千弥町物語
……謎の場所……
川の水温は…若干下がり始めた様に感じられた。
長時間水に浸かっているせいでもあるが、さすがに寒さを手足の先から感じずにはいられない。
体温を吸われるのは辛くなって来ていた…。
しかも先に進むにつれ、濃霧になり…すっかり視界が無くなってしまった。
「…だから、危ないって言ったのに…」
ライラが少し怒りぎみに呟く。
「…ごめん…だけど、もう少しでつきそう…だと、思う」
自分の言った事を後悔せずにはいられなかったが、何かを確認するまでは帰りたくなかった…。
更に歩みを進めると、次第に水が浅くなって来たので…少し驚く。
そのうち、水の無い砂利の上に踏み出していた。
「ライラ…対岸についたのかな?」
「…え?…まさか、分かんないけど、こんな近くに対岸があるわけ無いよ!」
私の問いには、ライラもよく分からない様子で…ただ立ちすくんでいた。
此所は…何処だろうか?
足下の砂利とライラの顔以外確認出来ない、真っ白い世界である。
「…とにかく、影のもとを探してみよう」
ライラの手をしっかりと握り締めて…注意深く進んで行った。