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サソリはなんだかんだ女子にキャーキャー言われて楽しんでいるようだった。ムスッとしながらその様子を眺める。
面白くない。
「美羽ちゃん、こっちお願い」
『…はぁい』
私は男子の配膳担当である。男の子苦手なのに。
『お待たせしました。アイスコーヒーのお客様…って、アレ?』
そこで気付く。
『サスケくん!?こんにちは』
「…おう」
「あれ、知り合い?」
そこにいたのはサスケくんだった。あとは友達らしき男の子が3人。
私はサスケくんの前にアイスコーヒーを置きながら言った。
『そっか。ここ受験するって言ってたもんね。あ、初めまして。私月野美羽です』
友達に向かって会釈をする。
「オレってばうずまきナルト!」
「奈良シカマルです」
「秋道チョウジだよ」
『皆もここ受けるの?』
ドリンクを配りながら問うと、皆は首肯した。
「見学がてら遊びに来たんだよ」
『そうなんだ。ごめんね、ゴチャゴチャしてて』
「とんでもなく混んでますね」
『そーなの。うち、人気な男子が沢山いるから。それ目当てでね』
サスケくんは馬鹿にしたように笑った。
「女はそういうくだらないの好きだよな」
「またまたぁ。サスケだってこの美羽のねーちゃん目当てだろ?こんな綺麗な人と友達だなんて聞いてねえってばよ」
「んなわけねぇだろ。たまたまだ」
サスケくんはじろっと私を睨んだ。
「お前、あの時の怪我はもう大丈夫なのか?」
『怪我…?ああ、あれね。もうすっかり』
ピラっとスカートをまくって見せた。すると皆が顔を真っ赤にして逸らす。そこで気づいた。今日はニーハイにガーターベルトまでしてるんだと。そもそも、こんな際どい部分他人に見せるべきではない。私は慌ててスカートを元に戻した。
『ごめんごめん!癖で!つい』
「どんな癖だよ…」
サソリに見せまくってた癖だとは言えない。皆は気まずそうにドリンクをすすっている。たまらなくなって私はその場を離れた。
『じゃ、またね!ごゆっくりどうぞ!』
やってしまった、と思いながら厨房に戻る。
すると、サソリに声をかけられた。
「随分楽しそうだな」
『サソリにだけは言われたくない…』
サソリは500円玉を弄ぶように投げている。ふんっ、と私は鼻を鳴らした。
『一体いくら儲けたのよ』
「さあ?数えてねーけど。二万くらいじゃね?」
二万。サラッと言われて驚愕する。
「羨ましいならお前もやれば?」
『やらないし。サソリと違って顔で儲けられるほど美しくないので』
トレーを片付けながら素っ気なく答える。サソリはニヤッと笑った。
「なに?じゃあ妬いてんの?」
『……妬いてないし』
「美羽ちゃん。ちょっといい?」
瑠衣ちゃんに声をかけられる。
なに?と私。
「女子の方なんだけど。美羽ちゃん指名」
『え…女子?』
女子に指名されるとはなんぞや。サソリも訝しげな顔をしている。
「とりあえず行ってくれる?これドリンクね」
渡されて、向かわざるを得ない。サソリが私の後ろをついてきた。
『なによ』
「いや、なんか変なのだったら困るから」
『変なのって…』
「きゃああああ!美羽様!!」
『うっわ、なに!?』
割れるような黄色い声援。見ると、そこにはなんとK女学院の制服が6人。
一瞬息を止めてしまった。サソリも驚いた様子である。
目の前の彼女たちは、私の姿を見て何やら興奮している様子だ。そして気付く。私は多分、彼女たちのことを知らない。というか、よく見たら中等部の制服だ。同級生ではなく、年下である。
「美羽様!私たち、美羽様のファンで」
『はぁ…?ファン?』
自分にファンがいたなんて驚きである。
しかし彼女達の熱量から察するに、嘘ではないようだった。
「K女にいる時からお慕い申し上げておりました。でも、外部受験したって聞いて」
一人の女子が目を潤ませながら続ける。
「ものすごくショックで。美羽様、K女の中でも特に優秀で美しかったから」
『そんなことないと思うけど…』
混乱する。そんなこと言われたことがない。
困っていると、サソリがぽん、と私の肩を叩いた。
「…変な話じゃなさそうだから、オレは行くわ」
『えっ、十分変な話じゃない…』
「待ってください!そこの方!もしかして…美羽様の恋人ですか!?」
サソリが足を止める。どうやら彼女達に少し引いているようだ。
「……そうだけど」
「きゃああ!やっぱり!」
「さすが美羽様の恋人となられる方!とんでもなく美しいわ!!」
『ちょっと待って…やめて…』
確実に周りから浮いている。さすがK女学院。ぶっとんだお嬢様だらけである。
このノリに馴染めなかったのだ、と苦い記憶を思い出した。
『待って。とりあえずその美羽様ってのやめて。普通に先輩でいいから』
「何故ですか!?美羽様は美羽様です!」
『ここ、公立校だから。そういうノリないの』
私の言葉に、皆は附に落ちない表情である。それに、と私は続けた。
『知らないのかもしれないけど、私同級生にめちゃくちゃいじめられてたみそっかすだから。それで逃げてここを受けたわけで。尊敬されること何もないの」
「そんなことありません!美羽様はとても素晴らしい方です!」
教室に響き渡る声で叫ばれた。
だからその美羽様と呼ぶのをやめてほしい。
「美しいだけでなく、どなたにでもお優しくて。品行方正成績優秀。私たちの憧れです」
「そうです。美羽様より美しい方は今のK女におりません。もっと自信をお持ちください。学校は離れていても私たちはいつまでも美羽様のファンです!」
本気で困惑して、私はドリンクを持ったままその場に立ちすくんだ。サソリがトレーからドリンクを持ち上げる。
「とりあえず配るわ。皆ジャスミンティーな」
「恋人様。貴方は美羽様のどこを慕っておられるのですか?」
恋人様って…とサソリが狼狽ている。
「美羽様の私服ってどんな感じです!?」
「恋人の契りはもう交わされたのですか!?」
「いつからお付き合いを!?」
「結婚は何時ごろをお考えで!?」
「待ってくれ…そんなに聞かれても答えられない」
彼女たちのターゲットがサソリに移ったところで、私はそそくさと厨房に逃げた。サソリに思いきり睨まれるも無視である。
「すっげーな。K女学院って。まじでぶっとんだお嬢様ばっかり、うん」
裏で見ていたであろう皆に声をかけられた。私は小さく首肯する。
『女子校って常時あのノリよ。男子禁制だからみんな女が好きなの』
「えっ…まじ?百合じゃん」
『そ。付き合ってる子も結構いた』
私はいじめられてましたので勿論ありませんけどね。
「美羽のファンかー。サソリのファンより熱狂的じゃん」
『いや…私も初めて言われたから。知らなかった』
同級生との確執ばかりに目がいって、他の学年の子たちまで気にしている余裕は全くなかった。自分が知らないところで他人に好かれているとは、なんだか不思議な感覚である。
「結構可愛い子たちなのにな。推しは美羽なのか」
「なー。オレたちだって結構かっこいいのにガン無視だぜ」
『だから、女子校出身者はみんなあんな感じなの。男を男として見てないわけ』
「だから美羽はサソリに対してあんなに鈍感だったんだな」
答えられず、代わりにムスッとした。皐月が笑う。
「ほら。あの子たちも美羽可愛いって言ってんじゃん。可愛いんだよ。自信持ちなよ」
『何かの間違いでは…』
「間違いじゃねーだろ。どう考えても」
彼女たちの方をチラッと見る。まだサソリは捕まっていた。どうやら丁寧に彼女たちの質問に答えているようである。
冗談?勘違い?でもそれでわざわざこの学校にまで来る?ううん。
よく、わからないなあ。