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年末年始はサソリと一緒に過ごした。
父母はすっかりサソリを気に入って色々ちょっかいをかけていたけれど、サソリは穏やかにそれを受け入れてくれていた。
三学期のスタートである。あと3ヶ月足らずで一年生も終わり。本当にあっという間だった。
サソリとの関係は至って順調。最近は毎日ハグもキスもある。ただ、その先の一歩がまだ踏み出せないままだ。それが不満ではあったものの、それはサソリのタイミングが来るのを待とうと思っていた。
「もうすぐバレンタインだなぁ」
不意に飛段がそう言った。私は読んでいた参考書から顔を上げる。
『バレンタイン?まだ先じゃない?』
「それまで特にイベントもねーし。バレンタインが待ち遠しいっつー話」
『へー…男の子もそういうイベントってやっぱり気にするんだ』
チラッとサソリを見る。サソリは私の参考書に目を落としたままだ。
「今年もやらなきゃな。誰が一番多くもらうか選手権」
「どうせ旦那かイタチが一番多いじゃん。お前は勝てねーよ、うん」
「今年はまたわかんねーだろ!」
『沢山もらったの?去年』
「あー…まあ」
私がサソリに問うと、歯切れの悪い返答である。どうやら私にはあまり話したくないようだった。
「どうせ食わねえから。あんまり興味ない」
『そっか。サソリは甘いの食べないもんね』
「サソリは直接渡すと全部断られるから、ファンが色々工夫して色んなところにいれてくんの」
『色んなところ?』
チッとサソリが舌を打った。
「ロッカーとか鞄とか全部こじ開けられるから。当日は全部荷物持って帰っとかねーと教科書とかノートとかなんでも盗まれる」
『えっ…それは…』
「オレにとっては迷惑なイベントでしかない」
サソリは心からうんざりした様子でそう言った。思った以上に大変そうである。
「美羽は?作るのか?」
イタチに声をかけられ、ううん、と唸る。
『考えてなかったな。今まで無縁なイベントって感じで。お父さんには作ってたけど』
「えー、作ってよ。食いたいし」
『それは勿論。リクエストあれば言って』
あれやこれや男子が盛り上がっている。
私はふと、黙ってその会話を聞いている人物に目を動かした。暫し考えて、声をかける。
『皐月も一緒に作ろうよ』
「えっ!やめとけって、うん」
皐月が何か言うより先にデイダラが口を挟んだ。
「言ったじゃん。こいつ料理壊滅的なんだって。カップラーメンが限度」
「なによー、失礼ね」
『ちなみに去年までは?』
私の質問に皐月は全く悩まなかった。
「チロルあげた。皆に一つずつ」
『チロル…』
「しかも選ぶ味がまた微妙なんだよな。去年のやつはカレーパン味」
『カレーパン味!?それは逆に気になる…』
「クソ不味かった。興味本位で食ったことを後悔した」
サソリがしれっと言った。どうやらサソリも食べたらしい。
皐月は表情を崩さないままである。
「別にいいでしょ。アンタ達沢山もらうんだから。ここであえて真面目に行く必要ないじゃん」
『それもそうかもしれないけど…でも、生チョコとかだと簡単よ。ほんと混ぜて固めるだけ』
料理が壊滅的なのはうちの母も同じである。しかしその母すら去年作れていた。勿論私の監視がついた上でだけれど。
『男子は胃袋掴んでおけばあとはどうにでもなるよ』
「お前…オレが胃袋に支配されてるみたいに言うんじゃねーよ」
『だってそうじゃん。胃袋掴まれたでしょ?』
まあ掴まれたけど…とサソリが声を尻すぼみにさせる。その様をじっと見る皐月。
皐月の視線が右斜め下に動いた。どうやら悩んでいるようだった。しかしデイダラが追い討ちをかけてしまう。
「やめとけって。犠牲者が出るから」
『犠牲者って…』
「お前、好きな男もいないんだろ?まず好きな男作る方が先決じゃね?うん」
皐月がじろっとデイダラを睨む。これはダメだな、と私は瞬時に悟った。
「やっぱりやめとく。渡したい人もいないし」
『…そっか。それならまあ、構わないけど』
これ以上何か言える雰囲気でもなかった。皐月はさっさと踵を返して私たちから離れてしまう。その姿を見て、呆れたようにため息をつくサソリ。
この二人は、仲がいいのにどうしてこう喧嘩しがちなのだろう。