原作前
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RPGといえばお馴染みの装備品。
剣や杖なんかの武器。そして鎧やローブなどの防具。
そういった店がこの世界には当たり前に存在している。
当然街の外は悠々と魔物が歩き回っているし、丸腰で移動するなんて自殺行為だ。
つくづくこちらに来たときの私は運が良かった。
シルビアさんと出会ってまず最初に行われたことが装備品を買い揃える事だった。
彼にはおんぶにだっこでいつかちゃんと恩を返していきたいと思っている。
今はまだ自分に出来ることを精一杯やっていくしかない。
初めて武器と防具のお店に連れて行ってもらった時の感動は今も鮮明に覚えている。
だってお話の中でしか見たことのない物が実物として存在しているのだもの。
武骨な造りの剣や、丸いきれいな宝石がついた杖、重そうな凝った装飾の鎧に魔法使いが来てそうなローブ。見てるだけでわくわくする。
目を輝かせる私にシルビアさんはちょっと不思議そうにしていたけど
私のいた世界に魔物がいないことを知っていたのでこういう物が珍しいのだと説明すれば納得してくれた。
最初に武器屋に連れてきてもらったのだが、当然だが私は魔物と戦うなんてできない。
殴り合いのケンカもろくにしたことないし、ましてや剣やナイフを取って応戦するなんてできないだろう。
ためしに片手で扱える剣を持たせてもらったが、想像以上に重たくてとても振り回すことはできなさそうだった。
こういうのを軽々扱っているシルビアさんたちは何者なんだ・・・。改めてその強さに感心する。
しかしだからといって全く無抵抗である訳にもいかない。
なので護身用にとシンプルな造りの杖を買ってもらった。
これなら軽めで振り下ろすだけで攻撃できるし、杖なら歩行の補助にもなる。
何せこの世界の基本移動手段は徒歩。
馬や馬車というのもあるそうだが地上の移動は徒歩になるらしい。
はじめて武器を装備するという事を体験して、少し気持ちがふわふわする。
そんな私を見てどういう風に捉えたのかは分からないが、シルビアさんがとんでもない爆弾を投下する。
「ちょっとした護身術とかは追々教えてあげるけど、まあ心配いらないわ。
花子ちゃんのことはアタシが守ってあげるから安心して」
さらりと笑顔付で言われた言葉に心臓が悲鳴を上げたのは言うまでもない。
こういうことをスマートに言えてしまうんだものなぁ・・・。
実際シルビアさんはとても強くて、そこら辺の魔物なんかあっさりと倒してしまう。
しかもその剣捌きは素人から見ても見事なもので、初めて戦っている姿を見たときは思わず口が開きっぱなしになっていたくらいだ。
強さがお墨付きのシルビアさんが言うからこそ、初めてだらけの世界でも本当に安心して旅ができるのである。
・・・ちなみに先の台詞を言われた時の私はというと、あっ、ありがとうございますとやや噛みながらお礼を言うのに精一杯だったのであった。
いやはや、なんとも自分の事ながら情けない話である。
こうして武器はすんなりと決まったのだが、問題は防具である。
防具といっても重すぎる鎧は着れないし、必然的に軽いものを選ぶことになる。
となると服やローブなんかがメインになるわけで、どういうものがいいかと意見を聞きながら選んでいたのだが―
「ねぇ、花子ちゃんこれなんかどう?」
にこにこと嫌みのない笑みで持ってきた服にひくりと顔が引きつった。
店に入ってけっこう時間も経っているのだが、シルビアさんがさっきから持ってくる服のセンスが斬新すぎる。
決して服が悪いわけではないのだけれど、いざ自分が着るのかと思うと無理なやつばかりだ。
今持ってこられた服もまず形からしてどうやって着るのか分からないし、色味も派手なピンク色で目に痛い。
例えるならパリコレで出てくるような最先端できっとおしゃれなんだろうけどこれモデルさんしか着れないよ、と思うやつみたいな。
まぁ、パリコレよく知らないんだけども。
「すみませんシルビアさんこれもちょっと……」
「えー、絶対似合うのに」
「シルビアさんとかなら、さらっと着こなせるんでしょうけど私みたいな平々凡々な人には無理ですよ」
「もう、花子ちゃんたらそんなこと言わないの!花子ちゃんも充分かわいいんだから!」
フォローしてくれるのは嬉しいけどやっぱりこういう服は着れない。
ぷんぷんと抗議するシルビアさんをそっと押し戻して、無難な動きやすそうでシンプルな服を選んでいく。
先程の服を戻してきたシルビアさんに選んだ服を渡した。
「すみません、これでお願いします」
「やだ、こんな地味なやつでいいの?もっと遠慮しないでとびきりかわいいのにしたらどう?」
「いえいえ全然大丈夫です。私これが気に入ったので!」
そう?とまだ不満げなシルビアさんをなんとか丸め込んで、私の旅セットのお買い物は終了した。
ちなみにその杖と服はすっかり私の愛用品で、その後新しいものも買って頂けるのだが今でも時々着ている。
それから様々な街を訪れる度にお店であの時のような攻防戦が繰り広げられるのだが、それはまた別のお話である。
18.12.01