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今日はホワイトデーである。教室に入るなり、飛段と角都に声をかけられた。
「美羽、この前のお返しな」
『えー、うそ!ありがとう!』
二人から袋を手渡される。意外や意外、某有名店のクッキー詰め合わせ。
『これ高いやつでしょ?いいの?』
「いつも色々作って貰ってるから。それの礼も兼ねて」
「角都と割り勘だから。たいしたことねーよ」
二人に素直にお礼を言って、自分の席に向かう。すると今度はイタチ、鬼鮫コンビ。
「はい。これ」
「どうぞ」
『ありがとう!あっ、これ鬼鮫の!手作り?』
「はい。美羽さんほど上手くありませんが」
綺麗にラッピングされたガトーショコラは鬼鮫の手作りのようだ。イタチからは英国産のチョコ。こちらもお高そう。
『嬉しい。大事に食べるね』
甘いもの大好きなので非常に嬉しい。するとイタチはもう一箱取り出し、私に手渡した。
「これはサスケから」
『えっ!サスケくんから?』
白の箱に青いリボン。わざわざ用意してくれたらしい。
「お前サスケにまでやったの?」
『うん。ついでにサクラちゃんに渡して貰って』
私たちの会話を横で聞いていたサソリがふぅん、とつまらなそうに相槌をうった。
「お前まじで罪な女だよな」
『罪…?え、なんで?』
「自分で考えろ」
サソリはそのままそっぽを向いた。イタチがふっと笑ってその場を離れて行く。
「そういえばお前は美羽になにもやんねーの?」
飛段の言葉に、デイダラが答える。
「今日はオイラと旦那で美羽と皐月に焼肉奢り」
「焼肉か…高くついたな」
角都が眉間にシワを寄せている。サソリは頬杖をつきながら興味なさげな様子。
「だってこいつらがそれがいいっつーんだから仕方ねえだろ」
「叙々苑叙々苑!希少盛り!」
「おめーは食う量ハンパねぇんだから少しは遠慮しろよ、うん」
皐月は嬉しそうに楽しみだね、と私に笑いかけた。私もそうだね、と笑った。
****
放課後は予定通り4人で焼肉に行った。一番食べたのは皐月である。あの細い体の中にどうやってあの量の肉が入るのだろう。お会計がとんでもないことになった、とサソリとデイダラが嘆いていた。
家に送ってもらい暫くまったりしていると、なんとスマホがないことに気づいた。かなり慌てたものの、焼肉屋に電話して聞いてみたところどうやら席に忘れていたようだ。大切にお預かりしていますよ、の言葉に安心してすぐに取りに行きます、と伝えた。
時刻は20時である。夜道を一人で歩くことに一瞬不安を覚えたものの、スマホがない不安の方が勝った。お財布だけコートのポケットに突っ込んで、私は焼肉屋に向かう。
焼肉屋は最寄駅のルミネに入っていた。歩いて行っても15分もかからない。なるべく明るい道を選んで早足に向かった。
3月になって大分暖かくなってきたとはいえ、夜はやはり冷える。はあ、と裸の手に息を吹きかけて暖をとった。
暫く歩いていると、酔っ払いのサラリーマンの集団が前から歩いてくるのが見えた。思わず避けてしまう。少し暗い小道に入った。
方向転換して改めてルミネに向かう。すると、後ろから人の足音が聞こえた。こんなところを通る人が私以外にいるの?と急に不安になる。
さらに足を早めると、後ろの足音も早くなる。怖くて後ろを振り向けなかった。走り出そうとしたところで、腕を掴まれる。恐怖に足が竦んだ。
「お金持ってる?」
男の声だった。私は振り向かないまま、ポケットから財布を取り出して男に渡した。お金目当てなのであれば、これを渡してしまえば身の安全は保証されるはずだ。
男は私の財布を開き、千円札を数枚取り出した。財布自体は返してくれるらしい。
「これだけ?もっと持ってないの?」
高校生がそんなに金目のものを持っているわけがない。もっていません、の言葉に、男がチッと舌を打った。
「あるでしょ。時計とか。アクセサリーとか」
アクセサリー。その言葉に反応してしまう。男も気づいたようだ。
暗闇の中に光るピンクダイヤを。
「それ、ちょうだい」
私は必死に首を横に振った。これだけはどうしても嫌だった。しかし男は引いてくれない。
抵抗すればするほど、これに価値があると確信したのだろう。
力づくで壁に押さえつけられ、首のフックを外される。両手を拘束され、抵抗できなかった。
ありがとう、と笑いながら男はその場を去って行った。私はその場にへたり込む。
暫くして、恐怖と悲しみと悔しさが一気に襲ってきた。