06
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ジュースの買い出しから戻ると、美羽が楽しそうにキャッキャとバーベキューに興じていた。その様に安心する。
「買ってきたぞ」
「サンキュー、あれ、酒ねえじゃん」
「馬鹿。美羽と皐月がいんだろ。アイツらがいるときは火遊び禁止」
へーい、と不満そうに飛段はコーラを掻っさらった。
「適当にとれよ」
皆に声かけして、美羽に近づく。
「お前なに飲む?」
『あ、サソリくん。買い出しお疲れ様。私は余ったのでいいから』
「なんでだよ。お前優先。炭酸飲める?」
『…炭酸は、少し苦手で』
申し訳なさそうに答える美羽。何故そこで申し訳なさがるのか不明である。
「お茶にするか?」
『うん、そうする。ありがと』
美羽は嬉しそうにオレからお茶を受け取った。それだけで心がふっと明るくなる。
最高に可愛い。美羽にブスって言ったブスどもはまじで苦しんで逝ってほしい。
『サソリくんも食べてね』
「おー。どう?美味い?」
『うんっ』
美羽は機嫌がいいらしくいつもよりニコニコしている。オレは美羽から串を受け取った。
『あのね、サソリくん』
「ん?」
『さっきデイダラから聞いたんだけど』
デイダラ?その呼び方に反応する。
『サソリくん、昔は泳げなかったって本当?』
「ぶふっ」
吹き出した。デイダラが会話に混じる。
「まじまじ。海で溺れて死にかけたもんな、旦那、うん」
「いつの話だよ…くだらねー話すんじゃねぇよ」
美羽がふふっと笑う。
『サソリくんにも苦手なことあるんだーって、聞いて得した気分』
「言っとくけど今は泳げるぞ。スクール通いまくったから」
『負けず嫌いだねー』
「そうなんだよ。旦那まじ負けず嫌いでさ。プレステとかでも負けるとガチで怒る、うん」
『はは、子供みたい』
可愛い、と言われて怒るに怒れなくなる。つーか、それは置いといて。
「随分仲良くなったんだな」
『うん。みんな話面白くて』
美羽はまた花のように笑った。ざわっと心が波立つ。
「ふーん…」
『あっ、飛段!それどうしたの?』
「花火。家から持ってきたんだけどよォ、火がつかねんだよ」
『しけっちゃったのかな?』
美羽がさらっとオレから離れていってしまう。飛段、と呼んだ声も引っ掛かった。
面白くねえ。
「どしたん旦那」
デイダラが怪訝そうにオレを見ている。オレは肉を狙ってかぶりついた。
「いや。随分打ち解けてるなと」
『美羽な。普通に話しやすくてビックリしたわ。もっと気使わなきゃいけないのかと思ってたけど、うん』
案外普通だな、とデイダラ。
「旦那というハードルを越えたらオイラたちのことも怖くないみたいよ、うん」
「……」
それは非常に喜ばしいことである。確かに喜ばしいことである、が。
「あっ、ついたついた」
『キレイだねー』
飛段と花火をしている美羽に寄っていく。美羽がオレに気付いて顔を上げた。
「なあ」
『ん?サソリくんもやる?』
「いや…ちょっと付き合って」
どこに?と美羽。オレは無言で踵を返す。美羽は慌ててオレの後をついてきた。
コテージは広い。少し歩けば、奴らから目が離れた場所に行くのは容易い。
『どうしたの、サソリくん』
「……」
首を傾げている美羽に向き直る。オレは言った。
「デイダラ、飛段」
『うん?』
「名前で呼ぶんだな」
ああ、と美羽。
『そう呼んでって言われたから。案外呼びやすいね』
オレはじっと美羽を見つめる。
「オレのことも名前で呼んで」
美羽は少し驚いた様子だった。
『え…サソリくん』
「サソリ、って」
呼んでみ?とオレは言った。美羽は頬をほのかに赤く染める。
『え…恥ずかしいな』
「他の奴らは名前で呼ぶんだろ」
『だってサソリくんは特別だから…』
美羽は唇に手を当てて悩む仕草を見せる。
『……。サソリくんのままじゃだめ?』
「ダメだ」
『……』
「サソリって呼んで。じゃないと逃がさない」
美羽を壁に追い詰める。美羽は唇を噛んで上目遣いにオレを見た。
『…あの、』
「なに?」
『恥ずかしいから、目閉じてくれる?』
何故だ。そう思ったが、素直に目を閉じる。
まぶたの向こうで、まだ美羽が悩んでいる気配がした。
そして暫くの間の後、耳元に唇が寄せられる。彼女は言った。
『…サソリ、大好き』
ゾワっと背筋に電撃が走った。危うく腰が砕けそうになる。
『サソリく…、サソリ?大丈夫?』
美羽がオレの顔を心配そうに覗き込んだ。オレは口元を押さえて一歩後ずさる。
「お前…今のは反則だろ」
『え…だって名前で呼んで欲しいって言うから』
なんでもないように美羽は言う。天然は恐ろしい。
「嬉しいけど。なんか、少しビビったわ」
『なんでー?』
美羽は照れるオレを見て、また笑うのだった。