逢いたかった人
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てっきり、夫に愛情はないと思っていたのに。どうやら違うようだ。
二人のやりとりは、信頼しあっている夫婦のそれに違いなかった。なんだよ、と内心舌を打つ。
そんなに嫌なら夫を殺してやろうと思っていたのに。あの様子じゃ、殺しちまったら逆にややこしいことになりそうだ。
あの手の女は、一歩間違えれば確実にメンヘラ化して扱いづらくなる。これから奴をアジトに連れて行かなければならないことを考えると、無用な刺激は避けたいところだ。
さて、どうしたものか。
殺気立っている早瀬の小僧を見下ろしながら考える。
殺すのは簡単だが、死なない程度に甚振るには少々技術が必要だ。
暁には雲出身の忍びがいない。つまりオレたちは雲の忍びの情報に疎い。早瀬が何の能力者で、どんな技を使うのかオレは全く知らないのだ。
先ほど使ったのは風だった。風の能力を持っていることはわかったが、それだけだと判断するのは些か短絡的すぎる。まだ能力は隠し持っていると思った方が無難だろう。
あの女に対峙する時、ヒルコは無駄に怖がらせそうで避けたのが痛い。オレにとってヒルコほど扱いやすい傀儡はないからだ。三代目も扱いやすいが、殺さないというのが難しくなる。
そうこう考えているうちに、また突風が吹いた。足にチャクラを溜め、木から離れる。
「君は傀儡使いらしいな」
オレは無言で早瀬を見る。奴はこの場に似合わない爽やかな顔で笑った。なんとなくイラッとする。
「お手並み拝見。どんな術を見せてくれるんだい?」
「…偉く余裕だな。まさかオレに勝てると思ってるのか?」
「勝つさ」
早瀬は迷わず言った。青い瞳が、好戦的にオレを見ている。
「愛する妻を守るためだからね。負けるわけにはいかないだろう」
「愛する妻ねぇ…」
その妻はここから逃げ出したくてたまらないみたいだけどな。しかしオレは優しいので言わないでおいて差し上げる。
早瀬は背中に背負っている刀を抜き取りながら、爽やかな顔を始めて憎悪に歪めた。
「オレはお前が世界で一番憎い」
「…おいおい。まだ恨まれるようなことしてねぇだろ」
「もう十分なんだよ。二度とオレの妻に近づくなクソ野郎」
どうやら既に大層嫌われているらしい。酷い話だ。別に何もしてねぇだろ、まだ。
早瀬の持っている刀。オレに対しての殺意を表すかのように青く輝いている。珍しい色だ。…あの色は、恐らく特殊なチャクラを練っているな。
やはり一筋縄ではいかない相手のようだ。背筋がゾクッとする。相手は強ければ強いほどいい。その方が潰しがいがある。その自信に満ちた顔を、愛する妻の前で地面に叩きつけてやりたい衝動に駆られた。
巻き物を取り出す。そこに書いてある三の文字。こんなに本気で向かってくる相手に、中途半端な傀儡は失礼だろうというオレの誠意である。
煙の向こうから現れるオレのお気に入り。構えのポーズをしながら、早瀬がニヤッと笑った。
「本気で来てくれるようで、光栄だな」
「せいぜいオレを楽しませてくれよ」
勿論、と答えた早瀬が、オレに向かって一歩足を踏み出した。
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