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放課後。チャイムと共にサソリは私のもとにやってきた。その顔は相変わらず不機嫌そうである。
「さっさと行くぞ」
『わかってるよぉ』
モタモタと準備をする。すると皐月がこちらに歩み寄ってきた。
「今日から勉強会私も参加していい?」
「お前部活は?」
「今日からテスト休み」
ふぅん、とサソリ。
「別に構わない。何人いても変わんねーから」
「オレも行くよ」
「えー…じゃあオイラも行くかな…」
続いてイタチ、乗り気ではなさそうなデイダラ。飛段の首根っこを掴んで角都もやってきた。
「オレ達も頼む」
「えー!オレ勉強したくねえんだけど!」
「お前の成績が一番まずいんだぞ。進級できないと困るだろ」
「私も行きます」
「結局全員か。まあいいけど」
サソリの家は広いので全員入っても余裕がある。適当に向かおうとしたところで、肩を叩かれた。振り向くと、そこにいたのは早瀬くんである。
「僕も行っていい?」
『…え』
「僕ももう部活休みで勉強したいから」
サソリが顔をしかめた。
「オレ、お前の友達じゃねーんだが?」
「クラスメイトだろ」
「断る。お前は好かない」
サソリはきっぱりと断った。しかしめげない早瀬くん。
「教えるの上手いんだろ?頼むよ」
「別に上手くねぇよ」
「じゃあ月野さんには僕が教えてあげる」
は?とサソリが声を上げた。
「僕教えるの自信あるから。多分赤砂より上手」
「馬鹿言ってんじゃねーよ。オレの方が上手いに決まってんだろ」
二人がまたバチバチし始める。私は呆れてその様子を眺めていた。
皆も二人の姿を困惑顔で見ている。
「なに?早瀬ってまだ美羽のこと好きなの?」
飛段の言葉に、早瀬くんはあっさり答える。
「好きな気持ちは自由だろ」
「そりゃそうだけど。いい加減諦めればいいのに」
早瀬くんが私を見た。思わずどきっとしてしまう。
「恋人になれなくても友達として好きだから。別にいいよね月野さん」
『……』
そんなこと聞かれても困ってしまった。私が黙っていると今度はサソリに睨まれる。
「お前はハッキリ言え。迷惑だよな」
私はふぅっと溜め息をついた。
『まあ…とりあえず家主が嫌なら呼べないから。今回は諦めて、早瀬くん』
早瀬くんは少し悲しそうに眉尻を下げた。絆されそうになるものの、中途半端な態度は結局早瀬くんを傷つけることになるのは既に経験済みである。
早瀬くんは再びジロッとサソリを見た。
「わかった。自信がないんだろ?」
「自信?」
「僕に月野さん取られちゃう気がして嫌なんだ、赤砂は」
サソリは座った目で、は?
安い挑発なのに、サソリは相手が早瀬くんだとすぐにムキになる。
「んなわけねーだろ。コイツはオレのだ。お前の入り込む余地はない」
「じゃあいいじゃないか勉強くらい」
「オレはお前が嫌いだって言ってんだろ」
「キスしたことあるから?」
早瀬くんが完全にサソリの地雷を踏んだ。私は頭を抱える。
「キスくらいでグダグダ言うほどオレたちの関係は浅くねえんだよ」
「へー。じゃあもう一回していい?」
「ダメに決まってんだろうが殺すぞ」
まあまあ、と間にデイダラが入る。
「喧嘩すんなよ。早瀬、旦那はヤキモチ妬きなんだよ。あんまりいじめんなって、うん」
「だから妬いてねーって言ってるだろ!」
「じゃあいいじゃないか」
無限ループである。私はもう一度、深い深い溜め息を吐くのであった。
****
結局早瀬くんは私たちについてきた。大人しそうな顔をして押しが強い。
サソリは完全に不機嫌である。これも手に負えそうもなかった。
『皐月。英語教えて』
二人を完全に無視して皐月に寄っていくと、サソリに首根っこを掴まれる。
「お前の担当はオレ。数学やるんだろ」
「僕も教えるよ。月野さん」
サソリと早瀬くんに挟まれる。正直関わりたくない。
『いや…今日は英語の気分で…』
「お前英語はそんなに悪くないだろ。数学化学やれ」
サソリが無理矢理教科書を開く。私の付箋だらけの数学の教科書だ。
「じゃあここからな」
「そこからじゃなくて、もっと前からの方がいいんじゃない?」
早瀬くんが口を挟んだ。サソリの眉間のシワが深くなる。
「基礎がわかってないといきなり応用は難しいんじゃない?」
「コイツのレベルはオレが一番よくわかってんだよ。口出すな」
早瀬くんがニッコリと私を見た。
「焦らないで最初からやろう。そっちの方が効率がいいから」
「だから!口出すなって言ってんだろ。ここからでいいんだよ」
言い争っている二人にうんざりする。
『喧嘩するなら外でやって。私勉強したいの』
「だから今からやるんだろ」
サソリは早瀬くんを無視することに決めたようだ。
付箋の貼ってあるページを丁寧に説明してくれる。ふぅん、と早瀬くんが感心したように相槌を打った。
「全国一位は伊達じゃないんだね」
「当たり前だろが。わかったろ?お前は必要ない」
しっしと早瀬くんを追い払うサソリと、相変わらずめげない早瀬くん。
「レベルが近いもの同士の方がわかることもあるから」
ね?と聞かれて私はただ黙っている。
レベルね、とサソリは失笑した。
「お前と美羽じゃ全然釣りあわねぇぞ」
「そうかな?サッカー部では君よりお似合いだと言われてるけど」
は?とサソリが顔を上げる。
「身内贔屓を持ち出すんじゃねーよ」
「一般的な評価の話だよ。赤砂は派手だから」
「コイツが地味だって言いたいのかよ」
「彼女が清楚で可愛いと言う話」
また言い争いを始めた二人に、私は堪忍袋の尾が切れるのを感じた。
教科書を強制的に閉じ、カバンに押し込む。
『帰る』
「は?何故?」
『勉強にならないから。帰って一人でやったほうがマシ』
皆を無視して玄関に向かう。サソリが慌てた様子で追いかけてきた。
「ちょっと待てって…」
『私真剣なの』
「……」
『どうしても10位以内に入りたいの。邪魔しないで』
ギロっとサソリを睨む。サソリは完全に困っている様子だった。
『じゃあね』
「待て…せめて送るから」
『いらない』
靴を履いて玄関を飛び出した。まだサソリが何か言っていたけれど、振り返る気には到底ならなかった。