06
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夜はバーベキューだよ、と前々から言われていた。バーベキューは初体験だ。やったことがない。
皆は手際良くバーベキューの準備をしている。石を並べたり薪を割ったり。さすが男の子である。力仕事もお手の物。
『私、なにしたらいい?』
手持ち無沙汰で堪らず声をかけると、デイダラくんは顎をしゃくった。
「皐月が料理しないよう見張ってて」
『え…なにそれ』
「アイツ料理壊滅的なんだよ。余計なことしないよう見張ってて、うん」
チラリと皐月を見ると、彼女は食材を吟味しているところであった。私は仕方なくそちらに向かう。
『皐月。何してるの?』
「野菜切ろうと思って」
『野菜かぁ…』
玉ねぎ、人参、ピーマン。バーベキューには欠かせない野菜である。しかし、デイダラくんに止めろと言われた手前、どうしたものかなと悩む。
『皐月は…お米炊ける?』
「米?どうやんの」
『ダメかぁ…』
私は腕を組んで考える。お米を炊けない女子。器用で成績もいいのに、料理はできないらしい。
『うーん、私がとりあえず野菜切るから、皐月は串に野菜とお肉刺せる?』
「オッケー」
皐月は素直に私の提案を飲んだ。
安心して、包丁を握る。
「美羽はやっぱり上手ね」
『野菜切ってるだけよ。上手も下手もないって』
「私なら最強に下手に切れるよ」
『逆に気になるなあ…』
二人で和気藹々と準備していると、鬼鮫くんとイタチくんが寄ってきた。
「ありがとうございます。焼くので持ってっていいですか?」
『うん、よろしくね』
イタチくんが私たちの様子を見てふっと笑う。
「仲が良いな。まるで昔からの親友みたいだ」
「あったりまえでしょーラブラブよラブラブ」
『……』
少し恥ずかしくて、私は下を向いて野菜を切る。イタチくんはまた笑ってその場を去っていった。
『ねえ皐月』
「なにー?」
『なんで皐月は、私とそんなに仲良くしてくれるの?』
皐月が手を止めて訝しげに私を見る。
「なんでって…気が合うから」
『……』
「友達にそれ以上の理由がいるの?」
皐月は再び野菜を串に刺し始めた。
「”仲良くしてくれてる”って考えはやめた方がいいわよ」
『……』
「友達に上下関係はない。私が偉いわけでも、美羽が下なわけでもない。立場は平等」
『……』
「私、女同士のめんどくさいマウント合戦嫌いなの。あんたは楽でいいわ。そういうのに無関心で」
私は無言で皐月を見る。皐月はなんでもないことのように言った。
「私美羽のこと好きよ。だから一緒にいるの。美羽も私のこと好きでしょ?」
さらっと言われてたじろいだ。そりゃあ、好きだけども。
「いいじゃん。好き同士だから一緒にいる。それ以外なくない?」
『皐月はほんと、不思議な子よね』
「?」
『私、ほんとに女子に嫌われやすくて。なんかムカつかれるみたいで』
「それもわかるけどね」
普通に肯定されて傷ついた。皐月は笑う。
「美羽は可愛いからさ。いじめたくなるのよ」
『ブスって今まで5億回は言われたんだけどな…』
「気にすることないない。ここにいる皆は言ってるじゃん。美羽可愛いって」
『気を遣ってくれてるんだよ…』
「そんなわけわからない奴らの言う言葉は信じて、私たちの言葉は信じられないの?」
皐月は少しだけ尖った声を出した。そしてまたふっと笑う。
「ま、これから10億回サソリが可愛いって言ってくれるよ。そうしたら信じるしかなくなるでしょ」
『……』
私は無言で野菜を切り終える。皐月もテキパキとそれを串に刺した。
皐月に後処理をお願いして全てを火の元に持っていくと、先程の串がもう焼けたようだった。
「第一陣出来たぞ。ほれ、美羽」
『ありがとう、デイダラくん』
受け取って、いただきます、と呟いた。ふーふーして余熱をとる。そして一口。
『おいしい~』
「だろ?外で食う肉は最高だよな、うん」
デイダラくんがニッと笑う。私も笑い返した。
『デイダラくん、焼くの上手ね』
「いや、焼くのに上手も下手もねーし…」
デイダラくんがじっと私を見た。
「その…デイダラくんっての辞めない?」
『うん?』
「デイダラでいいぜ。デイダラくんって長いだろが、うん」
私は目を瞬かせる。
『そんなに変わる?』
「いいから。デイダラって呼んでみ?」
『うーん…』
デイダラくん、デイダラ、デイダラ、デイダラ。
『デイダラ?』
「あ、いいじゃん。そっちのが仲良しな感じ、うん」
言われて私は笑った。
『呼び方でそんなに変わるかなあ』
「変わる変わる。仲良くしよ、美羽」
「二人ずいぶん仲良しじゃん、なにしてんの?」
飛段くんと角都くんがやってきた。
デイダラが二人にも串を渡す。
「そ、仲良しになったの、うん」
『気が早いなあデイダラ』
「おっ、いいじゃん。オレのことも呼びつけにして?」
言われて、私は二人を交互に見た。
『飛段と、角都?』
「いいね!オレ呼びつけにされる方が好きだわ」
「オレも別にそれで構わないぞ」
あっさりと男性陣は受け入れている。こんなもんなのか、と私は思った。人を呼びつけにするのはなんとなく抵抗があった。
不思議な人たちだな、と思った。私たちは数ヶ月前まで、名前も、顔すら知らなかったのに。
私の心にスッと馴染んできて、暖かい。どれもこれも、サソリくんが架け橋になってくれたおかげなんだろうな。