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次の日
サソリくんと選んだ…というか、サソリくんが悩まずに即決したお弁当箱。
昼前には渡そうと思っていたのに、既に3時間目が終わってしまった。サソリくんはいつも友人に囲まれていて声をかけづらい。どうしたものか。
「旦那、次体育。着替え行こうぜ」
「おー…」
デイダラくんとサソリくんが私の隣を通り過ぎていく。一瞬、サソリくんが私を見た気がした。しかし、すぐに行ってしまう。
「美羽、行こ」
『ごめん。先行ってて。すぐ追いかけるから』
皐月に断りを入れて、私は人が捌けるのを待った。大分人が減ったところで、鞄から素早くお弁当を取り出しサソリくんの机に引っ掛ける。ちら、と周りを確認するも誰も気付いていない模様。
私はほっと胸を撫で下ろし、更衣室に向かった。
****
「腹減ったー。学食行く奴ー」
「オイラ今日弁当だ、うん」
体育が終わり、着替えて教室に向かう。
美羽からの接触はない。弁当はどうなっているのだろう。気になったが無料でお願いしている身である。彼女からの弁当はボランティアに過ぎない。ないなら、それはそれで。
「サソリちゃん学食行こうぜ」
「あー…ん?」
ふと、机の横に引っかかっているものが目に入る。それがなんなのかはすぐにわかった。昨日一緒に買いに行ったからである。
ちら、と美羽の姿を確認する。彼女はもう既に、皐月と他の女子たちと弁当を広げていた。
「…オレも今日、弁当だわ」
「弁当?」
珍しい、と皆。まあな、とオレは弁当を机の上に置いた。
学食組は学食へ、弁当組は教室で。オレたちは自然に別れた。
****
昼休み終了まであと5分ほど。私はお手洗いに行こうと席を立った。皆に断りを入れ、トイレに向かう。廊下を折れた所で、「おい」と声かけされた。
振り向くとそこにはサソリくんが立っている。手にはお弁当箱を持って。どうやら今日もちゃんと食べてくれたようだ。
サソリくんはそれを私に差し出した。
「普通に渡せ」
『え?』
「弁当。普通に渡せよ」
受け取りながら、私は答える。
『や…なんか、渡しづらいというか。サソリくん、いつも誰かといるから』
「…LINEで呼び出せばいいだろ」
『ああ、そっか。その手があったわね』
納得した私に、サソリくんは呆れ顔である。
「美味かった。量も丁度いい」
『そう?よかった』
私は安堵する。
『明日も作ってきていいんだよね?』
「……」
『え、ダメ?』
「いや。助かるけど。本当にいいのか?」
今更?と私は眉を潜めた。
『お弁当箱買っちゃったし。迷惑じゃなければ作るよ』
「…お前さ、何か狙ってる?」
『なにが?』
「オレになんかしてほしいことでもあるのか?」
発言の意図が読めず、私は黙る。サソリくんは腕を組んだ。
「おかしいだろ。普通、ただのクラスメイトに弁当作るって」
『…それって、やっぱり迷惑ってこと?』
私はお弁当箱をぎゅっと握った。サソリくんはじっと私を見ている。
『別にやってほしいことなんてないよ。お金もいらない。やめろって言われるならやめるし』
「……」
サソリくんは完全に不審者を見る目で私を見ている。私は彼の気持ちを汲んで、無理やり自分を納得させた。
『ごめんね。調子乗ったかも。もうしないから』
「……」
踵を返そうとした私にサソリくんは待て、と。そのまま止まると、サソリくんは困ったように頭をかいた。
「すまん。今まで見たことがない人種だったから」
『……』
「迷惑じゃないなら、作ってほしい」
顔を上げると、サソリくんは少しだけ頬を染めて、「これからもお願いします」と言った。