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夢小説設定
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長時間パソコンを見つめていたため、目が疲れた。
眉間を押さえながらふぅと息を吐く。そこで気がついた。先ほどまで小太郎と戯れている美羽の声が聞こえていたはずなのに、今はオレたちのキーボード音以外は無音だ。
チラッと視線を動かすと、畳の上で美羽と小太郎が無防備に寝ていた。そしてちょうどその時、電話をしに別室に行っていたマダラが帰ってきた。オレと同じで寝ている美羽と小太郎に目を向けている。
マダラは無言で近くの戸棚から薄い毛布を取り出した。
そのまま掛けるのかと思いきや、マダラはつかつかとオレに寄ってきて毛布を突き出した。
「掛けてやれ」
オレはそれを受け取って立ち上がる。その動きを見て、デイダラも美羽が寝ていることに気付いたようだ。
縮こまっている美羽に毛布をかける。そっと彼女の二の腕に触れてみるとひんやりと冷たかった。オレたちにとっては快適でも、彼女にとっては寒いのだろう。体感温度は男女で差異がある。
「一度あげるぞ」
25度設定だったエアコンの温度を上げる。デイダラもマダラも何も言わなかった。
オレは再びパソコンの前に腰掛ける。マダラがチラッと画面を確認した。
「ほう、よくできているじゃないか。さすが秀才だな」
「秀才かどうかは関係ねぇだろ。エクセルなんて」
素っ気ない態度のオレを、マダラが笑う。
「随分嫌われたものだな」
「…別に嫌ってはいない」
マダラは机の上に頬杖をついている。相変わらず顔には余裕を貼り付けたままだ。
「何を勘違いしてるのか知らんが、オレと美羽は何もないぞ」
「…当たり前だろうが。何かあったら困る」
デイダラが横目でオレを見ている。奴も以前のイタチの発言を思い出しているのだろう。
マダラが美羽を気に入っているから気を付けろ、という話だ。
マダラはふぅっと息を吐いた。
「流石に未成年はな。手を出したら警察沙汰だぞ」
「逆を言えばアイツが二十歳過ぎたら手出すってことか?」
オレの質問にマダラは何も答えない。ジロッと睨むと、マダラは小さく笑った。
「考えたことはないが。それはアリかもしれんな」
「……」
睨み続けているオレに、冗談に決まっているだろう、とマダラ。
全然笑えないんだが。
「そういえば先生、美羽の両親と同級生なんスよね?」
「そうだが」
「いくつですか?うん」
「37歳」
そこで初めて、真白さんと真広さんの年齢を知る。真広さんは年相応から若干若いくらいだが、真白さんは37歳には全く見えない。あのキャピキャピ具合からして彼女は永遠のティーンエイジャーである。
「21で産んでたからな。流石に驚いたぞ」
昔を懐かしむようにマダラは言った。21歳。現在のオレたちの5年後。皆まだ学生の頃合いだ。確かに早い。
マダラがチラッと美羽の様子を確認している。美羽は起きる気配がない。
「皆猛反対でな。堕ろせ堕ろせと言っていたんだ」
「……」
「しかし春島の意思が固くてな。堕すくらいなら死ぬと言って聞かなかった」
真白さんの学生時代。ふわふわした挙動からは想像できないが、やはり彼女にもそれなりに色々あったようだ。マダラがふっと笑った。
「春島と月野に感謝しろよ。アイツらの血の滲むような努力がなければ美羽はここにはいない」
「……」
「親に縁を切られて駆け落ち同然で結婚したから。春島は子供を見ながら内職で稼いで、月野は法律の勉強をしながら深夜バイトに明け暮れていた」
「……」
「あんななりでもすごい奴らだ。美羽の妊娠中から幼少期、二人ともほとんど寝てないんじゃないか?とても真似できない」
まあ、したくもないが。マダラは再び目の前の書類に目を落としている。雑務が多いな、と渋い顔。
オレとデイダラは、突然明かされた昔話になんとなくコメントできずにいた。
それと同時に、ちゃんと避妊しなさいと口酸っぱく言っていた真白さんのことを思い出す。からかいの意味合いもあるが、自分の経験を踏まえての発言だったのだろう。
今オレたちに子供ができたら、それはあまりにも早すぎる。
「一つ聞いていいっスか?」
沈黙を破ったのはデイダラである。なんだ?とマダラ。
「美羽の母ちゃんのこと、どう思ってるんです?うん」
突っ込んだことを聞くな、と冷や汗をかいた。しかしマダラは動揺の様子を見せない。
「どう、と言われてもな。変な奴だと思っている」
それは確かに同意である。マダラはまた小さく笑った。
「お前たちのような関係だよ」
「?」
「春島が美羽、月野が赤砂、オレがお前」
「……」
「三角関係ってやつだ」
オレとデイダラの動きが同時に止まる。デイダラはみるみるうちに頬を紅潮させた。怒りと恥ずかしさが混じったような顔だ。
「全然違います!オイラと美羽は友達ですから、うん」
「でも抱きたいんだろう?」
マダラの言葉に、デイダラは息を詰まらせている。オレはパソコンを見ながらふぅっと息を吐いた。
「見てりゃ誰にでもわかるぞ」
「えっ……」
「まあ本人は気付いてないだろうけどな」
チラッと美羽を確認するも、彼女はまだまだ夢の中である。デイダラはそのまま黙り込んでしまった。
その様を見ながらマダラ。
「お前もオレと一緒でまあまあいい線いってると思うがな。残念ながら相手にされないんだよ」
「全く相手にされなかったのか?マダラ」
オレの言葉に、首肯する。
「わかるだろう。アイツらは自分が主役だから。他の奴らは全員モブなんだよ」
「……」
毎日宝塚のような二人である。言っていることはわかる気がした。
それと同時に、美羽はどうなんだろうな、と考える。美羽と真白さんはタイプが違う。どちらかというと自分をモブだと思っている彼女は、デイダラからの好意を知ったらどう思うのだろうか。
「…まあ、お前らの場合は四角関係と言ったほうが正しいかもしれんが」
黙っているオレたちに、マダラは言った。四角。もう一人が皐月だということをオレはすぐに理解した。が、デイダラは首を傾げている。
「四角って…早瀬のことか?うん」
確かに早瀬は美羽に好意を寄せているが、奴はモブの中でもモブである。美羽の眼中に入っていないのは明らかだ。
オレはふう、とため息をついた。
「雑談はそれくらいにしておけ。終わらねーぞ」
「オイラは大体終わったぞ、うん」
「じゃあこっちを手伝えよ」
パソコン画面を奴にも見える角度にする。デイダラは面倒くさそうに、しかし大人しくオレの指示に従った。
マダラもそれ以上は何も言ってこなかった。