23
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
期末テストが終わって仕舞えば、後は夏休みが来るのを待つだけである。
「今年の夏は何しようかねー」
いつものメンバーで屯しつつ、夏休みの予定をすり合わせる。毎年恒例はイタチの別荘での旅行だ。しかし、今年は問題が発生した。
「まじケチ。旅費くれねーとかよォ」
「仕方ないさ。今年は修学旅行もあるからな」
二学期には沖縄への修学旅行が控えている。その旅費が高額なため、イタチの別荘への交通費NGをくらったメンバーが何人かいたのである。話し合った末、穴が開くくらいなら今年はやめよう、という結論に達した。
「美羽はどうするの?」
皐月の言葉に答える。
『勉強の予定だよ』
「えー。たまには遊ぼうよ」
『勿論それはいいけど』
ふっ、と私は笑う。
『遊びもいいけど皆も勉強した方がいいよ』
「はー?」
『ほら、将来のことって大事じゃない?一時の楽しみより先を見据えた方がいいというか』
皆が訝しげに私を見ている。
「ちょっと前まで旦那とイチャイチャしたいだのなんだの喚いてたのはどこのどいつだよ、うん」
『そんなことあったっけ…』
「さっすが非処女は言うことがちげーな」
『ぶっ!』
吹いた。思い切りサソリを睨む。
『だからなんでなんでも喋るのよ!』
「喋ったというか、バレたというか」
「言われなくてもわかりやすすぎだから」
飛段がつまらなそうに頬杖をつく。
「いいよなお前らは。二人一緒にいれば基本的に満足だろ」
「じゃあお前も彼女作ればいいだろ」
「彼女ねぇ…」
私を見ながら、うーん、と悩む仕草を見せる。
「めんどくさいからオレはいいわ」
『ちょっと!なんで私見ながらめんどくさいって言うのよ!』
「コイツよりめんどくさい女なんて滅多にいねぇから安心しろよ」
『どういう意味よ…』
サソリはあっさり答える。
「お前めちゃくちゃめんどくせぇじゃん」
『ひど!でもそのめんどくささが好きなんですよね?』
「調子乗んなよ。それ以上めんどくさくなったら捨てるからな」
「忠犬ハチ公主人と別離の危機、うん」
「ははは!忠犬ハチ公!確かにそっくり!」
忠犬ハチ公って。
言い返そうとした時、ポンっと頭に軽い衝撃。振り返ると、そこには出席簿を持ったマダラ先生が立っていた。
「お楽しみ中悪いが。お前らには仕事がある」
『仕事?』
マダラ先生は数枚書類を取り出し、私に渡した。するとそこには修学旅行計画表の文字。
すっかり忘れていたけど、私とサソリは修学旅行実行委員なのである。
サソリが私の手元の書類を覗き込む。
「班決め、自由行動時の行先決め、部屋割り…まではいいとして。しおりの作成、ホテルと飛行機の確認、予算配分。こんなところまでオレたちがやるのか?普通教師の仕事じゃねえの?」
サソリの言葉に、マダラ先生は首肯する。
「そうだが。せっかくお前たちがいるんだから任せる。社会経験だ、社会経験」
それって絶対マダラ先生が面倒なだけですよね。
そのまま踵を返そうとしたマダラ先生の腕を慌てて掴む。
『さすがにここまでの重大任務は私たちだけじゃ無理です。手伝ってくださいよ』
至極めんどくさそうな顔をするマダラ先生。
「手伝うと言っても。夏休みに入るだろう」
『じゃあなんで今言い出したんですか…』
「当然だろう。忘れてた」
『忘れてた!?』
愕然としていると、マダラ先生はフンと鼻を鳴らした。
「生徒の娯楽に興味がないものでな」
『いやいや。ちゃんと仕事してくださいよ』
「だから今している。お前らに任せる」
拉致が開かない。どうしよう、と思っていると私の手元の書類を覗き込みながら皐月が言った。
「班決めと部屋割りは今日できるんじゃない?ホームルームの時間使っていいですよね」
皐月の言葉にマダラ先生は答える。
「それは構わないが」
「行き先に関しては沖縄の有名な観光名所いくつかピックアップ。それはすぐ調べられるし」
『……』
「しおりはエクセルのできるパソコンとプリンターないと無理ね。マダラ先生の家ってパソコンとプリンターありますか?」
「まあ、あるにはあるが」
「ホテルと飛行機の確認は電話すればいいし。予算配分は行き先決まってからね」
ほえー、と私は感嘆の声を漏らした。
『凄いね、皐月。そんなテキパキと』
「やることが多いだけで一つ一つのことは簡単よ。なんとかなるでしょ」
和気藹々としている私たちに、マダラ先生は微妙な表情である。
「ちょっと待て。まさかオレの家を使うつもりか?」
「だってプリンターないんですよ。サソリの家ないもんね?」
皐月の言葉に、サソリは同意する。
「プリンターなんて使わねえからな」
『マダラ先生ってどこに住んでるんですか?』
「生徒にそんなプライバシーを晒すつもりはない」
「星海のあたりですよね、確か」
『えっ!星海!?高級住宅街じゃないですか』
「イタチ…余計なことを言うな」
星海かあ、と私。
『先生、星海にある有名なフルーツタルトのお店知ってますか?』
「知ってるも何も。目と鼻の先だ。入ったことはないが」
『えー!いいな!行きたいです!』
私は全力で挙手した。サソリが呆れた目で私を見ている。
「ケーキ食いたいだけだろ…」
『それはそれ。これはこれ。先生のサボった分請け負うんでケーキ屋連れてってください』
マダラ先生はかなり嫌そうである。
しかし、自分の残した仕事に今更手をつけるのも嫌なのだろう。
マダラ先生が腕を組みながらふぅっとため息をついた。
「…まあそこまで言うなら。来てもいいぞ、美羽」
『わーい』
喜んでいる私に、サソリがムッと眉を寄せる。
「オレも行く」
『そりゃそうでしょ。サソリも修学旅行実行委員なんだから』
「私も行くー」
「オイラもー」
「オレもー」
「ちょっと待て。人数が多すぎる。全員は無理だぞ」
ええー、と皆。何人くらい入れそうなんですか?と私。
マダラ先生は顎に手を当てて考える仕草を見せる。
「無駄に広いから入れるには入れるが。同居人がいてな」
『えっ!?同居人!?』
彼女!?それとも奥さん!?
狼狽ている私に、何事もないようにマダラ先生は続ける。
「無駄に緊張させたくない。3人が限度ってところだな」
「えー?3人?」
「美羽とサソリは確定として。あと1人だな」
「ここは平等にジャンケンでいこーぜ」
飛段の言葉に、皆は同意して拳を合わせるのだった。