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美羽は晩飯を作りに部屋を後にした。奴らはまだ卒アルを見ながら誰が可愛いだのなんだの言っている。
「おめーらさ…少しは気ィ使えよ」
オレは額に手を押し付けながら言った。起きてたの?の言葉に首肯する。
「見てられなかったから寝たふりしただけだ」
「なんで?もう気にしてないって言ってたじゃん」
「気にしてるに決まってんだろが。9年だぞ。ずっと一人で耐えてたんだぞアイツ」
9年かあ、確かに長いよな、と飛段。
「でもじゃあなんで卒アルなんて出したんだろ、うん」
「多分、だけど。口に出すことで大したことないって思い込みたいんだろ」
思い込み?とイタチ。オレは首肯する。
「過去を精算したい気持ちはあるんだと思う。大したことなかったから大丈夫だって自分に言い聞かせてんだよ。ただあれ、オレたちが思ってる以上に相当トラウマ抱えてるから。実際はさっき言ってたことより酷いことされてきてるんだろうし」
ふぅ、と一息つく。
「あいつは常に何かしてないと自分に価値がないと思い込んでる。オレに対してもそう。何かしてないと不安なんだよ。セックスに関しても、本当は本人はそんなにやりたいわけじゃねぇんだと思う。ただ、オレに嫌われたくなくて合わせてんだよ」
ほえー、と飛段が力の抜けた声を出した。
「よくわかってんね、美羽のこと」
「わかろうと努力してんだよ」
美羽は基本的にマイナス感情を表に出さない。今まで受け止めてくれる人がいなかったからだろう。
常にニコニコして相手に合わせている。嫌なことを嫌と言えない。負の感情を出したのは旅先で同級生に会った時、ミスコンの時と真白さんにからかわれた時くらいである。
逆を言えば真白さんには心を許しているとも言えるが。
「なんつーか…もう少し心を開いてほしいんだけど。本人にも自覚がないから。なかなか難しくて」
うーん、とデイダラは頭をひねる。
「旦那には心を開いているように見えるけど?うん」
「どうだかな。少し放って置いただけで浮気を疑われるレベルには信用ないぞ」
あー、あれな。とデイダラが笑う。疑問の表情のイタチと飛段にデイダラが答えた。
「プレゼント買おうとしてバイトしてたじゃん。それを女に会ってると勘違いしたんだって、うん」
「あーそういえば。買えたん?お目当てのやつ」
「してたじゃないか。ピンクダイヤのネックレス」
イタチは流石、気づいたらしい。飛段はそうだったか?と首を傾げている。
「死ぬ気でバイトしたからな」
「いくら?」
「12万」
「12万!?すげーな、頑張ったな」
同意する。
「普通のダイヤだと3万くらいで売ってたんだけどな…見ちまったら妥協できなくなった」
「喜んでた?」
「多分。意識が朦朧としてよく覚えてねーけど」
でもなぁ、とオレ。
「ご両親に迷惑をかける失態でプラマイゼロだな…」
「でもすげーよな。家に連れてきてくれるって。よく父ちゃん許してくれたな」
美羽の父親。思い浮かべて、更に憂鬱な気分になる。
「いや…緊急事態だから仕方なく受け入れてくれた感じだ。嫌だと思う。本音はな」
真白さんと美羽に押されて、オレが彼氏なのが嫌だと言えていないというのが正直なところだろう。というか、今日あたり真広さんが帰ってきたらきちんと挨拶しておかないとまずい。急に思い出して更に更に憂鬱である。
「旦那みたいなのが彼氏だと喜ばれるんじゃねーの?うん」
「見ただろあの溺愛っぷり。誰がきても嫌がるに決まってる」
実際、父親が美羽に男ができるのが嫌で私立の女子校に入れたと真白さんが言っていた。卒業後数ヶ月で彼氏ができたなんて真広さんにとっては不快どころかもはや事件だろう。
「いつまでここにいんの?」
「そろそろ帰んなきゃと思ってたけど、年明けまでいろって打診されてる」
「ああ、正月あるもんな。いいんじゃね?」
「簡単にいうなよ…」
それに関しても、父親がどう思っているのかが肝だ。今日会ったら少し探りを入れなければいけないだろうとオレはため息をつくのであった。