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美羽の作った料理は野郎だけではなく、チビ二人にも好評だった。
美羽も喜んで貰えて嬉しかったようだ。多少変わった経緯であれ、美羽が自分の肯定感を高められるのであれば特段悪い時間ではなかっただろう。
すっかり夜も更けて気づけば20時。そろそろ美羽を家に返してやらねばならない。
いやに懐いた奏が先程からオレの膝の上に乗ってテレビを見ている。オレはとりあえず視線で美羽の姿を探した。ダイニングテーブルで早瀬と共に茶をすすっている。
あまりにも馴染んでいるその姿に、妙な危機感を覚えた。
「美羽。そろそろ帰るぞ」
『あれ。もうそんな時間?』
美羽が視線を時計に移している。オレは奏の肩を叩いた。
「降りろ。帰るから」
「えー。せっかくだから泊まって行ってよ」
「泊まるわけねぇだろ…」
「ほら、奏。迷惑かけんなって言ってんだろ」
早瀬が慣れた手つきで奏の身体を持ち上げる。オレはその隙を狙って身体をすり抜けさせた。
荷物を取りに二階に上がる。少し遅れて、美羽もオレの後ろに続いた。トントンと軽やかな足音。
『随分奏ちゃんと仲良くなったのね』
「ああ?」
早瀬の部屋の扉に手をかけた時、美羽が唐突に言った。オレはそのまま扉を押し開ける。
「見慣れない大人が珍しいんだろ」
『好きって言われてたじゃない』
「……」
言葉に微妙にトゲを感じる。視線を横に動かすと、美羽はそれに気づきにこっと笑った。しかし目は全く笑っていない。
「怒ってんの?」
『別に』
完全に怒っているやつである。オレの腕の下を潜り抜け美羽が早瀬の部屋に入った。
パタン、と後ろ背に扉が閉まる。電気を押そうと腕を伸ばすと、美羽がそれを阻止した。薄暗い部屋の中で月の光だけが視界の頼りである。
オレは首筋に手を当てた。何を要求されているのかよくわからない。
「なに?オレにどうして欲しいわけ」
『わからない?』
「わかんねぇ」
『……』
美羽が暗がりの中でトントンと自分の唇を叩く。ああ、とオレは納得した。キスして欲しいらしい。
自分でするのは良いが、要求されると変に気恥ずかしくなる。
「軽いやつ?」
『めちゃくちゃ濃厚なのがいい』
「…ちょっとだけな」
『沢山』
上目遣いでおねだりされてしまえばもうダメである。シーが美羽のことを精神的にビッチと言っていたことを思い出した。確かにその通りである。というかここ、早瀬の部屋なんだがいいんだろうか。しかしこの背徳的な空気感はなんとなく燃える。
壁に美羽を押し付けて、美羽の顔をまじまじと眺める。オレの一番好きなすっぴん。しかし、いつもと違うミントの香りがする。オレの嫌いな、男の匂い。
一気にスイッチが入った。唇を押し付け、隙間を裂くようにして舌を割り込ませる。美羽はオレの背中に手を回しながら舌を絡め返してきた。少し前まで処女だった純粋無垢な彼女も、今ではもう完全に淫乱な雌である。
それを寂しく思う反面、オレの手で確実に大人の女に成長していく彼女の姿に興奮もする。
はぁっ、とお互いの呼吸が闇に溶ける。暗がりの中でも、美羽が興奮しているのがわかる。ふ、とオレは笑った。
「キスだけで濡れちゃう?」
『…なんっ』
「お前、口が性感帯だよな」
ぺろ、と美羽の唇を舐めると美羽は身体を小刻みに震わせた。
コイツは清純そうな顔をして意外にエロいことをするのが好きだ。そしてそこが最強に魅力。オレだけしか知らない、彼女の本当の姿。
オレはそのまま美羽の太腿を持ち上げた。美羽が驚愕した面持ちでオレを見る。
『えっ、ちょっ、待って』
「誘ってきたのそっちじゃん」
色々とアレなのはお互い様である。ポケットから例のブツを取り出して手早くつけた。声出すとバレるからな、と一言。美羽は慌てて両手で口を覆った。
予想通り、キスだけで濡れ濡れである。というか、絶対に場の雰囲気もある。コイツも大概悪い女である。
以前のように気遣わなくてもスムーズに身を沈めることができる。0.01ミリの壁がもどかしい。その壁をどうにかして超えたくて、両腕で彼女の身体を強く抱いた。唇から、小さな呻き声。
声を抑えろと言ったのは自分なのに、我慢されると啼かせたくなる。
腰を引いて一気に奥を突く。その繰り返し。段々子宮が降りてきて先が触れる。美羽が堪らず首を横に振った。
『~もうちょっと、優しくして!』
「これの方が感じるくせに」
『…そうだけどっ、そうじゃっ…ああっ』
美羽がオレの胸に顔を押し付ける。快楽に飲み込まれているその様に優越感。オレから見えないと思って早瀬といちゃついていた罰である。ざまぁみろ。
どんなに他の男が美羽に好意を寄せようと、真髄を晒してもらえるのはオレだけだ。その事実に満たされる。
静寂に響く水音が心地いい。美羽が気持ち良くなるなればなるほど、オレは救われる。
『…っ、だめっ…ちゃう、』
「今日は早いな。他の男の部屋でされるのに興奮してる?」
かあっと美羽の顔が耳まで赤くなる。どうやら図星のようだ。
悪い子だな、と耳元で囁いた。それと同時に美羽の膣がキュウッと締まる。どこまでもドMな女である。言葉攻めにも弱いらしい。
はぁっ、はぁっ、と荒い息を吐き出している美羽。オレはその唇に再び己のそれを押し付けた。そして遠慮することなく腰を打ち付ける。
イッた後の美羽の膣は締りが更に良くなりかなり気持ちいい。できれば長く堪能したいが、この場では流石にそうはいかない。
早々にことを終えて、オレは美羽の体から自身を引き抜いた。へなへなとしゃがみ込む美羽を横目にさっさと後処理を済ませる。
美羽は胸元をくしゃっと握りしめながら唇をわなわなと震わせた。
『ありえない…ありえないありえない…』
「感じてた癖に」
『そうだけどっ』
「興奮したろ?」
そうだけどっ!ともう一度美羽が声を荒げた瞬間。
ドンっと扉が一度叩かれた。口を噤むオレと美羽。するともう一度、ドンっ。
硬直している美羽を尻目に、オレは部屋の扉を引いた。そこにいたのは不機嫌そうな漆黒の瞳。
シーは無言のまま部屋に一歩足を踏み入れた。と同時にパチンと電気をつける。視界が明るくぼやけた。
部屋にあった荷物を拾い上げ、再び扉に向かうシー。この間15秒もない。
シーは変わらず無言で、オレのことも美羽のことも一度も見はしなかった。そして、去りゆく前に一言だけ置き土産を残す。
「やっぱりお前ら嫌いだわ」
バタン!と閉じられた扉。バタバタと去っていく足音。
オレはふぅ、とため息を吐いた。調子に乗りすぎたことを少しだけ反省する。
しかし反省したところでバレた事実は変えられない。
オレは美羽を見た。彼女は扉を見つめたまま時間が止まったかのようである。状況をあまり上手く飲み込めていないようだ。というよりも逃避しているのだろう。
荷物を拾い上げ、オレは美羽に手を差し出す。美羽は真っ赤な顔をしてオレの顔を見上げた。
オレの大嫌いなミントの香りは、もう消えている。