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夢小説設定
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クラスに戻ると、ゴミを纏めている美羽と目があった。大きな瞳に疑問の色が浮かぶ。
『あれ?お母さんは?』
「帰った」
『えっ』
嘘!と美羽。その様を見てオレは笑った。
「来て欲しかった?」
『そういうわけじゃないよ。ただ、珍しいなと思って』
絶対来ると思ってたのに。その言葉に曖昧に頷く。あまり掘り下げても良い方向には向かないだろう。
「飲み物代払ってくれたから。後でお礼言わないとな」
『うん…』
「美羽ちゃーん!こっち手伝ってもらっていい?」
クラスの女子が遠目から美羽を呼んでいる。ごめんね、行ってくる。とオレの元を自然に離れていく美羽。
彼女たちにはもう今までのような敵対したオーラはない。純粋にこの場を楽しめているようだ。文化祭のような特別な行事は、蟠りを溶かす魔法でもあるのだろうか。
…いや、違うな。あいつの努力した結果だ。
皆と談笑している美羽の姿を見て、複雑な気持ちを抱く自分を否定できなかった。真白さんとの会話を嫌でも思い出してしまう。
出会った当初の、彼女の頼りない雰囲気が懐かしい。弱気で、卑屈で、優柔不断でイライラしたこともある。
オレにべったり依存していたあの日の美羽は既にここにはいない。彼女はきっと、これから先一人で立って歩いていける。オレが隣にいなくとも。
できるなら、ずっとオレに依存していて欲しかった。オレがいないと生きていけないと思いこんでいて欲しかった。自分勝手だということは十分理解している。しかし心からの本音でもあった。
オレは、彼女を失うことが怖くて仕方がないのだ。
『サソリー!ごめん、こっち手伝って!』
美羽が笑顔でオレを手招きしている。オレは冷静な自分を装いながら、彼女の元に歩いていった。