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30分程度待ち、私達は店内に案内された。
ソファーと椅子が二脚。椅子に座ろうとすると、サソリに静止される。
「女がソファーだろ」
その言葉に素直にありがとうと言った。サソリは意外にそういうところを気にするタイプである。
デイダラが立ったまま私たちの様子を伺っている。恐らく私たちが座ってから自分が座るつもりなのだろう。相変わらず気遣い屋だ。
私がソファーに腰掛け、サソリが目の前の席に座る。デイダラが目を丸くした。
「隣座れば?うん」
「いや、オレはここでいい」
サソリも微妙にデイダラに気を使っているようだった。デイダラはそれ以上何も言わずにサソリの隣に腰を下ろす。
それぞれメニューを眺める。パスタとケーキとドリンクで2800円。予想通りハイソなお値段である。
「パスタに1500円…アホらしい」
『そういうこと言わないの!』
「コスパ気にする奴はこんなとこ来ちゃいけねーんだよ、うん」
デイダラの言葉に失笑するサソリ。
「コスパなんて言葉を出したら女となんて付き合えないぞ」
「うん?」
「一番コストパフォーマンスが悪いのは女だ。見てみろ。このカフェにはオレとお前しか男がいない」
ぐるっと見回してみる。確かに男性の姿は見当たらない。
「男があくせく働いている中浪費をするのはいつだって女。男が経済を支えて女が経済を回すのがこの世の中なんだよ」
サソリの言葉に反論する。
『私はちゃんと経済を支えるよ。会社員になって働くもん』
「どうだかな。まあ期待はしないでおく」
サソリはオレはボロネーゼパスタとアイスコーヒーでいい。とメニューを置いた。どうやらケーキはいらないようである。
うーん、とデイダラは唸る。
「まあ言ってることはわからなくねぇな。こういうカフェもブランドものも大体女がターゲットだし、うん」
『そう言われちゃうとなぁ…』
「どうしても妊娠出産の間は休まなきゃいけねぇしな、女は」
「それなんだよ」
サソリが用意されている水に口をつけながら指を刺す。
「男は子孫を残すためだけにせっせと女に貢ぐんだよ。コストパフォーマンスは壊滅的だ。しかしこの世はそれでも成り立っている。人類最大の不思議だな」
私は首を捻る。子孫かぁ。
『サソリって子供欲しいの?』
「いや、特には。お前が欲しいなら考える程度」
相変わらずサラッと凄いことを言う人である。しかし、もし子供がいらないなら先程の話は成り立たなくなる。
『デイダラは?』
「オイラは絶対欲しい。男の子とキャッチボールしてぇ、うん」
デイダラは全く悩まなかった。ふぅん、と私。
「そういう美羽は?」
『うーん、考えたことないのよねぇ…』
腕を組んで暫し考える。その間にデイダラが店員さんを捕まえ、注文を済ませた。
子供かぁ。結婚するかもわからないのに考えるのもあれだけれども。
『やっぱり欲しいかなぁ。できれば二人』
「へえ、二人」
デイダラがチラッとサソリを見る。サソリは我関せずの表情。
『一人っ子だから。兄弟に憧れがある』
「兄弟ねー。イタチとサスケみたいな?」
イタチとサスケくん。例を出されると一気に自信がなくなった。
『あの二人を育てるのは…なかなか厳しそうね。ミコトさん凄いわ…』
確かに、とデイダラが笑う。サソリからは全くコメントがない。
「家族四人養うなら頑張らなきゃいけないじゃん。旦那」
デイダラがサソリに話を振る。私はそこで初めて慌てた。
『いや…わかんないよ!?将来のことは』
ねっ!?とサソリに同意を求める。サソリは頬杖をついて何やら考えている。
「女以上にコスパが悪いのが子供だな。一人につき三千万円」
『三千万!?』
「そ。私立に行けばもっと高いぞ」
三千万。リアルな数字を出されるとビビってしまう。
サソリはぷっと笑った。
「中出し一回につき三千万か。高い女だな、お前も」
『そういうこと言わないでよ…』
そうこう話しているうちにパスタが運ばれてきた。サソリはボロネーゼ、私はジェノヴェーゼ、デイダラはカルボナーラ。3人一緒に手を合わせて、食べ始める。
「風俗いきゃもっと安いのにな。男女交際になると高くつく」
『えっ、風俗行ったことあるの?』
「あるわけねーだろ。わざわざ行かなくても相手いるし」
今度はデイダラが我関せずの表情である。彼は意外に下ネタを好まないタイプだ。
パスタをくるくると巻きながら、ふぅっと溜息。
『現実って考えれば考えるほど嫌になるものなのかも…』
「旦那が現実主義すぎんだよ。将来なんてふわっとしとけばいいじゃん。子供何人欲しいねーなんてカップル間でよくある夢物語だろ、うん」
「オレは守れない約束はしない主義でな。安易にポンポン将来のこと語りたくねぇんだよ。そもそも結婚するかすらわからねぇし」
なんともサソリらしい発言である。というかお前、とサソリが私を見た。
「その前に自分の股の心配をしろ。アレ一本で苦しんでるんだから。そこから赤子捻り出せんのかよ」
「ぶふっ!」
デイダラが盛大に吹いた。お手拭きを渡しながらサソリを睨む。
『だから!そういうこと言わないでよっ』
「現実的な話だって言ってんだろ」
そんな現実考えたくない。ムスッとしながらパスタを一口。
『私もしかして交際相手間違ってるのでは…?という気にすらなるわ』
「は?こんな良い男他にいねぇだろうが」
『サソリは口開かなきゃ良い男なのになぁ…』
ふ、とサソリが怪しく笑う。
「下のお口開いてる時が一番良い女だぞ、美羽ちゃんは」
ここまで人をぶん殴りたくなったのは人生で初である。口をナプキンで拭いながら冷静を装う。
『サソリ…後で覚えといてよ』
「なんのことだか」
サソリは変わらずニヤニヤしている。なんだか様子が変だ。サソリは本来、そこまで饒舌に下ネタを話すタイプではない。しかもデイダラのいる前で。なんだか、デイダラを意識してわざわざ口に出しているような印象を受ける。
そういえば、と私は話題を変えた。
『二学期は修学旅行も文化祭も体育祭もあるから。かなり忙しそうね』
「まあそうだな。文化祭実行委員も大変なんじゃね?うん」
文化祭実行委員。今年は早瀬くんと割と大人しいポジションにいる女子である。
文化祭。嫌でも去年のことを思い出す。
『今年は絶対絶対絶対ミスコンは出ないからね』
「なんで?クラスで一番お前が可愛いじゃん、うん」
『冗談言わないでよ…』
去年のミスコンでもかなり痛い目にあったため、もう2度とお断りである。そもそも、たいして可愛くないのにミスコンなんて出ても虚しいだけだ。
「イタチは去年ミスターで優勝してるから。殿堂入りして出場はなしだな、うん」
『男子は誰が出るの?サソリやるの?』
「オレはそういうの苦手なんだよ。早瀬出しときゃいいんじゃね?」
かなり適当である。うーん、と私は悩んだ。
『確かに早瀬くんもイケメンだけどね』
「…は?」
サソリが座った目をする。地雷を踏んだのだとすぐに気付いた。そうじゃなくて!と慌てる私。
『一般的な話ね』
「一般的ねぇ…」
サソリが最後のパスタを口に押し込む。私はまだ半分以上残っているのに、男子二人はもう既に食べ終えている。
「お前早瀬の顔どう思う?」
「うーん…別に。普通じゃね?ただ女子受けしそうだとは思う、うん」
「だよな。イケメンではないよな」
男子二人は辛口である。
『そう?じゃあサソリがカッコいいと思う顔ってどんな顔?』
「オレ」
『はいはい。デイダラは?』
サソリに聞いても無駄だと悟り、デイダラに話を振る。デイダラはうーん、と悩む様子を見せた。
「旦那とかイタチは確かにイケメンだと思うな。飛段角都は好きなタイプが分かれそうな感じ。鬼鮫は性格が女子受けする、うん」
なかなか的確な評価である。私はパスタを一口。
「美羽は誰の顔が好きなんだ?」
『………』
無言の私に、サソリが反応する。
「何故オレだと即答しない…」
『えっ!?いや、サソリはカッコいいと思うよ!ただ…』
「ただ?」
パスタを飲み下して、水を一口。
『タイプは違うんだよ…』
「タイプ?」
『……イケメンと、好みの顔って違うじゃん』
男子二人はピンとこない顔をしている。私は続けた。
「可愛い子と必ず付き合いたいかって言ったら違くない?」
「いや、可愛かったら付き合いたい、うん」
「男は下半身と直結するよな」
わかっていただけないようである。私はため息をついた。
『…絶対に気分を害させるだろうから言わない』
「なんだよ。ここまで来て。言えよ」
「気になる、うん」
やっとパスタを食べ終え、私は口を拭った。
『…怒らない?』
「場合による」
『じゃあ言わない』
「まあまあ。いいじゃん、教えて、うん」
少し考えて、私は小さな声で言った。
『……い』
「なに?」
『……。マダラせんせい』
えっ!?と二人が驚愕している。だって!と早速言い訳の準備をしている私。
『あくまで顔ね!カッコいいんだもん』
「予想の斜め上だな。なに?年上好きなの?うん」
『そういうことじゃなくて…ああいう、黒髪で、キリッとした顔が好きなのよ』
「じゃあうちは顔が好きってこと?うん」
うちは顔。それはイタチもサスケくんも含まれる。正直言って、ドストライクな顔である。今まで言っていなかったけど。
みるみるうちにサソリがしかめっ面になっていくのがわかる。だから言いたくないって言ったのに。
「マダラって…お前の両親と同じ歳じゃねえか」
『いやだから…別に付き合いたいとかそういうわけではなく』
「イタチとサスケの名前を出さなかったところを見るとガチだよな、うん」
デイダラが笑っている。サソリはもう完全に不機嫌である。
飲み物とケーキが運ばれてきた。楽しみにしていたケーキなのに、目の前のサソリを見ていると美味しさが半減してしまう。
デイダラはうま!と声をあげていた。
『ごめんって。怒らないでよ』
「別に怒ってねーよ」
完全に怒っている。私は桃のタルトを切り、サソリの口に突っ込んだ。
『私は見た目より中身を重視するんです!第一マダラ先生が私みたいなガキンチョとどうこうなるわけないでしょ』
サソリは無表情で口をモゴモゴさせている。まずいと言わないあたり、ケーキはそれなりに美味しいようだ。
半分食べ、デイダラとお皿を交換する。サソリがその様を見てギョッとした。
「なに自然に交換してんの?」
『だってこの方が二つの味楽しめるじゃん』
「深い意味はねーよ、うん」
デイダラは苺のタルトである。
一口。こちらも美味しい。
サソリは呆れたような顔でアイスコーヒーを啜った。
「お前ら本当に仲良いよな」
「旦那と美羽には負けるよ、うん」
デイダラがさらっと流す。私は今度は苺をサソリの口の前に差し出した。サソリが大人しく口を開ける。
リアクションがない。つまりそれは美味しいということである。
あっという間にケーキを平らげ、私たちは席を立った。
「並んでた時間より店の中にいた時間の方が少ないな」
『いいじゃない。美味しかったんだから』
私の言葉に、まあお前がよかったならそれでいいけど。とサソリは小さく呟いた。