満月の夜
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顔を見た瞬間、オレは持っていたクナイを奴の顔面に投げつけた。悠々とそれを受け止めて、悪かったって、と全く悪びれない顔で笑う相方。
「遅ェ。オレを待たせるんじゃねぇって何度言ったらわかんだよ」
「いやぁ、突然芸術が開花しちまってよ。試すしかねぇなーと思ってたらついこんな時間で、うん」
またいつもの病気である。舌を打ったオレに、うーんうん、とデイダラ。
「暗部の格好も悪くねぇな。ちょっと地味だけど。いつものコートより動きやすい」
今回は情報収集任務のため、黒と赤の例のコート及びヒルコは悪目立ちしすぎる。暗部に化けておけば、オレたちの実力が露見したところでそこまで怪しむ奴もいない。何より、顔を隠せる。
「…で。こんだけ遅刻したからには大層重要な情報を仕入れてきたんだよな?」
オレの言葉に、うん?とデイダラ。予想通りではある。どうせ情報収集なんて毛ほどもしていない。
オレは奴の頭を遠慮することなくぶん殴った。いてぇって!と喚いているデイダラに容赦なくもう一発。
「木ノ葉出身”時送り”の血継限界を持つ男だ。ちゃんと調べたのかよ」
「いてて…調べたは調べたんだけどよぉ。そもそも木ノ葉からこっちに移住してきた男が戸籍上存在してねぇんだよ、うん」
オレの調査結果と同じである。それならそれで早く戻って来いよ、と更にイライラする。
そっちは?の言葉に、同じだ、と返答。デイダラはえー!と不服そうである。
「んだよ。旦那も見つけてねぇんじゃん、うん」
「テメェと一緒にすんな。一つだけいい報告がある」
先程の女のことを思い出す。木ノ葉から雲に嫁いできたというあの女。
「お前待つ間、女に会った」
「女?」
デイダラが反応する。オレは首肯した。
「恐らく、”早瀬”に嫁いできた女だ」
「早瀬って…あの雷影の親類の?」
「ああ。本人は忍びじゃないらしいが。良い着物着てたからな、ほぼ間違いない」
整った顔をしていたが、冷たい目をした女だった。
子供を産むために無理矢理連れてこられた繁殖牝馬。あの様子だと、夫に愛情があるわけでもないだろう。力のない女は、権力者に従わなければ生きていけない。
本当に哀れな女だ。
しかし、オレたちにとってあれほど都合のいい女は他にいない。
「ああいう女は、里への忠誠心が薄い」
「……」
「話し相手に飢えている様子でもあったから。少し親しくなれば里の情報をベラベラ喋るはずだ」
デイダラがにや、と怪しく笑う。
「悪い男だな、旦那も。情報漏洩がバレたらその女も殺されちまうじゃん、うん」
「情報収集のためには必要な犠牲だろ」
お前は引き続き里を調べろよ。オレの言葉に、デイダラは面倒臭そうに鼻を鳴らした。
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