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心の準備ができず、風呂から出ても暫く脱衣所から動けなかった。
なんでこんなに緊張してんだよ。女子かよ。
第一、美羽のしよ、がなにを指しているのかいまいちわからない。まさかセから始まるアレじゃねえよなあ。いや、ない。ないだろ。オセロとかトランプとかその辺りだ。きっと。
リビングに向かうと、美羽が椅子に腰掛けながら雑誌を読んでいた。料理雑誌かと思いきや猫雑誌である。猫が好きなのか、とこの時初めて知った。
オレに気づいた美羽が顔を上げる。
『お父さんのスウェット、サイズ大丈夫そうだね』
「ああ。後でお礼言っておかなきゃな。そういえば真白さんは?」
真広さんはもともと仕事でいないが、真白さんは基本家にいるはずである。
『出かけた。今日はお友達と夜ご飯なんだって』
「……え」
嘘だろ。何故いてくれないんだ真白さん。娘と男二人にして心配じゃないのか?
美羽が席を立ち、オレに近寄ってきた。思わず一歩後ずさってしまう。
美羽が、オレの腕に己のそれを絡ませながら甘い声で囁く。
『私の部屋行こっか』
断れず、そのまま部屋に連行される。
オレが風呂の最中に片付けたらしく、ベットシーツが新しいものに変わっていた。男臭くなり始めていた部屋に完全に美羽の甘い香りが戻っている。
頭がクラクラした。
美羽がじっとオレを見つめている。
『ねえ、しようよ』
「なにを」
『決まってるでしょ』
「そうだな。オセロやろうか」
『やらないし。ないから』
「じゃあトランプでもいいぞ」
美羽がムッとする。
『なんでしてくれないの?』
「…念のためお聞きしますが。何がしたいんですか?」
『セックス』
「はい?」
『だからセックスだって』
思いの外ハッキリ言われて、完全に困惑した。セックスって。あのセックス以外ねぇよなあ。
『私、もう大丈夫だよ』
「……」
『サソリとだったらしたい。というかしてほしい』
少し考えて、オレは答えた。
「気持ちは嬉しいけど。さすがに今日じゃないだろ」
『どうして?』
「ゴムもないし」
『お母さんにもらっておいた』
真白さん…娘になんていうもん持たせてんだ。
自分の身を守るという観点からしたら間違ってはいないのかもしれないが。それにしたって。
オレはもう一度考える。セックスなあ…確かにしたいけど。
「お前さ、どうしたの?」
『なにが?』
「キャラ変しすぎだろ。何かあったのか?」
美羽は押し黙る。どうやら何かあったでビンゴのようである。
『サソリに甘えてほしいの』
「甘えて…?なんだそれ」
美羽がぷくっと頬を膨らませる。
『お母さんに言われたの。サソリに甘えるだけじゃなく、ちゃんと甘えさせてあげなさいって』
「……」
『考えたら、私サソリにいつもしてもらってばっかりで。なにも返せてないなって。サソリに何したら喜んでもらえるのかなって考えたの。男の子は好きでしょ。エッチなこと。そうしたら必然的に、甘えてくれるかなって』
「……」
『存分に甘えてください』
美羽は両手を広げてスタンバイしている。オレは首に手を当てため息をついた。
「さっきも言ったけど。お気持ちだけ頂いておきます」
『なんで』
「オレ、もう既に十分お前に甘えてんだよ」
美羽が目を白黒させる。
「かっこ悪いとこ沢山見せちまったから。少し時間をおきたい」
『だからそのかっこ悪いところをもっと見たいの!』
美羽が食い下がる。
『全部見せて。かっこ悪いところも、汚いところも、恥ずかしいところも全部。受け入れるから』
「…それ、男のセリフだろ…」
まさか美羽にそんなことを言われるとは。恥ずかしくて口元を手で覆ってしまう。
美羽は変わらずじっとオレを見ている。
『サソリは私とそういうことしたくないの?』
「そりゃしたいけど…」
『じゃあ問題ないじゃない』
自分でも、何故こんなに躊躇してしまうのかわからない。数ヶ月前のオレなら喜んで致していたとも思う。
しかし今となっては、こんなに純粋で真っ白な美羽を汚すことに抵抗がある。
ぎゅう、と美羽がオレに抱きつく。
『サソリ、好き。大好き』
「……」
『ねぇ。キスしたい』
何も言わないオレに、美羽は自分から唇を押し付けてきた。美羽からキスをしてくれたのはこの時が初めてである。
ゾクっとした。欲望が顔をもたげる。
美羽の背中に腕を回し、キスに答える。久しぶりの美羽の温もりだった。抱き合うことも、キスをすることも最近はご無沙汰だったことを思い出す。
本人が言っているんだから、いいだろ?
そんな考えが頭を過ぎた。
そのままベッドに倒れ込む。完全にスイッチが入ってしまった。美羽に貪るようにキスをしながら、無防備な太腿を撫でる。美羽がびくっと体を揺らした。
「いいぜ。しようか」
『……』
美羽はオレをじっと見たまま、こくんと首を縦に振った。その顔は覚悟を決めたような面持ちである。
深いキスをしながら、美羽の服を緩めていく。これからの行為にどんどん期待が膨らんでいく。その時。
「サソリー、お見舞いに来た…あ?」
「……」
『……っ!?』
美羽の絶叫が部屋に響き渡った。