借りて王になるつもりはねェ。自分の力でなれなきゃ、それこそクソくらえだ」


キラーは冷静に分析を続ける。


「その通りだ。情報に頼り切るのは、おれらのやり方じゃない」


そう言って背を向け歩きだす。部屋の空気は重く沈み、キッドの揺るがない決意があらわれていた。


「情報なんざいらねェ、あばよ魔女様」