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家に帰って教科書を開く。相変わらず付箋だらけの教科書。わからないことだらけだけれど、自分でどうにかするしかなさそうだ。
ノートと教科書を見比べながらうんうん唸っていると、玄関のチャイムが鳴った。母は買い物に行っているはずだ。仕方なく私は玄関に向かう。
「やほー、美羽」
するとそこには皐月がいた。デイダラとイタチも一緒である。どうしたの?と言いながら私は皆を中に招き入れた。
「あの二人がうるさいから。抜けてきた」
『あー…まだ喧嘩してる?』
「あからさまではないけど。でも旦那はずっと不機嫌」
デイダラの言葉にまた溜め息をついた。
『あの二人はダメね。一緒にいちゃいけないタイプ』
皆を自室に案内する。とりあえずお茶を用意しようとキッチンに向かった。
部屋に戻ると、皆は既に勉強を始めている。一つずつカップを前に置き、私も皐月の隣に座った。
『助かる。出てきたはいいけど数学わからなくて』
「オレが教えるよ。なんでも聞いて」
イタチがそう言ってくれ、ありがとう、と私。
やっと真面目な勉強会が開催された。
「実際さ、どうなの?」
『うん?』
「早瀬のことどう思ってるの?うん」
どう思ってると言われても。
『本当になんとも思ってない。ただの友達。恋愛感情は皆無』
事実である。逆に何かしらの感情があったらあんなに普通に喋れない。
そうよね、と皐月も同意する。
「サソリも何ムキになってるんだか」
「チューしたことあるからな、嫌なんだろ」
『あれも事故だし…』
何度も言うけどしたくてしたわけではない。
そんなこと言ったらサソリだって他の女の子とキスもエッチもしているはずである。その方が問題じゃないだろうか。
しかし、今はそんなこと考えている場合ではない。
『とりあえずなんとしても10位以内に入りたいの。邪念は不要』
「そんなに旦那とエッチしたいのか?」
『そう…って、は!?』
デイダラの言葉に思わず顔を上げてしまう。私の様子を見てぶふっとデイダラが吹いた。
「旦那のパンツかけてるって言ってたから」
「は…パンツ…?」
皐月が不審な目で私を見る。またサソリは余計なことを喋っているらしい。
私は教科書に向かいながら素っ気なく答えた。
『それはあくまでサブ。成績伸ばさないとまずいから』
もう2年なのである。ダラダラしていたらすぐに3年になってしまう。サソリがT大で、私が三流大学に行くわけにはいかない。
雑談もそこそこに、私たちは真面目に勉強した。付箋が一つずつ消えていく。いつもはサソリがとってくれるそれを、今日は自分で剥がしていった。
****
遅くなる前に皆は帰っていった。明日以降もまだサソリと早瀬くんが揉めるようならイタチの家での勉強会も考えようと話している。
お風呂から出てスマホを確認すると、早瀬くんからLINEが入っていた。開いてみると予想通り謝りの文面である。
すぐに返信する気にはならず、私は布団に腰を下ろした。言い方はキツいけれど、私たちの勉強会にはもう参加して欲しくない。伝えた方がいいだろうかと悩んでいると、スマホの画面が着信に切り替わった。少し考えてから、私は通話ボタンを押す。
『もしもし』
「あー…オレ」
電話の主はサソリである。私は素っ気なく、なに?と答えた。
サソリは数秒の間の後、すみませんでした、と言った。
「ムキになりすぎた。本当にすまなかった」
素直に謝ってくれたサソリに、拍子抜けしてしまう。
元はと言えばお前が、と責められるかと思っていた。
「早瀬にはオレからもう来るなと断っておいた。オレには無理だ。アイツがいて冷静になれる自信がない」
『……』
「…オレ以外で、美羽にキスした男。一生許せそうにないから」
私はふうっと息を吐いた。
『早瀬くんのことは本当になんとも思ってないの。私が好きなのはサソリだけだよ』
サソリは少しの沈黙の後、わかってるけど、と呟いた。
「オレが嫌なんだ。多分、お前がオレの元カノに抱く感情と一緒」
そう言われると、なんとなくわかる気がした。
ごめんね、と私も謝る。
『勝手に飛び出して。明日からは一緒に勉強しようね』
「ああ。今日は本当にすまなかった」
『ううん。電話してくれてありがとう』
尖っていた気持ちが、サソリの電話により簡単に丸くなっていく。
少しだけ雑談をして、私たちは通話を終了させた。