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私が、サソリの家族になる。
あの日美羽はそう言った。くすぐったいような、恥ずかしいような。正直に言ってしまえば、素直に嬉しかった。家族になるって、やはり特別な気がして。
『サソリ~、ここわかんない』
「はぁ?さっきも説明したろ。この公式使うんだよ」
『だからその使い方がわかんないの!』
美羽がキーキーと騒いでいる。オレは参考書をトントンと叩きながら言った。
「お前これ中二の数学だぞ。品行方正成績優秀じゃなかったのかよ」
『だから違うんだって。しかも一番数学が苦手。何言ってるかさっぱりわからない』
美羽は完全に文系だったらしい。国語、英語は悪くはない。しかし数学化学が壊滅的だ。ちなみに体育も陸上競技は全てダメらしい。むしろできるのが水泳だけと言ったほうが早い。
しかし、美羽の家庭教師に手を焼くのは想定の範囲内である。オレは子供に言い聞かせるようにもう一度説明する。
「とりあえず落ち着け。すぐ慌てるからそうなる。時間に制限はないんだからゆっくりやれ」
『はい…ごめんなさい…』
美羽は素直に再び参考書に向き直った。バカだが真面目である。
文化祭や体育祭の大きなイベントが終わり、今年の行事は残すところクリスマスくらいだ。といっても学校行事に含まれているわけでもなし、関係ないと言えば関係はない。
「そういえば今年のクリスマスどうする?」
心の内を読まれたわけではないだろうが、イタチがそう言った。オレと美羽は同時に顔を上げる。
『クリスマス?』
「いつもイタチん家で集まってパーティーしてんの、うん」
本当に仲良しねぇ、と感心する美羽。
『今年もやるの?』
「そりゃーやるだろ。皆彼女いねーし」
「うっせー。クリスマスまでにできるかもしれねぇだろ、うん!」
「ナイナイ」
皐月が微妙な顔でデイダラを見ている。この二人は相変わらず全く進展がない。
美羽がチラッとオレを見た。
『サソリはどうするの?』
「あー…オレは別に」
「二人はデートじゃねぇの?」
『全然決めてないよね』
美羽に言われて、オレは答える。
「どこ行っても混んでるしな。お前行きたいところあるなら行ってもいいけど」
『行きたいところねぇ…』
ううん、と美羽が唸る。
「去年までどうしてたんだ?」
『それを私に聞きますか…クラスのクリスマス会省かれて一人で家にいたに決まってんじゃん』
「ぶっは!かわいそー」
『放っておいてよ』
美羽は特段傷ついた様子はない。過去のことは清算されてきているようである。
『いいんじゃない?皆でパーティーしようよ。私ケーキ作るし』
「まじで!?楽しみ!」
『いいよ。なんでも作るよ。リクエスト募集するから皆考えておいてね』
「やったー」
美羽の様子を、オレは黙って見つめていた。
****
「いいの?クリスマス。二人で過ごさなくて」
例の如く昼休みである。オレは今日のメインのハンバーグを食べながら答えた。
「本人がいいっていってるからいいだろ」
「またまたぁ。サソリちゃんは二人で過ごしたいくせに」
「いや、別にどっちでも構わん」
「えー、なんで?」
「……どっちにしろ変わんねえからだよ」
ぶはっと皆が吹く。オレは気にせず卵焼きに手を伸ばした。
「サソリちゃんまだ本命童貞なの?」
「卒業したように見えるかよ…」
「いや、見えないけどさ。やばくね?もう半年経ってんじゃん」
その質問には動じない。オレはもう悟りを開いていた。
「もうここまできたらどこまで肉体関係を結ばずにやっていけるのか試してみたい」
「美羽は?どんな感じなの?」
「何も考えてねーだろな」
オレは茶を飲み下しながら言った。
「なんつーか…男女の違いはでかいな。アイツが求めてるのは肉体的な結びつきじゃなくて精神的な依存先。それ以上はオレに求めてねぇの」
「あー、まあ精神的な依存先ってのはわかるな。そんな感じはする」
飛段が同意した。
「なんか、もうサソリがいなくなると死んじゃう!みたいな感じがする」
「まあ意識してそうさせてるのもあるけど。オレは依存される方が好きだから」
「重いなぁ」
「重くない恋愛なんてねーよ」
オレは小さく息を吐いた。
「ぶっちゃけ父親にも、手出さないよう釘刺されたんだよな」
「あー、あの父ちゃんな。強烈だったな」
迷わず首肯する。
「でもいい人たちだぞ。片親でさえ嫌がられることが多いのにオレが両親いないのも気にしてないっつーか、逆に労ってくれるし」
美羽のようないいところのお嬢様は片親でNGが出そうなものだが、ご両親はそこについては全く気にしていないようだった。そこは素直に有難い。
父親の方は純粋に娘に彼氏らしきものがいるのが気に入らない様子ではあったが。それは恐らくオレでもそれ以外でも関係ない。そこは時間をかけて納得してもらうしかないだろう。
「ミスコンでてからちょっかい出す男も増えたし。なんつーか越えなきゃいけない壁が増えた気がする」
何度か、ラインの連絡先を貰ったりしたようだ。本人はかなり不審がっていて全てオレに渡してきたが。
オレ調べによれば、彼女は同級生より年上に圧倒的な人気がある。
「まあ可愛いからな、うん」
「早く初めて貰っとけよ。他の男にとられるぞ」
「なんでだよ。取られねーよ」
取られてたまるか、とオレは言った。