05
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昼休み。女子数名でお弁当を囲っていた。デザートのプリンを一口。今日も上出来である。
「そういえば優。大学生の彼氏とどうなの?」
「ラブラブだよー。この前も泊まりしたし」
優ちゃんはなんでもないことのように話す。
「したの?」
「したしたー」
『…何を?』
私は話が掴めず聞いた。皆が私を見る。
「そりゃエッチでしょ」
『……エッ』
エッチ…?私は目を白黒させる。
『…優ちゃん、彼氏と付き合ったの最近じゃなかったっけ?』
「最近って。もう二週間だよー。そりゃするでしょ」
2週間で!?私は驚愕する。サソリくんと付き合って1ヶ月程。そういう行為どころか、その話をしたことも一度もない。
「そういう美羽ちゃんは?」
朱理ちゃんに聞かれる。私は首を横に振った。
『まだまだ。全然だよ』
「嘘だあ。サソリくんでしょ?手が早そうじゃん」
「エッチも上手そうだし」
『それは…知らないけど。でも、本当に。なにもないよ』
事実である。サソリくんとはいつも他愛もない話をして、すぐ一日が終わってしまう。
その関係に満足していたし、サソリくんもそうだと思っていた。
周りの女子は皐月以外納得がいっていない様子である。
優ちゃんは鞄の中から一冊の雑誌を取り出した。ピンクでテカテカした表紙に恥ずかしげもなく書かれた[女子高生のセックス事情]。バサっと広げて、優ちゃんはそれを私に手渡した。
「ほら見て。平均初体験年齢」
『16歳…高一!?嘘でしょ』
「付き合ってから初体験までの日数は平均1ヶ月だよ」
『えぇ!?』
思わず雑誌を受け取って凝視してしまう。これ、本当なのだろうか。俄には信じがたい。
「貸してあげるから読んできなよ」
『いや…いいよ。なんか違う世界の話って感じ』
「全然違う世界じゃないから。現実。サソリくんのためにも読んでおきなって」
無理やり押し付けられる。
返そうとしたところで、それは叶わなかった。
「美羽」
『っうわあ!サソリくん!?』
サソリくんが私のリアクションに驚いている。私は慌てて、例の雑誌を自分の鞄にとりあえず押し込んだ。
サソリくんが眉を寄せる。
「…なんだ?」
『なんでもない!ほんとなんでもないから!」
ブンブンと首を振る私。サソリくんは不審そうな顔をしながら言った。
「少し話がしたいんだけど。いい?」
『話?うん、いいよ。食べ終わったから』
お弁当箱を片付け、私は皆にちょっとごめんね、と断りを入れた。ベランダに行くよう促され、大人しくそれに従う。
「お前さ。夏休みの予定ってどうなってる?」
『夏休み?』
あと1週間ほどで夏休みに入る。
家族の旅行が1泊2日で予定されているくらいで、他には特に大した行事はない。
それを伝えると、サソリくんは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、毎日会えるな」
『え…毎日?』
「嫌?」
『ううん。全然嫌じゃないよ。嬉しい』
夏休みもサソリくんに会えるなんて。幸せ以外の何ものでもない。
『サソリくんは?予定ないの?』
「…そのことなんだけど」
サソリくんは少し迷う仕草を見せた後、言った。
「いつもは、イタチの別荘に2週間くらい皆で行ってるんだ」
『別荘?凄いね』
私の言葉にサソリくんも同意する。
「観光地も近いから。色々まわったりして」
『楽しそうね。いいじゃない』
「……」
『でも、そっか。じゃあ2週間は会えないんだね』
少し寂しいな、と思ったけどそこは言わないことにする。気を使わせそうな気がしたからだ。
サソリくんはじっと私のことを見つめている。
「…よかったら、なんだけど。一緒に行かないか?」
顔を上げる。サソリくんが今度は私から目を逸らした。
「正直、行くか迷ってて。お前と会えなくなるのが嫌で」
『……』
「そしたら、皆が、連れてきたら?って」
『……』
無言でいる私に、サソリくんは否定的な印象を受けたようだった。
「悪い。嫌だよな。男と旅行なんて」
『違くて…いいの?』
「?」
『私、完全に部外者だから。いいのかな?本当に行っても』
サソリくんは少し驚いた顔をする。
「部外者じゃねーだろ」
『?』
「オレの大事な彼女なんだから。部外者じゃない」
言われて、思わず笑ってしまった。なんだよ、とサソリくんは不本意そうな顔をする。
『…ううん。嬉しい。親に聞いてみるね。少し時間もらっていい?』
「そうか、わかった。皆にそう伝える」
話それだけだから、と踵を返そうとしたサソリくんの制服の袖を掴む。サソリくんがこちらを振り向いた。
『まだ、昼休み終わりまで5分あるよ』
「……」
『もう少し、二人でいない?』
私の言葉に、サソリくんは少しだけ照れ臭そうに笑った。