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美羽はあの日から休み時間も惜しんで机に向かっている。基本自主学習スタイルである。わからないところはまとめて放課後オレに聞くようにして、オレの負担を減らそうとしてくれているようだ。
オレはずっとべったりで教えても構わないのだが、彼女はオレの時間を奪うことを気にしているらしい。
「随分真面目に勉強してんな、美羽」
デイダラが相変わらず机から動かない美羽を遠目に見ながら言った。オレはスマホをいじりながら答える。
「クラス10位以内に入れって目標設定したから。サボる暇ないんだろ」
「ひえー、10位?随分厳しいな」
飛段の言葉に、当然と答える。
「S大に入りたいならそんなの余裕で超えてもらえないと困る」
「美羽いつも何位くらいなんだ?」
「1年の時点では20~25の間って感じだ。今回はクラスのメンツが変わってるからなんとも言えないが」
マダラが優等生と問題児を纏めたクラスと言っていたのを思い出す。成績優秀者が半分いると仮定すると、18位以内が最低ラインで、それ以下であれば絶望的ということになる。
「18位以下だったら期末まで遊びの予定は入れさせない」
「厳しいですねぇ。もう少し逃げ場を用意してあげたらどうです?」
「逃げ場を用意した結果が今のコレだからな。自業自得だろ。遊びたきゃ成績伸ばせばいいだけの話」
美羽は流されやすい。基本真面目だが、サボる機会を与えてしまえばその分サボってしまう。
「あいつにはスパルタくらいで丁度いいんだよ」
「それにしても凄いやる気だな。10位以内に入ったらなにかご褒美でも設定したのか?」
イタチの言葉に、オレは動きを止める。ご褒美、か。
「…パンツ」
「は?パンツ?」
「10位以内に入ったらパンツ脱げって」
「誰が?」
「オレだろ」
ぶふっと皆が吹く。
「お前が脱ぐのかよ」
「おめーらがアイツに変な知識教えるからだろ…」
AVを見て、なにやら色々学んだらしい。
知りたい気もするが、聞きたくない気持ちの方が強かった。
「いいじゃん。フェラしてもらえば?」
「そういうのはあまり乗らねんだよな…」
「なんで?」
「なんか悪い気がして。そういうことさせんのは」
うん?と角都が首を傾げている。
「お前そういうAV好きだったろ」
「だからAVと現実は別なんだよ。あいつにはそういうこと求めてねーの」
どちらかというと美羽にはオレの腕の中で気持ちよく喘いでいてほしい。挿入がなくてもそれはクリアしているので実はあまり不満はないのである。
「純粋なままでいてほしいというか。できればずっと処女のままでいてほしい」
「えー、それじゃずっと挿入なしじゃん」
「最近それはそれでアリな気がしてきた」
「ナシ、絶対ナシ」
飛段に力強く否定される。
「お前忘れたの?挿れた時のあの快感を」
「忘れてねーけど。痛いみたいだから。無理にするもんでもねーなと」
「とりあえず挿れちまえよ。押さえて挿れちまえばなんとかなるだろ」
簡単に言うな、とオレ。
「泣くし血ィ出るし。アレを無理矢理突破させられるほど鬼畜じゃねぇから」
「お前ならできるだろ」
「できるけどやらない」
オレはスマホから顔を上げた。
「オレたちのことはどうでもいいだろ。つーかお前らも中間あるだろ。勉強しろよ」
「えー、まだ2週間あるじゃん」
「2週間しかない、だ」
美羽に言った時と同じ表現をする。ここにいるメンツで余裕なのはオレとイタチしかいないはずだ。
「ついでだしお前らも勉強見てやるよ。勉強したいやつは放課後オレのマンション来い」
オレの言葉に、皆は曖昧な返事を返すのであった。
****
『ここも付箋、と』
私はピンクの付箋を教科書にペタリと貼り付けた。気づけば付箋だらけである。わからないところは目印をつけ、放課後まとめてサソリに聞くことにしているけれど苦手な数学はどうしても付箋が多くなる。
一回聞きに行こうかな、とチラッとサソリの方を確認すると彼はデイダラ達と楽しそうに話し込んでいる。邪魔するのは悪い気がして、やっぱり後にしようと再び机に向き直った。
「月野さんまた勉強?」
『早瀬くん』
早瀬くんが声をかけてきた。私の付箋だらけの教科書を見つめている。
「これは?」
『ああ。わからないところ。後でまとめて聞こうと思って』
すると早瀬くんは私の机の前の椅子に腰掛けた。
「僕数学得意だよ。教えようか?」
『えっ、ほんと?』
早瀬くんは教科書をパラパラめくって最初の付箋のページに戻している。
『ちなみに早瀬くん、成績は?』
「大したことはないんだけどね。クラスで10位以内くらい」
10位以内。その言葉に反応する。これで4つの枠は既に埋まっていることになってしまった。
うう、と唸る私。早瀬くんが不思議そうに私を見ている。
『今回、10位以内に入るように言われてて』
「月野さんいつも何位くらい?」
『…恥ずかしながら、20位とかその辺』
うーん、と少し悩む様子を見せる早瀬くん。
「じゃあやっぱり数学伸ばした方がいいね。数学苦手な人って多いから。克服すればかなり強みになる」
『そうよね…』
「僕で良ければ手伝うよ」
少し、困ってしまった。
しかし、今はサソリに頼り切っている状況である。少しでも手助けがある方が彼の負担を減らすためにもいいのかもしれない。
ありがとう、と私は頭を下げた。早瀬くんは既に付箋のついたページを読んでいる。
「じゃあ、さっそくここだけど。こういうのは公式を…」
教科書を覗き込もうとして、それは叶わなかった。
サソリが私の横に立っている。そしてニッコリと微笑みながら早瀬くんを見た。
「いらない」
「は?」
「お前からの指導はいらない。オレがやる」
サソリが早瀬くんから教科書を奪った。そしてジロッと私を睨む。
「オレに聞けよ」
『ごめん。楽しそうにしてたから』
「お前が優先だって言ってんだろ。遠慮する必要はない」
サソリが私の隣に腰掛け、早瀬くんをしっしと追い払う仕草をする。
「邪魔」
『また失礼なこと言う…』
「じゃあ僕にも教えて」
「は?」
「お手並み拝見。そこまで偉そうなら、どんなにわかりやすい指導してくれるんだ?」
今度は早瀬くんがニコニコしてサソリを見ている。サソリは至極不快そうに舌を打った。
「オレを誰だと思ってんだよ。全国模試一位だぞ」
「成績の良さと指導の上手さは比例しないって知ってるかい?」
無言で睨み合うサソリと早瀬くん。私は縮こまってその様子を眺めるしかない。
この二人はダメだ。一緒にしてはいけない。本能がそう言っている。
『…もうすぐチャイム鳴るから、後ででいいよ。サソリも早瀬くんもありがとう』
私は強制的に教科書を閉じた。納得いっていない様子の二人を、今度は私がしっしと追い払う番になるのだった。