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千弥町物語



「ねぇ、いい加減そろそろ戻ろうよ!」

ライラは不安そうに、私の手を握り締めてそう言った。


「…うん」

結局霧の中…しばらく謎の砂利だらけの河原の上を手探りで探したが、何も見つからない…。
あの影は…やはり気のせいだったのだろうか。

しかし…その時だった。

…ザワザワザワ
「!?」
まるで風の様な、誰の話声の様な…
何とも言えない、不思議な音が間近から響いて来た。

「えっ!?…今の何?」

「…誰かいる?」

背筋が何故かひやりとした。
二人同時に振り返り、音の方向を注視する。
妙な緊張が走り、脚がすくんでいた。
目前の霧塊がもわっと波打った。
背丈を遥かに超え空を覆う様な、巨大な黒い塊がひしめき動いていた。

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