02
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サソリくんが、私のこと好きって。それこそ何か、間違いなんじゃないだろうか。
いつも通りの下校時刻。いつもは下駄箱でなんとなく私を待っている彼。
「美羽、帰るぞ」
『!?』
今日は教室で声をかけられた。びっくりして固まる。
サソリくんはなんでもないように私を見ていた。
『…なん!?』
「隠す必要がなくなったから。行くぞ」
サソリくんはそう言って踵を返す。癖で、その背中を追ってしまう。
頑張ってね、と後ろ背に皐月に声をかけられた。頑張るって、何を頑張ればいいの!
****
いつも通りの通学路。
サソリくんと私は無言で駅までの道を歩いた。駅までって、こんなに遠かったっけ。一刻も早く駅に着いてほしい。
「美羽」
するとサソリくんが私の名前を呼んだ。反射で顔を上げる。
「寄りたいところがある。付き合ってくれるか?」
『寄りたいところ?』
サソリくんにしては珍しい提案である。特に断る理由もなかったので、私は首肯した。
いつもの道を反対側に折れ、細い道に入っていく。あれ以来裏道に入ったことはないけれど、サソリくんと一緒であれば特に怖くなかった。
道を抜けると、なんてことはない。そこにあったのは公園だ。小さなクレープ屋さんがある。
サソリくんは私をベンチに座るよう促して、自身はクレープ屋に向かった。クレープが食べたかったのかな。でも、サソリくんって甘いのそんなに好きじゃないよな、と。
しばらくすると、サソリくんが両手にクレープを持ってやってきた。一つを私に差し出す。ありがとう、と受け取った。
『クレープ、好きなの?』
「いや、そういうわけじゃないが。ここのは甘すぎないから食える」
サソリくんはガブっとクレープにかぶりついた。私もそれにならってクレープにかぶりつく。確かに甘すぎず美味しい。
うーん、と考える。
『これ、どうやって作るのかな?』
「作るつもりかよ。いいだろ、ここで食えば」
サソリくんが久々に笑顔を見せた。ドキっとする。
『そんなにサソリくんを魅了するクレープってどう作るのか気になって』
「魅了してんのはお前だろ」
『は?』
「クレープなんて、お前と一緒にいられる時間を引き伸ばす言い訳でしかない」
サソリくんが片手で私の太腿を撫でた。ドッドッドッ、心臓が暴れる。
『なんっ…いきなりっ』
「モードを変えたんだよ」
『モード?』
「友達モードから、女を落とすモードにシフトチェンジ」
サソリくんはそう言って、私との距離を詰めた。ただただ混乱する。
サソリくんの手が、私の太腿を外側から内側に撫でる。微妙にスカートの中に手を入れられ、ゾワゾワした。
『…からかわないでっ』
「からかってねーよ。ずっと抱きたかった」
『抱き…ッ!?』
サソリくんを見る。彼はふ、と笑った。
「お前のこと、ずっとエロい目で見てた」
『なっ…』
「無防備で、可愛くて。何度も襲いたくなったぞ」
言葉が出ない。恥ずかしくて、何も言い返せない。
サソリくんは私の様子を見て、そっと太腿から手を離した。
「…ここまで押すとやっぱりダメか」
『…?』
「いや。どこまで言ったらいいのかわかんねんだよお前。落としたいんだけど。どうやったら落ちる?」
聞かれて、私は首を横に振った。
『そんなこと言われても…わかんないよ』
「……」
『第一、好きって、本気なの?』
サソリくんはふぅ、と息を吐いた。
「冗談であんな恥ずかしいこと誰がいうかよ」
『だって…サソリくん、そんな素振り一度も…』
「お前が鈍いだけだろ」
ガブっとサソリくんはクレープにかぶりついた。
私は食べる気にならず、じっと手中のクレープを見つめる。
『…正直、サソリくんのことそういう目で見たことなくて』
「だろうな」
サソリくんは動揺する様子がなかった。それに、と私は続ける。
『私とサソリくんじゃ、釣り合わないよ』
「……」
『サソリくんは私にとって天の上の人なの。カッコよくてなんでもできて。だから』
サソリくんが、私の髪を耳に引っ掛ける。頬に手を添え、まじまじと顔を見つめてきた。
「美羽。可愛い」
『!?』
「オレの中でお前が世界一可愛い。釣り合う釣り合わないとか、関係ねえから」
なんだ、これ。どうしたらいいんだ。誰か。
サソリくんは硬直している私を見てまた笑った。そして耳元に唇を寄せる。
「これから好きにさせる」
『……』
「絶対にオレのこと好きにさせるから。だから、お前の初めて、オレにちょうだい」
目、閉じて。言われて、それ以上考えられなかった。
唇に、サソリくんのそれが押しつけられる。頑なに引き結ばれていた私の唇をこじ開けるようにサソリくんの舌が侵入してきた。
ビクッとして、思わずサソリくんのシャツを掴んでしまう。サソリくんはそれに応えるように私の身体を優しく抱いた。ぼた、と私の手からクレープが落ちる。
初めて男の子とキスをした。サソリくんのキスは、強引で。でもとても優しくて、甘いキスだった。
舌を何度も吸われ、甘噛みされて腰が溶けそうになる。相手がサソリくんだと思うと、何をされてもいい気になってしまった。これは私もサソリくんが好きだということなんだろうか。
「美羽。好きだよ」
キスとキスの合間に何度も囁かれた。
私は何も言えず、ただサソリくんの告白とキスを受け入れていた。
****
『保留!』
美羽から出た言葉は、これであった。
オレは普段よりゆっくり歩きながら舌を打つ。
「あんなに気持ちよさそうにしてたのに保留かよ」
『だ、だって、もし付き合ったら、それ以上もあるわけでしょう』
「ああ?」
え、エッチとか。と美羽は小声で言った。
オレは失笑した。
『無理だもん。無理。あれ以上は無理』
「なんでだよ。気持ちいいぜ。ヤッてみるか?」
『無理!絶対無理!』
断固拒否である。こりゃあ処女卒までは時間がかかりそうだ。
「別にそういうことが目的じゃない。単純に好きだから。お前を他の男にとられたくない」
『そういう予定はないから…そこは安心していただいて』
「どうだか」
美羽だってモテるのだ。いつどの男が彼女を口説きにきてもおかしくはない。
しかし押しすぎても引いてしまうだけだ。ここは堪えるしかないだろう。
「わーったよ。待つ。だからなるべく早くオレのこと好きになれよ」
『好きになるのは決定なの…?』
「当たり前だろ。むしろなんで好きにならねぇんだ」
『そんなこと言われても…』
美羽は何やらもじもじしている。うぶ過ぎる。これだから処女はめんどくさい。けれども、そこが可愛いと思ってしまう。
「これからは、遠慮せずガンガンいくから。覚悟しとけよ」
オレの言葉に、美羽は顔を真っ赤にさせて俯いた。