06
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夏休みに入った。
今日からイタチくんの別荘に旅行である。
親と相談した結果、二泊三日で皐月がいるなら、という許可が下りた。本当はもう少し長くいたかったけれど、さすがに高校生になったばかりの娘を長く泊まりに出すのは不安だったようだ。
『本当にいいの?』
「うん?」
『旅行。別に私に合わせなくても、サソリくんはもっと長く泊まればいいのに』
サソリくんは、私と合わせて二泊三日の予定にしたらしい。
現在新幹線で現地に向かっている途中である。サソリくんは窓枠に頬杖をつきながらふあっと欠伸をした。
「イタチの別荘はいつでもいけるから。問題ない」
『そうかもしれないけど…』
「お前がいなきゃつまんねーし。オレはお前がいればいい」
ポス、とサソリくんが私の肩に頭を乗せる。どうやら眠いようである。
『夜更かししたの?』
「あいつらうるせーんだもん。眠れなくて。少し寝ていい?」
夏休み中、サソリくんの家にはひっきりなしに誰かが泊まっているようなのだ。本当に仲がいい。
サソリくんは私の答えを聞かないまま、すーすー寝息を立てて寝始めてしまった。そして気付く。サソリくんの寝顔めちゃくちゃ可愛い。
『ちょ、皐月!皐月!』
「なに?」
『サソリくん寝てる!可愛くない!?写真撮って写真!』
皐月が呆れ顔で私を見る。
「そりゃサソリだって寝るでしょ」
『だってあんまり見たことなくて…!ちょっと興奮しちゃった』
皐月は面倒臭そうに数枚サソリくんの写真を撮っている。そして私にスマホを見せた。
「こんな感じ?」
『あっめっちゃいい。最高に可愛い。後で送っておいて』
「はいはい…」
前に座っていたデイダラくんと飛段くんが顔を覗かせる。
「旦那寝ちゃったのか?」
『見て!めちゃくちゃ可愛くない!?』
「そうかァ?可愛くはねーだろ」
男性陣、冷めている。私は反発した。
『超可愛いじゃん。赤ちゃんみたい。よしよし~ってしたくなる』
「オカンモードはやめとけよ、うん」
『なにそれ』
「旦那が言ってた。美羽はすぐオカン化するって、うん」
『失礼な!あっ…でもちょっとママにはなりたいかも。おはようからおやすみまでお世話したい』
「ぜってー嫌だわ。サソリとか確実にクソガキじゃん」
そこがいいの!と私は続ける。
『この猛獣を手名付けてる感じに興奮する』
「変わってんな…」
『なんで!?女子はみんなそうだよ。好きな人のお世話めちゃくちゃしたい』
「だそうですが。どうですか皐月さん、うん」
デイダラくんの言葉に皐月は冷めた顔をする。
「いや、無理無理。全然世話したくない」
『なんで!?』
「めんどくさいことは嫌いよ」
『勿体無いなぁ…このめんどくささの後の達成感が気持ちいいのに』
「美羽は面倒くさい男が好きなのか?」
通路を挟んで隣のイタチくんに問われる。私はううん、と考えた。
『どうだろ…そうなのかな?考えたことない』
「お前中学まで女子校だっけ。どこ?」
言われて、少し言い淀む。しかし隠す理由もなかった。
『…K女学院』
「えっ、お嬢じゃん」
『違う違う。うちは普通。お嬢様もいたけどね』
「K女のお嬢様が、何故こんな公立校に来たんです?」
ふっと中学の頃の映像が浮かんで、すぐに消えていった。
私は少し悩んで、答える。
『…一言で言えば合わなかった、のかな。女子校ってまあ、皆アクが強いから』
「そんな感じはするな。まあ、色々あるよな、うん」
デイダラくんはなにやら察してくれたようだ。前から思っていたけど、彼は人の心の動きに敏感である。
『皆は中学一緒なの?』
「中学どころか小学校まで一緒だよ。まじ腐れ縁」
『へー…それで』
通りで仲がいいわけだ、と思った。それと同時に、そんなに昔からサソリくんと一緒にいたことが羨ましく思える。
『サソリくんってどんな子供だったの?』
「まんまだよ。まじクソガキ」
「おめーも人のこと言えねえだろ、うん」
「そういえば覚えてる?アンタたち理科の実験の時に花火に火つけてさ、爆発してめちゃくちゃ怒られてたやつ」
「ぶはは!あったなそんなこと」
皆が思い出話に花を咲かせている。
私は会話に入れず、黙って聞いていた。
いいな、と思った。できることなら私も、最初からこの輪に入りたかった。
「今度アルバム持ってきてあげるよ。サソリの写真あるから」
『え、いいの?』
「勿論」
ニコッとイタチくんが笑う。返事をしようとして、それは叶わなかった。
「やめろ」
『あれ…起きてたの?サソリくん』
「うるせーんだよ。起きるわそりゃ」
ガシガシと頭を掻きながらサソリくんが皆を睨む。
「おめーら余計なこと言うんじゃねぇよ」
「別に言ってねーよ、うん」
「そーだそーだ。サソリが女子に追いかけ回されて階段から落ちた話とか、まだしてねぇし」
「だから余計なこと言うんじゃねぇ!」
私は思わず笑ってしまった。サソリくんが彼らに気を許して話している姿を見るのは、とても好きだ。