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周りの女子が全員敵になったところで、私のやるべきことは変わらない。腐っても学級委員なのである。やることは沢山ある。
『ごめんね、ちょっといい?』
数人の女子の群れに声をかける。冷たい視線に気づかないフリをした。
『今度のホームルームの空き時間のことなんだけど…』
「勝手に決めてー。興味ないし」
あっさりと踵を変えされる。興味がない。そう言われてしまったらもう何も言えない。
『…そう。わかった。じゃあこっちで決めちゃうね』
わかっている。これで私が何かを決めたら、こんなの嫌だと文句を言われる。しかし、もうそれは致し方ないのだ。私が責められるのは決定事項である。
行事盛り沢山の二学期。目前に迫るのは文化祭で、その後は体育祭、そして11月には修学旅行。女子の協力が得られないのはかなり痛い。しかしなんとかするしかなさそうである。
お腹とは別に、胃がキリキリ痛む。しかし休んでいる暇もない。
「早瀬くん」
今度はクラスの真ん中で話しているサッカー部の群れに声をかけた。
なに?と少し驚いたように早瀬くん。
「文化祭の準備ってどうなってる?」
早瀬くんは文化祭実行委員である。今年は彼が中心で色々やってくれているようだ。
ああ、と早瀬くんは相槌を打った。
「内容の遂行自体は問題ないと思う。まあ、今年はそんなに派手なことやらないから。ただ、看板とか、装飾とかがまだかかるよ」
『装飾か…』
二年生は修学旅行があるため、飲食など準備が大変なことはやらない。しかし看板や内装などはどちらにしろ必須項目である。なかなか大変なことが残っているな、と憂鬱な気持ちになった。
「一条さんがやってくれるはずだったんだけど。あんまり上手くいってないみたいなんだよね」
女子はひかりちゃんが実行委員だったはずである。わかった、と私。
『確認してみるね』
「うん…月野さん、大丈夫?」
『え?』
「顔色悪いけど。調子悪いんじゃない?」
色々ありすぎて自分の調子が悪いのかすらわからない。私は手を横に振った。
『大丈夫。大したことないから』
「……そう?ならいいけど」
早瀬くんと挨拶を交わし、今度はひかりちゃんを探す。
すると、教室の隅でぼーっと窓の外を眺めているひかりちゃんの姿が。
一応、女子の視線がこちらに向かっていないことを確認してからひかりちゃんに声をかけた。下手に私と話をすると彼女も女子から敵認定される恐れがあるからだ。
『ひかりちゃん』
「……美羽ちゃん。なに?」
素っ気ない態度ではあるものの、話はしてくれるようである。
『文化祭の準備ってどうなってる?』
「クラスTシャツは発注かけたし、内装は半分くらいできてる。ただ看板が、なかなか協力してもらえなくて」
ひかりちゃんがチラッとクラスを確認している。やはり彼女も私と話すことを気にしているようだ。
なるべく短く要件を伝えるよう努める。
『次のホームルーム、空き時間だから。文化祭の準備に回そうか』
「それは…助かるけど。いいの?」
私は首肯する。
『文句は言われるだろうけど、あんまり時間ないから。やってくれる人に協力してもらおう。放課後よりはハードル低いだろうから』
「……」
ひかりちゃんはなにも言わない。私は、じゃあそういうことで、と踵を返そうとした。
「美羽ちゃん」
すると、ひかりちゃんに腕を掴まれる。
ひかりちゃんの顔が、あの日のように強張っていた。
「…ごめんね」
『……』
なんとなく、文化祭のことを謝られているわけではない気がした。しかしそれには気づかないふりをする。
『いいよ。困ったときはお互い様だから。文化祭頑張ろうね』
ひかりちゃんは、何も言わなかった。