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文化祭当日。
『ほんと、いや…』
用意されたメイド服に腕を通して、私は心底ため息をついた。ガチメイド服である。秋葉原にいるようなメイド衣装。コスプレじゃないか、こんなの。
「なんで?似合ってるじゃん」
『皐月はなんでメイドじゃないのよ』
「私?私はほら、女からのがモテるからさ」
皐月は燕尾服を見に纏っていた。確かに皐月は男装もいける口である。美人のくせに、見ようによっては美少年に見える。なんだ、この美少年。ぶっちゃけめちゃくちゃタイプである。
更衣室からダラダラ教室へ歩く。かなり憂鬱だ。ブスなメイドと笑われるのが目に見えている。サソリは一応可愛いって言ってくれると思うけど。
教室に入ると、カフェの準備をしていたクラスメイトたちが一斉に給仕組を見た。ざわっと歓声が上がる。
「美羽ちゃん可愛い~」
『はぁ…どうも』
女子に囲まれながら数枚写真を撮られる。本当に勘弁して欲しい。ネットに載せないでね、と念を押した。
『…サソリたちは?』
サソリたちも給仕組みのはずである。しかし姿が見当たらない。すると瑠衣ちゃんが答えた。
「女子人気がすごすぎて。めんどくさいから始まるまで隠れてるって」
『ふぅん』
納得である。彼らも多分燕尾服だ。そりゃあ人気になるだろう。
私は動きにくい服装のまま、クラスの最終準備に参加した。
****
文化祭が始まった結果。
めちゃくちゃ忙しかった。
うちのクラスはカッコいい人も可愛い人も多い。メニューは簡易的なものなのにコスプレが受けたようだった。絶えず行列が続いている。
「まっじサソリどこ行ったのよ!」
皐月が本気でイライラした様子で言った。デイダラたちはお店が開店と同時に帰ってきて、それぞれの持ち場についている。それなのにサソリは全く姿を見せない。
私は受け取ったお金をレジに入れながら答えた。
『確実に逃げたね。めんどくさいの嫌いだから』
「サソリファン大量に流れてきてんのよ、もう捌き切れない!美羽探してきて!」
『えー、私?』
「あんた以外に誰があいつ連れ帰ってくるのよ!」
****
サソリのいる場所は実は想像がついていた。
多分視聴覚室にいるだろうな、と。今日も視聴覚室はなにも使われる予定がなかったはずである。
人混みをかき分けて視聴覚室に向かう。トントン、と扉を叩いてみたものの返事はなかった。
『失礼しまーす…』
一歩踏み入り、見回す。しかしサソリの姿はない。あれ、外したのかな。そう考えていると。
『きゃっ!』
後ろからギュッと抱きつかれ、悲鳴を上げたと同時に口を抑えられる。おそるおそる振り返るとそこにいたのはやはりサソリだった。
サソリは燕尾服に身を包み、唇に人差し指を当てている。もうっ、と私はサソリを睨んだ。
『ビックリするじゃない』
「それはこっちのセリフだ。叫ぶなよ」
『急に抱きつかれればそうなるわよ…』
「美羽があまりにも可愛くて、つい」
言われると思った。動じず私は冷静に伝える。
『サソリのファンいっぱい来てるよ。皐月が怒ってる』
「めんどくせえんだもん。美羽とイチャイチャしてたい」
またギュウ。私はダメだよ、と言った。
『そういうのは後で』
「ふーん?後でならさせてくれんの?」
サソリはニヤニヤしている。仕方なく答えた。
『…まあ、ちゃんと協力してくれるなら少しだけね』
「ふーん、じゃあ行くわ」
サソリはあっさり踵を返していく。長い燕尾服がはらりと翻った。
その様を見て思わず息を呑む。
カッコいいなあ。
「美羽?」
サソリに呼ばれて我に帰る。私は慌ててサソリの後を追った。
****
教室に帰ると、黄色い歓声とともに皐月に思いきり睨まれた。
「遅すぎ。後で覚えときなさいよ」
適当に流してオレは教室を見回した。客は女子6割男子4割というところ。上手い具合にバラけている。
こんな一杯300円もする市販のジュースになぜこんなに人が群がるのか謎だ。
とりあえず女子の机に配膳に行けと言われ、仕方なくトレーにジュースを3つ置き持っていく。
きゃあっと黄色い歓声が上がった。
「オレンジジュース。誰の?」
「はっ…はい、私です…」
「ジャスミンティーは?」
「はいっ」
「アップルジュース」
「わたしでーす!」
言われた通りに目の前に置く。すると後ろからバコンとトレーで叩かれた。振り向くと皐月が般若の形相で立っている。
「敬語使いなさいよ!何様よ!」
「いてて…いーじゃねーか。なんか喜んでるし」
な?と同意を求めると女子たちは一人も違わず首肯した。ほらな?とオレ。皐月は面白くなさそうにオレを睨む。
「ほんっとあんたのそういう適当っぷり嫌いだわ」
「お前に嫌われても美羽は好きって言ってくれるからいいわ」
「あ、あの…サソリ先輩」
「?」
戻ろうとすると、女子に声をかけられた。スマホを持ってオレを見ている。
「写真…撮らせてもらっていいですか?」
その言葉にオレは最高の笑顔で笑った。
「いいけど。一枚500円な」
「いいんですか!?」
皐月が侮蔑の目でオレを見る。
「チェキのメニューないんですけど!」
「だからこれは個人的に。いくらでも撮れよ。んで金払って」
「ほんっとサイテー。やっぱあんた嫌いだわ!」