エレンへの執着が飽くまで 【弟】なミカサの話
旧本部での料理当番は基本
兵士長のリヴァイを除いたメンバーで
ローテーションしている
もちろん、ローテーション制は
料理当番だけでなく
馬の世話や水くみ係り
薪割りなどもそうなのだが
一番個性が出るのはやはり
料理当番だった
女性であるペトラは家で手伝いでも
してしていたのだろうか
そこそこ手際もよく、味も素朴では有ったが
中々に高評価だった
エルドは良くも悪くも普通
グンタは何と言うか、漢の料理…
ゴロゴロの具材のごった煮で
意外なのはオルオ、手際もよく
味付けも中々の物だった
その意外さには分かりにくかったが
リヴァイですら一瞬、驚きの表情を
出したほどだ
最後にエレン
彼は手際はいい
食材もきれいに切れている
皿に盛った見た目も悪くない
それなのに、何故だか
強烈に不味い
いったい鍋の中で何が
起こったのだという程不味い
あまりの不味さに
班員、そしリヴァイの総意で
料理当番免除に成ったくらいだ
切る事は問題ない筈なのに
今後一切食材に触るなとまで
言われてしまった
仕事が一つ免除に成ったが
理由が理由なので喜べず
半べそに成っていたのを
ミカサに慰められる事になった
そして明日はミカサが料理当番
前回強烈な物を生み出した
エレンと家族だというミカサ
正直、周りの反応は半信半疑
と言った感じだ
前回のアレはエレンが男の子
だったからで、女の子のミカサは
大丈夫だろうという意見と
いや、あのエレンの家族だろ?
兵器を生み出すかもしれないぞ
と言う意見に分かれた
前回、惨劇を生み出したエレンは
ミカサは料理上手で作る物は
とても美味しいのだと言ったが
作った物がモノだったので
信じてはもらえなかった
当のミカサと言うと
リヴァイに一時的な外出許可を
取りに来ていた
「狩りに行きたい?」
『はい
ここは森の中で、来る途中に軽く
確認したのですが、動物も多く
食べられる野草も豊富
近場の湖らしき所には魚も居た』
「あぁ…まぁ、構わねぇが
きちんと時間通りに用意できんのか」
『問題ありません
ここいらの動物は天敵が殆どいないせいで
かなり肥えていて鈍い、です
上手く行けば、明日以降も
それなりの食材で食事ができます』
「なるほどな、そりゃありがてぇが
お前…もし、エレンと同じような出来
だったら今後のお前の訓練
倍じゃ済まねぇからな」
『それも、問題ありません
エレンがド級なだけ
あれは104期でも有名』
「なら、先に言いやがれ
意識が飛びかけたわ」
『それはすみません
でも、やはりこの班は精鋭揃い
104期のメンバーでは十数名
医務室送りになったから』
「劇物じゃねぇか
尚更早く言いやがれバカ野郎」
そんなやり取りの後
ミカサは森に狩りに出て行った
翌朝、皆がそわそわしながら
起きてみると、居間のテーブルの上には
美味しそうな匂いと暖かな湯気を
立ち昇らせる見た事のない料理が
並べてあった
メインは魚を焼いたものだろう
それは解るのだがその他の物が
なんだか解らない
野草か何かが調味料と和えてある物
(お浸し)
ジャガイモが入っているだろう
ぱっと見泥水の様な茶色いスープ
(味噌汁)
四角いオムレツの様な
卵の料理
(卵焼き)
あと、何故か皿ではなく椀に
盛られている白いまま何も
手を加えられていないライス
米はあまり使われないが
一応、レストランなどで
ピラフなどの料理が有る為
存在は知っているが
このような形で出されたのは
初めて見た
見た事が無い料理に
皆が困惑し、戸惑っていると
エレンが嬉しそうな声を上げ
真っ先に席に着いた
「よっしゃー!ミカサのワショクだー!」
ワショク…
何だそれは、と
聞いた事が無い料理に
首をかしげる班員たちに
ミカサが席に着くよう促しながら
料理の説明をする
『これは和食と言って
私の母の故郷…東洋の料理です』
それぞれの料理をミカサに
説明されながらガッツいて
食べるエレンを横目にしり込みしていると
若干、恐る恐ると言った感じだが
リヴァイがまず、一口食べた
「!?…美味いな」
1つ食べて美味いと分かったからか
他の物も次々と口に入れて行く
そしてやはり、美味い、美味いと
言いながら
「え!?」
「美味い!?」
「どんなに高評価でも
基本"悪くない"しか言わない兵長が!!?」
「マジかよ…」
「むぐむぐ)皆さん驚くの
そこなんれすね(もごもご」
『エレン、汚いから
口に物が入ったまま喋らないの』
「初めて食うもんだから例えが
見つからんが相当美味いぞコレ」
大体悪くないしか言わない
リヴァイが美味いと言ったのだ
いろいろな驚きが有るが
皆、意を決して食べ始める
「ぅ…美味い!!店で出せる味なのに
何処か家庭を感じる!!」
「ナニコレ!確かに初めての味で
例えが見つからないけど美味しいわ!!」
「このスープ…ミソシルだったか?
見た目はアレだが塩加減がいいな」
「このタマゴヤキもふわふわで
オムレツとはまた違うんだな!」
皆、美味い美味いと言いながら
あっという間に完食してしまった
「いやぁ~…美味かったなぁ」
「だから言ったじゃないですか!
ミカサの飯は美味いんだって!!」
「ミカサの腕前に不安を持ったのは
お前の舌を疑ったからだクソガキ!!」
「あぁ、アレはまさしく兵器だった
からな…」
「えぇ~…」
食後、わちゃわちゃと戯れる
リヴァイを除く男性陣とそれを眺める
リヴァイ、ペトラ、ミカサは
ミカサが淹れた紅茶で一服中だ
『そう言えばリヴァイ兵長
昨夜の狩りでよく太った牛が
手に入りました
血抜きも済んでますので夜は
ステーキでも焼きますね』
「…お前が当番に成った途端
行き成り飯が豪勢に成ったな
もういっそ、これからはお前を
飯当番固定にするか」
『私は構いませんが…』
「じゃあ、ミカサちゃんはその他の
当番制の物は免除ですね」
オリジナルのブレンドだという
紅茶を啜りながら
リヴァイが軽くため息をつきながら
呟いた
「それにしてもお前とエレンは
極端だな…片方は兵器を
生み出したと思ったらもう片方は
美味い壁外の料理を作って見せる」
その後ミカサは、昼食には鴨肉を使った
サンドウィッチとポテトサラダ
夕食は予告通りそれぞれの好きな
部位で分厚いステーキを振舞い
食事係りに任命された
そして、皆は思った
何故、半サバイバルをしている
今の方が町に居る時より
いい物を食べているのだろう?
…と
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