15
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バイトが終わり次第、美羽と落ち合って勉強会をすることになっていた。
歩きながら何度もスマホを耳に当てる。先程からさっぱり連絡がつかない。おかしいな、と思いながらオレはまた通話終了ボタンを押した。
美羽は何かに熱中するとスマホを見なくなる。心配だからすぐ連絡はつくようにしてほしいんだがな、とオレは舌を打った。
「あれー、サソリの旦那」
「サソリちゃん。バイト帰り?」
「おー…お前らか」
デイダラ、飛段、イタチと偶然顔を合わせる。春休みなので遊び歩いていた様子である。ちょうどよかった、とオレ。
「美羽知らね?全然連絡つかねーんだけど」
「美羽?知らねーな」
皆が顔を見合わせる。やはり誰も何も知らないようである。もう一度通話ボタンを押すが、やはり繋がらない。
「おかしいな…バイト終わったら連絡するって伝えてあんのに」
「犯人探しでもしてんじゃねーの?」
怖いことを言うな、とオレ。
「諦めるように再三伝えてるから。それはないはず」
「冗談だけど。でもほんと変だなぁ。アイツサソリの連絡は結構忠実に待つじゃん」
「……あれ?」
イタチが何かに気づいたように顔を上げた。つられてそちらに目を向ける。するとそこには。
『サスケくんほんとごめんね。ほんっとにごめん』
「だからいいって…」
そこにはサスケと美羽がいた。美羽が両手を合わせて必死に謝っている。うんざりしたようにそれを流しているサスケ。
「美羽!」
思わず駆け寄った。美羽とサスケが同時にオレを振り返る。
『サソリ!』
「お前何してんだよ。全然電話繋がらねーし」
『ごめん、色々あって…見て!』
美羽が嬉しそうにオレに何かを見せつけた。胸元に光るピンクダイヤに、ギョッとする。
「お前…それ、どうしたんだ?」
「えー、返ってきたのか!?」
「まじで!?」
遅れて寄ってきた皆にも嬉しそうにそれを見せる。オレは冷静に、もう一度聞いた。
「どうしたんだよ、それ」
『闇ルートで買い戻した』
「闇ルート?」
サスケがはあ、とため息をついた。
「…とある筋でな。盗難物が流通しやすいところに行ったら運良く」
『ほんとにサソリがくれたやつだよ!製造番号が一緒なの!』
テンション高い美羽と、反比例して冷めていくオレ。
皆は素直によかったなー、と喜んでいる。オレはそう言う気には全くならなかった。
「お前、なにしたの?」
オレの声に、皆が一瞬固まる。美羽もビクッと身体を震わせた。オレが怒っていることにやっと気づいたようである。
『いや…別に…』
「普通に考えておかしいだろ。見つけたとしてどうやって買い戻すんだ。金はあったのか?」
美羽が目を泳がせている。どうやら予想は的中しているらしい。
『…稼いだというか、なんというか』
「どうやって稼いだんだ」
『……』
「吐け」
嘘ついたらわかってんだろうな、と釘を刺す。美羽はさらに悩んだ様子を見せたが、結局口を開いた。
『…売りました』
「なにを」
『K女の制服とか、色々…』
制服!?と皆が驚く。だって!と反抗する美羽。
『もう着ないし!いいかなって』
「あとは?」
『え…』
「色々の中身を吐け」
美羽は助けを求めるようにサスケを見る。しかしサスケは我関せずの様子。
美羽は観念したようだった。
『体操着と、弓道着…』
「……」
『あと、スクール水着を少々…』
「スク水まで売ったのかよ…」
皆が引いている。だって!とまた美羽。
『転売価格10万だよ。高校生が持ってるわけないじゃん!』
「じゃあその4つで10万?」
『…それが、足りなくて。そしたらサスケくんが…』
美羽が再びサスケを見る。サスケはチッと舌を打った。
「オレのブレスが3万で売れたから。合わせて12万。2万のおつり」
『ほんっと、申し訳ないです…』
「そうしねぇとこいつがパンツ売るっていうから」
「パンツ!?」
デイダラと飛段がうわー…と引いている。美羽はもう開き直っていた。
『2万で買ってくれるっていうから。凄くない?定価3千円のパンツが私が履くことによって2万。約7倍だよ』
「まあすげーけど…売るなよ…売ったらノーパンになるだろ」
『そこは考えてなかった。まあ電車乗って帰るだけだからなんとか』
「いややべーだろそれ、うん」
デイダラがチラッとオレを見て、慌てて目を逸らした。どんな顔をしていたのかはここで説明するまでもない。
ふー、と思いきり息を吐いてから口を開く。
「美羽」
『…はい?』
「オレがなんて言うかわかってるよな?」
美羽が押し黙る。声を荒げないようには努めていたが、できている自信はなかった。
「言ったよな。それは諦めろって。新しいの買ってやるから、待てって」
『……』
「どうして言うことを聞かなかった?」
美羽はなにも言わない。
「なんでお前はいつもそう考えなしなんだよ」
『ちゃんと考えたもん…』
「考えた結果そうなったのかよ。救いようがないバカだな」
『だって!このネックレスは特別なんだもん!』
美羽が負けじと言い返してくる。その様を見たらもうダメであった。
「何度も言ってんだろが!お前の無事が第一!そんな危険なところに行って何かあったらどう責任取るつもりだよ!」
『いいじゃない、現に何もなかったし!』
「それは結果論だろ!お前のパンツ買うような奴らがいるところに行って何故何もないと言い切れるんだ!」
『……』
「本当にありえねえ。正気かよ。馬鹿か。ふざけんな。クソ女」
「まあまあ、落ち着けよ」
「しょうがねえよ。それだけ大事なもんだったんだよな?」
飛段とデイダラに制される。しかしオレの怒りは全く収まらなかった。
「そんなもんがなくたってオレのお前に対する気持ちは変わらない。だから探さなくていいっつったんだろ。どうしてそれがわからねぇんだ。お前はオレのことほんっとに何一つ信用してないんだな」
『……』
「オレがどうしてこんなに怒ってんのか真面目に考えろクソ女」
これ以上顔を見ていると何を言ってしまうかわからない。そう判断したオレは無理矢理踵を返した。
「帰る」
「え…待てよ、旦那」
「悪いけど誰か送ってやって。明るい道選んで帰れよ」
それだけ伝え、迷わず足を進める。
美羽の気持ちはわかる。オレからのネックレスをそこまで想ってくれて嬉しい気持ちも確かにあった。
しかし、危険なところに身を寄せ、他の男が性目的で求めているとわかった上で服を売る彼女のことを許せるほど、オレは大人ではなかった。