05
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美羽とオレは、付き合うことになった。
付き合うといっても、大して関係は変わらない。変わったことといったら、美羽が時々オレの家の掃除に来るようになったことと、夜ご飯も作ってくれるようになったことである。完全にオカン度が上がっている。
「え?ヤッてねーの?」
飛段は購買のパンにかぶり付きながら言った。オレは弁当を食べながら答える。今日のメインは珍しく魚。アジフライだ。
「まだ付き合って1ヶ月もたってねぇし」
「はー?何紳士ぶってんだよ。お前なら当日ヤッてもおかしくないだろ」
当日、か。あの日のことを思い出す。
浴衣を身に纏った美羽は普段以上に可愛く、とんでもない色気を放っていた。
お互いに気分が盛り上がっていたこともあり、スキンシップと呼べる以上の行為は確かにあった。しかしながら下のお触りは全く無かったし、美羽にもその気はないだろう。
というか、あの日が確実に一番美羽に触れた。今はあっても軽いハグとキス、あと手を繋いで帰るくらい。
「なんつーか…ガードが緩すぎるっつーか、ノーガードなんだよな」
「うん?」
「多分アイツ何も考えてない。オレとそういうことがあるとか、全く、一ミリも。警戒心がなさすぎて、逆にこっちが気を使うというか」
あの日のアレも、本人の意思というよりオレに流された感が否めない。おそらく行為自体も性行為というより慰め、母性のような認識な気がする。やっぱりオカンかよ。まあオカンとはあんなことしないだろうが。
「したことないから、想像ついてないんじゃないのか?」
「多分それだな。家にもマジで普通に入ってくるから。男と密室に二人でいて何があるかわかってないな」
「うわ、めっちゃ純情じゃん」
大変そー、と飛段に笑われ、オレは答える。
「今の関係のままで満足だから別に」
「はー!?まじかよ。どうしちゃったのサソリちゃん」
「セックスしなくても楽しいから。一緒にいて飽きない」
「まじでハマってんなー、旦那」
デイダラが感心したようにオレを見る。オレは無言でアジフライを咀嚼した。相変わらず美味い。
『サソリくん』
その時。話題だった人物が声をかけてきた。顔を上げると、美羽はニコニコしながら小さなカップを差し出す。
『デザート入れ忘れてた。プリン』
「あー、サンキュ」
「えー、プリンも手作り?至れり尽くせりじゃん」
『簡単だよ。今度みんなの分も作ってこようか?』
いいの!?食いたい!皆が盛り上がっている。オレはプリンとスプーンを受け取った。
「餌付けすんなよ。猛獣だぞ」
『猛獣?』
「食われるからやめとけ」
オレは真剣なのに、美羽は冗談だと捉えたようだ。ふふっと笑って、じゃあね、と去っていった。
アイツがよってくるといちいちいい匂いがする。香水つけている様子もないのに。謎だ。
「そういえば、今年の夏どうする?」
イタチが思い出したように言った。
イタチは有数の名家の息子である。桁違いの金持ちで、別荘を持っているのだ。夏休みはイタチの別荘に遊びに行くのがオレたちの恒例行事になっていた。
「今年も行っていいんですか?」
「勿論。もう準備は整ってるって昨日宿から連絡もあった」
「行く行くー。今年も遊び倒しだな」
「旦那も行くだろ、うん?」
オレはううん、と唸る。
「どーすっかな…」
「乗り気じゃないのか?珍しい」
角都の言葉に答える。
「……。会えなくなるから」
「ああー…美羽にな」
皆が納得する。
イタチの別荘は観光地付近で、ここから2時間ほどかかる。往復だと4時間。日帰りで行けないこともないが、移動に時間がかかって旨味もなくなる。普段は二週間程度滞在するが、その間美羽と会えなくなるのは今のオレには考えられなかった。
イタチは目を瞬かせる。
「そんなの、連れてくればいいじゃないか」
「ああ?」
「女子禁制ってわけでもなし。連れてくれば?」
皆も賛成のようだった。
「いいじゃん。女子がいた方が華やかだし」
「つってもなあ…アイツの夏休みの予定も知らねーし」
「それこそ聞けばいいじゃん、うん」
「…そもそも、付き合って1ヶ月そこそこで泊まりに誘うってどうなんだ?」
「なに?美羽につられてお前も純情になってるの?」
皆に笑われる。オレは無言で頭を掻くのだった。