名前知らずの片恋
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いつものように3時の方向に赴くと、そこには珍しく既に相方の姿があった。
「おせぇぞ、旦那」
普段の自分を棚に上げてそう告げたデイダラを無視して、オレは本題に入る。
「どうだ?」
「やっぱりいねぇよ。木ノ葉の忍びは。リーダーの情報が何か間違ってんじゃねぇかな、うん」
オレも概ね同じ見解であった。リーダーは時々、不確か過ぎる情報でオレたちを振り回す。
雲を探すのが間違っているのか、そもそも時送りの能力を持つ忍び自体が存在しないのか。それはわからないが、今握らされている情報に過誤があるのは確かだろう。
結果が伴わない任務ほど疲労が溜まることはない。傀儡の体で疲れは感じないが、気分の問題である。殺し以外の任務は大体ストレスが溜まる上、今回あの世間知らずで優柔不断な小娘の相手をしたためイライラはマックスである。とりあえず今日はどこかで人を殺してから帰りたい。恐らくデイダラも同じ気持ちだろう。
「もう雲に来る必要はねぇな」
「まあそうだな。でも、いいのか?」
「ああ?」
言葉の意味を図りかねていると、デイダラがニィッと笑った。
「”月下ちゃん”」
「……」
「珍しく気にしてたみたいだから、うん」
月下ちゃん。デイダラはあの女のことをそう呼ぶ。オレは暗部の仮面を剥ぎ取りながら答えた。
「全然気にしてないんだが」
「そうか?でも旦那、熱心にあの子に会いに行ってたから」
「だからそれは任務だろ…」
結局、有力な情報は得られず仕舞いである。
木ノ葉の忍びのことを知らない、というのは恐らく嘘ではない。その上早瀬のことに関しても彼女は一切口を破らなかった。一応名家に嫁いだ女だ。その辺りの教育は受けていたのだろう。
顔を合わせては一人楽しそうにどうでもいい話をダラダラダラダラ。流石に辟易していたところだ。任務終了、もう二度と顔も合わせることはないだろう。むしろ清々しい気持ちで一杯である。
「次はどこ探すよ、うん」
「無鉄砲に探しても無理だろ。大人しくリーダーの指示を待つほうがいいんじゃねぇの」
「……旦那」
デイダラが手の口を擦り合わせている。見やれば、6時の方角に忍びが5人。どうやら、本物の雲隠れの暗部の皆様のようだ。
オレは口角を上げ、行くか、と呟いた。
オレの頭の中に、もうあの女の姿はなかった。
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