15
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
闇市は、とある駅の商店街を抜け、人通りがパタリとなくなった更にその先にあった。
見た目はお祭りの露店である。しかし、売り子の皆さんが完全にそっち系の方達だ。
麻薬も普通に流通しているから、売り付けられないように気をつけなさいと大蛇丸先生に言われたことを思い出す。
「とりあえず手分けしてネックレスを探そうってことでいいんだよね」
「ああ。水月と香燐はあっちを頼む。重吾はそっちを」
「了解」
サスケくんが指示を出し、皆は散り散りになった。私はサスケくんのすぐ後ろをひっついていく。
商品を一つ一つ目視する。アクセサリー類や陶芸品、時計などのスタンダードなものもあれば、注射器や女性の使用済みの下着も売っている。やはりここは闇市で間違い無いらしい。
それと同時に、制服なんて変哲のないものが売れるのかな、と少し不安になった。
『ないねー…』
「これだけの量あればな。探すのも大変だろ」
サスケくんは黙々と商品を探している。あ、と急に思い出した。
『そういえばホワイトデーありがとね。マカロン美味しかった』
「…あー…」
サスケくんが素っ気ない相槌をうつ。
「お前こそバレンタインはどーも。ガーリックのラスク美味かった」
『ほんと?よかった』
サスケくんにもしょっぱいものを手作りしたのである。食べてくれたらしいことに安心した。
「お前ほんとマメだよな。わざわざ作ったって聞いて驚いた」
『まあお世話になってるからさ。今日もだけど』
二人で談笑しながらネックレスを探す。ふと、一人の男性が私たちに寄ってきた。
「そこの子さ、下着売ってくれない?」
『……え』
「一万でどう?」
サスケくんがすぐに間に入ってくれる。
「断る」
「じゃあ2万は?」
「値段の問題じゃねーんだよ。失せろ」
サスケくんに言われて、男性は舌打ちをしながら去っていった。サスケくんは何事もないようにまた商品に目を戻す。
パンツに2万。思ったより高値である。
『2万かー…』
「まさか売るとか言うなよ」
売らないけどさ、と私。
『制服で足りなかったらパンツって手もアリかと思って』
「やめとけよ…赤髪に殺されるぞ」
『冗談よ、冗談……あ!?』
その時、暗闇の中で一際キラリと輝くもの。
ピンクダイヤのネックレスだった。
サスケくんもすぐにそれに気づく。
「犯人か?」
サスケくんの耳打ちに、私は首を振った。
『違う。もっと細い男の人だった』
「…そうか。まあとりあえず見てみるぞ」
うん、と私。二人でゆっくり近づいていく。
手に取ろうとしたところで制止された。
「それは高価なものだから。触るんなら手袋して」
手袋を手渡され、素直にそれを手にはめる。祈るような気持ちで、ネックレスの宝石部分をひっくり返した。
サスケくんも一緒に覗き込む。
「どうだ?」
『…XR326875、間違いない!私のだ!』
歓喜のあまり握り締めたくなって、今これは商品なのだと思い止まった。
喜ぶのはまだ早い。まだ買い戻せていないのだから。
「これはどこで手に入れたものだ?」
「さあ。渡り渡ってるものだからね。闇市でそんなことを聞くなんて野暮さ」
サスケくんの言葉に、お兄さんはニヤッと笑った。前歯が溶けてなくなっている。ごくっと生唾を飲んだ。
『これ、おいくらですか?』
「10万だよ」
『10万…』
中古なのに思ったより高い。持ってきたもので、足りるだろうか。
私は息を吐いて、売り子のお兄さんを真っ直ぐに見た。
『私、この商品がどうしても欲しいんです』
「へぇ。金は?」
『これから稼ぎます』
ドサっと紙袋を置いた。お兄さんが訝しげに見ている。
『女子中学生、好きですか?』
「はい?」
『私が着てたK女学院の制服、買いませんか』
K女の制服を引っ張り出した。へえ、とお兄さんが相槌を打つ。どうやら興味はあるようだ。
「K女は人気だからね。買うとしたら…3万ってとこかな」
『3万…』
あと7万。どうか足りて欲しいと次のブツを出す。
『体操着と弓道着はどうですか?』
「おっ、いいね!そっちは5万で買うよ」
好みだったようだ。これが5万なら、後は2万円。
こんなに緊張したのは人生で初めてである。できれば出したくなかった、最後の服。
『スクール水着、はどうですか』
「…うーん」
お兄さんは微妙な表情を浮かべる。
「そっちはあまり好みじゃないんだよね。出せて1万かな」
『そこをなんとか!2万で買ってください!』
「だーめ。この世界は甘くないんだから。残り1万分稼げないならそれは諦めて」
しっしっと手で追い払われる。ここまできて1万足りないなんて。諦められない。
ここは覚悟を決めるしかない、と思った。
『パンツ…』
「それはダメだ。やめとけ」
今まで黙っていたサスケくんに止められる。涙目になりながら、だって!と私。
『ここにあるのに!諦められない!』
「…はぁ。仕方ねぇな」
サスケくんは腕にしていたシルバーのブレスレットを取り外して、お兄さんに渡した。
「プラチナだ。それなりに値がつくだろ」
「おお。使い古してはいるけどいいのしてるねぇ。3万ってところかな」
『えっ!』
ダメだよ、と私。
『大事なものなんでしょ。やめときなって』
「別に。中学の入学祝いに父母に買ってもらったものだ」
『絶対ダメ!』
そんな大事なもの、売っていいはずがない。
『待ってください。やっぱりパンツ売ります』
「だからダメだって言ってんだろが。服だってギリギリなんだぞ」
『でも…!こんなことのためにサスケくんの大事なもの…』
「結局どうするの?」
争っている私たちに、お兄さんはイライラした様子を見せる。
私とサスケくんは、じっと顔を見合わせた。