昼下がりの街は、一般人で賑わっていた。キッドとキラーは、住人の手がかりを使いながらの住まいを探していた。一般の街並みに溶け込むように建つ、古めかしい二階建ての家。

「この辺りか？」

キッドが不機嫌そうに周囲を見回す。普段から目立つ体格と赤髪に加え、金属の装飾が施された派手な服装は、平和な街並みに不釣り合いだった。 対照的に、キラーは仮面の下から静かに周囲を観察している。

「間違いない。ただし...」

と言いかけたその時、中から声が聞こえた。

「待ってたよ。キャプテン・キッドそれから殺戮武人、キラー」

聞くものによれば十代程度とも思われるであろうその声にキッドとキラーは顔を合わせる。
「どうしたの？入らないの？」

キッドは僅かに眉をひそめ、腕を組んで扉を見上げる。

「あんたがサテラってのか」

「いかにも、ぼくがサテラだ」

扉の向こうから聞こえる声にキラーは静かに一歩前に出て、仮面の穴から家の様子を慎重に観察している。

「 ドアは開いてるみたいだな。キッド、とりあえず話を聞いてみるか」

キッドは不満げな表情を浮かべながらも、ゆっくりと前に進む。

「おい、変なマネしやがったら承知しねェぞ」

まだ警戒の残る表情で中へと入り、キラーもキッドの背後から静かに続く

「失礼する」

古びた事務所の玄関には、不思議な雰囲気が漂っている。情報屋の住まいとは思えないほど、普通の民家に見える。しかし、その中に潜む危険を察知したかのように、キッドの指先には微かに磁力が宿っている。
やぁ、待っていたよ。
光の差し込む事務所の椅子に腰掛けていたのは喪服のような真っ黒なドレスを着ている美少女だった。対照的に白い髪で光によってキラキラと絹のように光り輝いている。この世のものとは思えないほど美しさに2人は言葉を失う。

「どうぞ、座って」

にこやかに微笑み、ソファーを指差す。セットのテーブルには紅茶とクッキーが置いてあった。

「お酒のほうがよかったかな？」

冗談めかしく言い、けらけらと笑う。
キッドは、その様子を一瞥し壁に寄りかかって腕を組む。

「茶なんざいらねェ、俺達は北の海で海軍の動きが活発になってる理由が知りてェだけだ」

「あら、残念。いらないのね。じゃあ、要件の前に…」



「先に対価を払ってもらっても？」

白髮の美少女、サテラは訊ねる。キッドは噂通りの話に舌打ちをする。キラーはサテラを見下ろし威圧的に訊ねる。

「その対価ってのはなんだ？」

キラーが冷静に問う。

「確かな情報なら払わんこともない」

サテラはにっこりと微笑む。自身の情報にそれだけの自信があるということなのだろう。部屋の中で三者三様の緊張感が漂う。今にも爆発しそうなキッドの荒々しい性格、取引をするキラーの冷静な対応、そしてサテラの神秘的な存在感が独特の空気を作り出していたのだ。やがてサテラがゆっくりと口を開く。

「単刀直入に言う。ぼくをキミの船に乗せて欲しい」