03
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『絶対ラーメンがいい』
私の言葉に、サソリくんは困ったように首筋を掻く。私はもう一押し、ラーメン。と言った。
「…別にいいけど。もっといいものでもいいんだぞ」
『なんで?ラーメン最高じゃない。むしろラーメン以外の選択肢ないから』
サソリくんは日頃のお礼に私に何かご馳走したいらしかった。特にそんなのいらないのに。と遠慮したところで思いついた。ラーメンだ。ラーメンが食べたいと。
『どこか美味しい店知ってる?』
「…知らないこともないが」
サソリくんはスマホをいじりながら店を調べているようだった。やった、と私は呟く。
『女の子は絶対ラーメン屋行ってくれないのよね。イタリアンorイタリアンorイタリアン。パスタなんて家で簡単に作れるのに」
ああ、とサソリくんは納得した。
「確かにな。そんなに美味くもねーイタリアン大好きだよな女子は」
『なに?女の子と行ったの?』
サソリくんは無言である。どうやら行った覚えがあるようだ。
ふーん。なんだか面白くない。
「あっち」
サソリくんは私の腕を引いて歩き出した。
****
店の前に着くと、お客さんが3人ほど外で待っていた。どうする?とサソリくん。
『サソリくんがいいなら待ちたいな』
サソリくんはなにも言わず、列の後ろに並んだ。私も大人しくそれに続く。
『来たことあるの?』
「デイダラ達と何度か。ただいつも混んでるんだよな。今日は少ない方」
『そうなんだ。じゃあラッキーだね』
他愛もない話をしながら順番を待つ。サソリくんと一緒であれば、待ち時間も苦ではない。
「あれ?サソリ?」
その時だった。サソリくんが顔を上げる。私もつられて顔を上げた。
そこには、派手な美人が立っていた。メイクバッチリ、茶色い髪はロングでウェーブがかかっている。制服なのに大きなお胸が凄い存在感。T女学院の制服だ。お嬢様である。
サソリくんが小さな声でゲッ…と言った。
「ゲッとはなによぉ。感じ悪い」
「何の用だよ」
「たまたま見かけたからさ。……。」
彼女はチラッと私を見た。上から下にジロジロ。
「お友達?」
『…はい』
否定するわけにもいかず、私は頷いた。ふーん、と彼女。
「サソリ、ずいぶん趣味が変わったのね」
馬鹿にされているのだとすぐにわかった。確かに、彼女と私は大分タイプが違う。元カノなんだろうな。となんとなく察した。
「いくら芋っぽい子だからって、ラーメンて。手抜きすぎじゃない?ねぇ」
『いえ…私が食べたいって言ったので』
「ふぅん?やめといたほうがいいわよサソリは。遊ばれて捨てられるだけだから」
「捨てねーよ」
サソリくんが言った。私は無言でサソリくんを見る。
「いくら美羽がお前と違って可愛いからっていじめんなよ」
「は…?私よりその子が可愛いって?冗談でしょ」
「オレの好きな女だぞ。世界一可愛いに決まってる」
サソリくんは腕を組んで彼女を睨んでいる。
「片思い中なんだよ。余計なこと言うな」
「嘘でしょ。こんな子のどこがいいのよ」
「強いて言うなら全部」
彼女が、敵意のこもった目で私を見る。私はただただ俯いた。
「帰れ。お前に話すことは何もない」
「私、まだサソリが好きなの」
「お前が好きなのはオレじゃなくて顔と金だろ。お前にはもう付き合いきれない」
サソリくんはぐいっと私の手を引いた。私は抵抗することもできず、彼の後ろをついて行った。
****
連れて行かれたのはあの公園だった。クレープ屋さんは今日は休みなのか、シャッターが閉まったままだ。
「ごめんな」
早々にサソリくんが言った。
「嫌な思いさせて悪かった」
『ううん。サソリくんが悪いわけじゃないから』
沈黙が訪れる。サソリくんが困っているのがわかる。
『…あれが、前の彼女?』
サソリくんは答えない。それが肯定なのだということはもうわかっていた。
『可愛い子だね』
「……」
『サソリくん、本当はああいう子が好きなんでしょ。私はやっぱり、やめておいたほうがいいんじゃない』
サソリくんがふーっと息を吐いた。
「好きだったら別れてねーし。うまく行かないから別れたわけで」
『私ともきっとうまくいかないよ』
「はぁ?」
サソリくんがまた腕を組む。イライラした様子だ。
「なんでそんなことわかるんだよ」
『…釣り合わないから』
「またそれか。オレにどうしろって言うんだよ」
『……』
「釣り合う釣り合わないの問題じゃない。オレがお前のこと好きなんだ」
サソリくんは一歩私に近づいた。腰をかがめて私の顔を見る。
「お前さ。オレのことどう思ってんの?」
『…どうって』
「嫌いか?」
その言葉には迷わず首を振る。サソリくんもその答えは想定内だったようだ。
「じゃあ、好き?」
『……』
答えられない。サソリくんは更に私との距離を詰めてくる。
「オレはお前が好きだよ。他の奴らは関係ない。大事にするから」
いい?と聞かれて、私は首を横に振る。このままキスされたら、絆されそうな気がした。
サソリくんは私に誠実で、嫌だと言ったらそれ以上強要してくることはない。
サソリくんはそのまま私から顔を離した。今日は帰ろう。そう言われて、私は小さく首肯した。