23
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
期末テストが終わり、成績返還が行われた。
『サソリ!』
美羽が笑顔でオレに近づいてくる。その様を見ただけで、いい結果なのだろうということは容易に察することができた。
じゃーん、と言いながら美羽は成績表をオレに手渡した。
『凄いでしょ?』
紙に記された6の文字。目標達成どころかそのさらに一つ上である。
オレは最早呆れながら美羽の顔を見た。
「…どうしてこんなに成績伸びんだよ」
『それはー…』
美羽がオレのネクタイをグイッと引っ張る。
『彼氏に愛されてるからですかね?』
「……」
無言でいるオレに、ニヤニヤ顔の美羽。
『今日、皐月とスタバだから。サソリも息抜きしてきてね』
「おー…」
美羽はオレの元からあっさりと去っていく。るんるんの後ろ姿を見送っていると、珍しく神妙な面持ちの飛段に肩を叩かれた。なんだよ。とオレ。
「最近さぁ、美羽ちゃん綺麗になったよな」
『…そうか?前から綺麗だろ』
オレがいうのもなんだが美羽は細部の造形がもともと美しい。脚と指に至ってはもはや芸術作品と言っても過言ではない。
オレの言葉に、飛段はそういう意味じゃなくて、と返す。
「女らしくなったというか、大人になったというか」
「……」
「処女臭さが抜けたというか」
飛段の言いたがってることを早急に理解する。オレが顔を上げると、知らない間に皆がニヤニヤ顔でオレのことを見ていた。
ふぅ、とため息をつく。
「……お前らそういうことに関してだけはほんっとに察しがいいよな」
「どうなの?実際」
「そう言われても…」
あの日のことを思い出して気恥ずかしくなる。オレの様子を見て、皆は確信を得たようだった。
「まじ!?どうだった?」
「どうって…普通だ普通」
「またまたあ。あんなに通じ合った関係になっちゃって。何したの?すげーよかったんだろ?」
言われて、少し悩む。
「…まあ、オレがよかったのは事実だけど。あいつは痛がってたから。辛かったと思うぞ」
「え、無理矢理ヤッちゃったのか?」
「無理矢理っつーか…」
説明するのが非常に難しい話である。
「どうしてもやめてほしくないって言うから」
「積極的ー。頑張ったんだな」
「頑張った…まあ頑張ってたといえばそうだな」
完全に強姦に堪える顔をしていたけれど。それを言ってしまったら大バッシング不可避である。
飛段が口元を押さえながら続ける。ニヤニヤ顔が隠せていない。
「気持ちよかった?」
「オレ個人の意見で言えばまあ、そうだな」
「美羽のリアクション見てると、彼女も満足してそうだけど?」
イタチの言葉に、あの日美羽が言っていた言葉を思い出す。
「オレにもよくわかんねーけど。痛くてもいいんだって」
「?」
「…オレに拒絶されるよりは、痛くてもセックスした方がいいんだと」
角都がマスクの上から口を押さえる。
なんだよ、とオレ。
「…いや。不覚にもちょっと萌えた」
「萌えたって。キモ」
「仕方ないだろう。あまりにも健気すぎて」
可愛い、と角都が珍しく口に出した。その意見には丸っと同意である。
「にしても…煩悩を解放したらこんなに成績が伸びるとは」
何位?とイタチ。
「6位」
「えっ6位!?凄いですね」
鬼鮫が驚いている。だろ?とオレ。
「総合的な勉強時間は減ってるのに、ストレスを無くしただけでこの伸び方」
「今まで如何にお前に押さえつけられてたかってことだよな」
「…そう言われちまうと反省しかねぇな」
勉強のみで縛られていたのがかなり辛かったようだ。オレとのスキンシップがあった方が成績が伸びると言うのは本当だった。
へー、ふぅん。と何故か嬉しそうに飛段。
「1年かぁ。見守ってきた身としては感慨深いなぁ」
「気持ちわりーな。見守ってくれなくて結構なんだが」
「お祝いしようぜお祝い。焼肉行こうぜ、サソリの奢りで」
はぁ!?とオレ。
「なんで祝われる立場のオレが奢らなきゃいけねんだよ」
「いいだろそれくらい。オレたちが色々美羽にアドバイスしたから達成できたわけだし」
「お前は美羽にAV見せただけだろ…」
確かにそれでオレとのセックスへのハードルが下がった感は否めないが。それにしても焼肉。代償が高すぎやしないだろうか。
しかし野郎どもは勝手に盛り上がっている。どうせ何を言ったところで聞きやしないだろうし、仕方ねぇなとため息をついたその時。
「…わり。オイラ今日は帰るわ、うん」
今まで一言も発していなかったことにそこで初めて気付いた。デイダラは鞄を肩に引っ掛けガタッと席を立った。えー、と飛段。
「行かねぇの?」
「ちょっと野暮用がな、うん」
デイダラはあっさりと踵をかえした。
その横顔を見て、ドキッと心臓が跳ねる。
去りゆく背中を無言で見つめた。
教室から奴が去っても、オレは視線を動かせない。
なんだ、あいつ。
なんでそんなに傷ついた顔してんだ。
そんなに思い詰めるほど、美羽のことが好きなのか。
なんとも言えない気持ちになる。奴の気持ちには気付いていたが、それこそいっ時の気の迷いや、のぼせているだけ。そんなもんだと思っていた。
でも、違うらしい。奴は本気なのだ。本気で美羽が好きなのだろう。
悪いな、と思った。お前のことは友人として信頼している。唯一無二の親友だと言ってもいい。
ただ、美羽は渡せない。その気持ちだけは、一生揺らぐことはないだろう。例えそれが、お前との関係が崩れることになるとしても。