14
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『サソリはバレンタイン、何が良い?』
いつも通りの帰り道。二人で肩を並べて歩きながら聞いてみた。
サソリはマフラーに顔を埋めたままチラッと私を見る。
「別になんでも。お前が作ったものならなんでも食うし」
『でもチョコは好きじゃないよね?』
「得意ではないが。食えないことはない」
ううん、と私は唸った。いくら食べられると言っても、苦手なものをわざわざあげる気にはならない。
『わかった。甘くないもので、少し考えてみるね』
「おー…」
「美羽先輩!」
正門を潜ろうとしたところで、私は足を止めた。見ると女の子が3人走り寄ってくる。
『…あれ?サクラちゃんにいのちゃん。それにヒナタちゃんも』
「こんにちは!」
そこにいたのはサスケくんの友達女子達である。知り合いか?とサソリ。クリスマス会の時のことをかいつまんで説明した。サソリがあれ?と眉を寄せる。
「サクラって…あの春野サクラか?」
「…はい。お久しぶりですサソリ先輩」
そういえばサクラちゃんはサソリのことを知っていると言っていた。
「生徒会ではお世話になりました」
『生徒会…?サソリ生徒会なんてやってたの?』
「まあ、ノリでな」
「独裁主義のヒトラーみたいな会長でした」
サクラちゃんが心底嫌そうな顔をする。
サソリが会長。似合うけど、それはそれはとんでもない学校になりそうだ。
あまり突っ込まないようにしよう、と心の中で決めた。
『で、どうしたの?何か用事?』
「実は、バレンタインのことで。美羽先輩に御協力頂きたくて」
『バレンタイン?』
タイムリーな話題である。首を傾げている私に、今度はいのちゃん。
『美羽先輩、料理うまいじゃないですか。料理のこと色々教えていただきたくて』
「ああー…手作りするの?」
「勿論です!」
二人はかなり食い気味である。そういえば二人はサスケくんに夢中だったな、とクリスマスのことを思い出した。
サスケくんにバレンタインかぁ…
「まだお前らサスケのこと追いかけ回してんのかよ」
サソリが呆れたように言った。どうやら知っているようだ。
「よくやるよな。あんな無愛想な男に」
『無愛想っぷりはサソリもいい勝負だと思うけど』
「オレはいいんだよ。黙っててもイケメンだから」
はいはい、と軽く流す。
『ヒナタちゃんは?やっぱりサスケくんのファンなの?』
「あっいえ…私は…」
サクラちゃんといのちゃんがにやーっと笑った。
「ヒナタは…ナルトよね?」
『ナルトくん!?へぇ…』
意外である。サソリもふぅん、と相槌をうった。どうやらナルトくんのことも知っているようである。
ジロッとヒナタちゃんのことを睨むサソリ。ヒナタちゃんがビクッとした。
「お前…」
「……」
「なんて名前だっけ」
バコっと頭を叩く。痛ぇな、とサソリ。
『怖がってるからやめて!日向ヒナタちゃんだって』
「覚えらんねーんだよ。地味だし」
もう一度頭を叩いた。ごめんね、とヒナタちゃんに謝る。
『無視していいから。ほんと失礼でごめん』
「いえ…地味なのは事実なので…」
『そんなことないよ!…で、私は何をすればいいの?』
気まずすぎて話題を元に戻した。サクラちゃんといのちゃんがキラッと目を輝かせる。
その顔は恋をしている乙女というよりも、獲物を捕らえるハンターのそれだった。
「男の胃袋の掴み方を是非ご教授ください!」
****
テーブルに所狭しと並べられた料理雑誌。さて、と私は腕を組んだ。
『どういうのが作りたいの?』
「そりゃー派手なやつです!サスケくん沢山貰うだろうから、一際目を引く感じの!」
ううん、と私。
『派手なのかぁ…まあ、見た目で言うならザッハトルテとか、ケーキ焼いて生クリームぬっちゃったり、アイシングクッキーでデコったり、フランボワーズの赤使ってみたりすればいいと思う』
「わあ、素敵!」
でも、と私は続けた。
『サスケくん甘いの好きじゃないでしょう?見た目派手にしたところで甘いものは喜ばないんじゃないかなあ』
「…お前、よくそんなこと知ってるな」
私たちとは少し離れたソファーに座ったサソリがコーヒーを飲みながら口を挟んだ。現在皆でサソリの家にお邪魔している状態である。
『前スタバでお茶した時甘いの食べないって言ってたから』
「えっ!スタバでお茶!?」
サクラちゃんが青い顔をした。違うから、と私。
『たまたま会って、いろいろあってお礼がてらね』
「美羽先輩って、サスケくんと仲良いですよね。どういう関係ですか?」
どういう関係って。私は迷わず答えた。
『友達の弟さん』
「他にも何かありますよね!?」
『別に何もないけど?』
ね?とサソリに同意を求める。サソリは何も言わずに呆れ顔で珈琲を啜った。
『ナルトくんはクリスマスの時甘いものよく食べてたから。スタンダードにチョコがいいと思う。トリュフとかどうかな。お洒落なものより数で勝負って感じで』
「は…はい…そうします」
問題はやっぱりサスケくんである。
『甘さ控えめね…控えやすいのはガトーショコラとかレモンケーキ。ケークサレもいいかな』
「ケークサレ?」
どうやら馴染みのない言葉らしい。私は答える。
『フランスの甘くないケーキのこと。ケーキだけど中に野菜とかチーズとか、ハーブを入れたりするの』
「へー、美味しそう。それなら喜んでくれるかも!」
私はにっこりと笑った。
『じゃあとりあえずそれにしてみようか。まだ時間あるから試食してから考えればいいし』
それと、と私は顔をサソリに向けた。
『サソリ。試食よろしくね』
「はぁ…?なんでオレなんだよ」
『だってサソリ甘いの好きじゃないから丁度いいじゃない』
サソリは心底めんどくさそうな顔をする。
お願いね、と私は念を押した。
『そうと決まったら、都合の良い日に食材買って一度作ってみよう』
「…まさかオレの家でやるとか言わねーよな」
『なんで?いいでしょ?サソリの家が皆集まりやすい距離なんだもん』
勘弁してくれよ、とサソリ。
「キーキーうるさい女子が入り乱れるのは苦手なんだよ」
『いつも私たちより煩い人たちが入り乱れてるじゃない。ね、お願い!バレンタインまでの少しの間だけだから、キッチン貸して?』
手を合わせて上目遣いにサソリを見る。サソリは顔をしかめながら押し黙った。しめしめ。サソリはこうしておけば私のお願いは絶対に聞いてくれるのである。
「お前、最近あざとくなってきたよな」
『お願い~』
「…わーったよ。好きに使え。お前がいる間だけだぞ。美羽がいねー間は絶対来るなよお前ら」
「ありがとうございますサソリ先輩!」
女子達はとても嬉しそうである。サソリは深く息を吐いて、もう一度珈琲を啜った。