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じゃあ、まだもう少しだけ甘えさせてもらうけど。もし、迷惑そうだったらすぐ帰るから。
サソリからの返答はこうであった。気にしなくていいといっても、やはり両親の存在は彼の中で大きいらしい。まあ、そりゃそうよね。
空になったお粥のお皿をキッチンに持っていく。少なめにしたとはいえ完食してくれたことにホッとする。夜は煮込みうどんでも作ろうかな。
「サソリくん、どう?」
キッチンでお皿を洗っていると洗濯物を取り込んでいた母が声をかけてきた。
『だいぶ落ち着いたみたい。顔色もいいし』
「そ、よかった。でもまだ油断できないから。ゆっくりしてもらわなきゃね」
私はそうね、と相槌を打った。
母が洗濯物を畳んでいる。いつものように私もそれを手伝おうと腰を下ろした。
「サソリくんはさ、大人になりきっちゃってるわね」
母の言葉に、私は顔を上げる。
「両親のいない子…それこそ施設の子とかって、そういう傾向があると思うけど。サソリくんは凄く顕著」
『と、いうと?』
私の言葉に、母は答える。
「自分を守ってくれる大人がいないと、自分が大人にならなくちゃって思い込むのよ。自分はもう大人だから、誰にも頼らず生きようとしてる。困った時人に頼ることができなくて、全部自分でなんとかしようとする」
言われて納得した。サソリは確かにそういう傾向がある。
「確かにしっかりしてるけど、まだ16歳よ。大人になんてなれるはずないのよ。まだ大人に守ってもらわなきゃいけない立場。そもそも大人だって、困ったら誰かに頼るものなのに。それを彼はわかってない。ううん、本当はわかってるのかも。ただ、わかりたくないんだろうね」
母は膝の上で父のシャツを畳んでいる。私はタオルを丁寧に四つ折りした。
「普通、あんなにフラフラになって出る言葉は迷惑かけてすみません、じゃないわよ。気持ち悪い、助けて、しんどい。そういうのが普通でしょ」
『確かにそうかも。でもサソリ、あんまり弱音吐かないのよね』
「今まで聞いてくれる人がいなかったからでしょ」
母は次は下着を畳んでいる。私は黙って母の言葉に耳を傾けた。
「美羽も、サソリくんがどんなにしっかりしてるからといって甘えてばかりじゃダメよ。甘えさせてあげなくちゃ」
『甘えさせる…』
私に甘えてくるサソリ。いまいちピンとこない。
「サソリくんは賢いから。色んな場面を冷静に判断して乗り越えられちゃう。幸か不幸かちゃんと能力が追いついちゃうのよ。そしてそれが普通だと皆も思ってる。本当は普通じゃないのに。彼が努力してそうしてきたのに、それを誰も認めない」
『……』
「言ってたじゃない。サソリくんはなんでも美羽のこと認めてくれるって。美羽もサソリくんのこと認めてあげなさい」
認めていないつもりはない。むしろ全て尊敬している。
私の不服そうな表情を察したのか、母は続けた。
「彼のダメな部分を認めてあげるのよ」
ダメな部分。これもまたピンとこない。
「人間なんだからダメな部分の一つや二つあるに決まってるでしょ。それを見せてもらえるくらい甘えてもらいなさい」
母は洗濯物を畳み終え、ニッと笑った。
「いいところしか見せてもらえてないなら、まだ貴方がサソリくんに心を許されてない証拠なんだからね」