天の悪戯
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今日の任務はまた、情報収集だった。
しかし有力な情報は得られぬまま帰路につく。お約束の如く、デイダラがイライラを隠すことなく粘土を放り投げた。遅れて爆発する。言っても無駄だと思いつつも注意を促した。
「オイ、静かにしろ」
「今日は暴れ足りねぇんだよ、うん」
それには同意するが、隠密行動を崩していい理由にはならない。
再び粘土を構えたデイダラにヒルコの尾を向ける。観念したように鼻を鳴らすデイダラ。
「あー、つまんねぇ」
「……」
「アジト戻ったら月下ちゃんブチ犯すか、うん」
まだあの女のことを諦めていないらしい。オレは心底呆れてため息を吐き出した。
「お前はそればっかりだな」
「据え膳食わぬは男の恥って言うだろ、うん」
「意味合いが違うだろ。それはあの女がお前に好意を持って初めて成立することわざだ」
細かいことはどうでもいいんだよ、とデイダラ。全く細かくねぇだろ、と反論したいが面倒な気持ちが勝る。
無言で歩みを進めると、遠くからミミズクの鳴き声が聞こえ始めた。
これが聞こえ始めるとアジトまではもう間も無くである。
「どっちかっつーと…据え膳食ってねぇのは旦那か」
「ああ?」
「”狐さん”」
その人称だけでデイダラの言いたことを早急に理解した。
「あんなもんはあの女がオレに勝手に幻想を抱いていただけだろ」
「好かれてたことは否定しねぇんだ、うん?」
確かに、あの女がオレを狐と認識していた時にはそこはかとなく好意のようなものを感じていた。しかしあれは、一種の逃避だったのだろう。
籠の中の鳥は、ずっと外に出たいと願っていた。しかしいざ外に出てみれば籠の中が自分にとってどんなに居心地のいい場所だったのかを知る。現に、奴は籠の外に出てから自分の夫への好意に初めて気付いたようだ。狐と慕っていた男の存在なんて忘れ去ってしまったかのように、今は完全に気持ちが夫の方に向いている。
暁という異常な組織が介入することによって夫婦の拗れた関係が正常に戻るなんて、些か奇妙な話ではあるが。
「旦那はさー」
随分暇なのか、デイダラがしつこくオレに話しかける。オレは黙ってアジトに帰ることだけに集中した。
「月下ちゃんのことどう思ってんの?」
あまりにも馬鹿げた話題の連続にいい加減うんざりする。
「なんだその学生のような質問は…」
「ただの雑談だよ、うん」
「オレは雑談が嫌いだって言ってんだろ」
「つまんねーの」
昨日月下の女にも『つまらない人』と評されたのを思い出し無性にイラついた。
「どう思うも何も…ただの任務のターゲットだ。特別な感情は一切ない」
「あんなに可愛くても?」
「一回り以上年下のガキだぞ。興味があったらそれはそれで問題だろ」
「優等生だなぁ、旦那は」
デイダラなりの最大限の皮肉であろう。しかし反論する気はなかった。言い返せば言い返すほどデイダラは面白がる。ガキの戯言に付き合う気はない。
オレの不機嫌を察したのか、デイダラはそれ以降オレに話しかけてくることはなかった。
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