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初めて彼女を見たときの印象は、”勿体ない女”。
顔は悪くないと思った。が、いかんせん背中が丸い。いつも俯いていて、何かに怯えているように見える。触れてしまえば壊れてしまいそうで、なんとなく近づけなかった。
話しかけたのは気まぐれだ。日付が違えば、彼女が立っている場所が違ったら。無視していただろうと思ってしまうくらいの偶然。
今考えれば、あの時声をかけたのが全ての間違いだったのかもしれない。
あの時彼女に話しかけなければ、彼女がこんなにも情に満ちた人間だとオレが知る機会はなかっただろう。くしゃっと笑う顔が無邪気で可愛いこと、サソリくん、と呼ぶ澄んだ声が耳に心地いいこと、触れた肌がとんでもなく柔らかくて滑らかなこと。知れば知るほど、彼女を好きになった。それは、自分でも恐怖を覚えるくらいに盲目的な恋だった。
必死に彼女の短所を探し、嫌いになろうとしたことがある。しかし、彼女の欠点をいくら知ろうが嫌いになれなかった。むしろその欠点すら愛しい、と思ってしまったらもう引き返せない。
美羽はオレに似合わない女だ、とずっと言われてきた。しかし、本当はオレが彼女に似合う男ではないのだということをオレは知っている。
美羽はいい女だ。決して今の状況に甘んじることなく、努力して自分の力で道を切り開ける才を持っている。美羽がオレを魅了して止まないのは、彼女が自立した一人の女性だからだ。それなのに、彼女の自立を面白く思っていない自分がいるという矛盾に気づいてしまった。
オレに依存して欲しい、足に枷をつけて檻の中に永遠に閉じ込めたい。そんなことをオレが考えていると知れば、彼女は何を思うだろう。それを知っても尚、ずっとオレのことが好きだと言ってくれるだろうか。
日に日に愛しさが募る反面、これ以上彼女を好きになることを怖いと思っている自分がいる。いつか彼女がオレから離れる日が来るならば、最初から出会いたくなかった。そう恨んでしまうくらいには、オレはもう彼女なしで生きていける未来を想像できなかった。